創価大学ニュース「SUN」105号 2020 Spring

105 創価大学ニュース 2020 Spring Actions for Tomorrow 【 Focus 創大 】 明日を創る、 創大生のアクション

Over the border 【ベルギー】 立石 敬之さん 学問探訪 テーマ 【プラグマティズム(実用主義)】 ロバート・シンクレア教授 ありがとう 東北編 P.11 P.14 P.13 創価大学 学長ヴィジョン P.08 創価女子短期大学 学長ヴィジョン P.10 卒業生の進路紹介 子から親へ、親から子へ P.15 キャンパスニュース P.17 【表紙写真】 桜満開のキャンパス。 学生が見つめる先に は「創価教育万代之 碑」ー。 【創価大学】 経済学部 蛭田 麻衣子さん 【創価大学】 経営学部 三浦 伸悟さん INDEX [ スペシャル対談 ] Focus創大 Actions for Tomorrow ~明日を創る、 創大生のアクション~ P.01 P.05 鈴木 りえこさん ×佐々木 諭教授 国際支援に関わる、 一人ひとりに必要なもの。 Special Interview [ スペシャル対談 ] 国際支援に関わる 創価大学ニュース 2 0 2 0 S p r i n g No.105

02 SUN105 2020 Spring  国連の持続可能な開発目標「SDGs」と いう人類共通の目標が誕生し、これから の世界のために何ができるかを考える機 会が多くなっています。 そこで今回は、アフリカでの開発支 援を通じて「SDGs」の達成を目指す認 定NPO法人「SDGs・プロミス・ジャパ ン(以下、SPJ)」理事長の鈴木りえこさ んと、本学のSDGs推進センター委員、 GCPディレクターを務める、看護学部 の佐々木諭教授との対談をお届けしま す。「考える」から「行動する」へと一歩 前進するために私たち一人ひとりに必要 なものは何かを解き明かしていきます。 佐々木:鈴木さんは、アフリカの地に何 度も行かれているのですよね? 鈴木:はい。NGOミレニアム・プロミス のグローバル・アライアンスとして設立 したSPJの活動の合間に、1人でサファ リツアーに参加することもあります。 佐々木:鈴木さんをそこまで魅了した、 アフリカの魅力とは何でしょうか? 鈴木:アフリカの人々はエネルギッシュ なのです。今の世代よりも次の世代を もっとよくしたいという、未来への希望を 持っています。戦後の日本のような感じ かもしれませんね。 佐々木:本学の創立者が「21世紀はアフ リカの世紀」と宣言し、そのポテンシャル に以前から注目していました。その言葉 に感銘を受けた学生が、たくさんアフリカ に留学しています。 鈴木:そのポテンシャルを花開かせるた めに、「SDGs」をアフリカの地で達成しよ うと活動しているのが私たちSPJです。 「誰も取り残さない」世界を目指し、アフ リカの農村部を中心に健康、教育、水・ 衛生、そして収入の向上に対するサポー トをしています。 佐々木:「誰も取り残さない」というのは とても大切な考え方ですね。 鈴木:私たちの主な活動として、アフリ カの中でも特に恵まれない農村の開発 支援があります。政府同士のODAでは 開発の手が回らない地域を支援している のです。 例えば、教育の面からいうと、アフリカ では小学校の最後に卒業の資格を得る ための共通試験があるのですが、中学校 に進学する子どもが少ない。SPJが支援 する農村でも、それまで中学校へ進学し た女の子はいませんでした。そこで、私た ちがつくった小学校では、中学校に行き たいという女の子たちが電球のある教室 に泊まり込みで勉強しました。その結果、 彼女たちは小学校の卒業試験でトップ評 定を獲得し、進学するという夢を叶えた のです。そのなかには、マケレレ大学とい うウガンダで一番の大学に進学した子ど ももいて、今では私たちの支援活動を手 伝ってくれています。 佐々木:子どもたちの力を高める支援 は、国が豊かになるためにとても大切で すね。 鈴木:そうなのです。特に女性ですね。 「誰も取り残さない」支援には、心のケアが欠かせない。 一人ひとりに必要なもの。 【 看護学部 】 【特定非営利活動法人(認定NPO法人) 「SDGs・プロミス・ジャパン」理事長 】 鈴木 りえこさん 佐々木 諭教授

03 あるとき私が女の子を支援したいとウガ ンダのスタッフに話したら、「りえこ、女の 子を支援するということは、国を支援す ることなのだ」と言って、とても喜んでく れました。高等教育を受けた女性は地元 に戻ってきて土地の人のために貢献をし てくれるのだそうです。 佐々木:子どもたちの支援として、SPJで はメンタルヘルスケアに大変丁寧に取り 組まれているとうかがいました。 鈴木:アフリカの貧困層には、内戦・虐殺、 あるいはエボラ出血熱といった病気に よって、もといた国に住めなくなった難民 がいます。そうした人々が私たちの支援 する難民居住区にたどり着き、少し落ち 着いたところでメンタルのケアをします。 トラウマを解消するために、あえて辛い記 憶を引き出すのです。すると、みんな泣く のです。でも、泣くことがトラウマ解消へ のステップになる。過去を消すことはでき ないけれど、自分の人生の1つとして受 け入れることは、今後、前向きに生きて いくためには欠かせないことなのです。 佐々木:涙を流せるというのは、それだ け安心感があるということですね。子ど もたちがありのままの自分を出せる場は、 丁寧に寄り添いながら活動をしないとつ くることができないのですね。SPJの活 動を撮影したビデオを拝見して、鈴木さ んが泣いている難民の子どもの背中をさ すられている姿がとても印象的でした。 鈴木:現地で活動しているときはもちろ んですが、離れているときでも「あなた たちは1人だと思わないでね。遠い日本 でもあなたたちのことを考えている人が いるのですよ」と伝えられる関係が、子 どもたちの励みになると感じています。 佐々木:実は看護学部の私のゼミ生が、 4年生の卒業研究でザンビアの難民キャ ンプに行き、心のケアについて調査をし ました。その結果、判明したのは内戦直 後にあったPTSD※や心理的トラウマと は別に、難民キャンプでの長期の生活 で抑うつ症や不安症になっていることが わかりました。その割合は、なんと9割。 心のケアは支援の中では優先順位が低 いものですが、子どもの心のケアを優先 的に取り組まれている点は未来に向かう 大切な取り組みだと感じました。 鈴木:支援先の政府に難民支援をした いと伝えると、職業訓練をやってほしい、 ITの学校をつくってほしいといった要望 を受けます。しかし教育活動が効果を 発揮するのは、子どもたちの精神状態が 安定してこそ。まずはメンタルヘルスケ アが一番だと思っています。 ▲写真は鈴木さんがアフリカから持ち帰った マラウイの石けんとルワンダバスケット。SPJ はバオバブのオイルや石けんの製造販売など をサポートし、アフリカの貧困層の自立支援 にも取り組んでいる。 ※PTSD(Post Traumatic Stress Disorder)心的外傷後ストレス障害

04 SUN105 2020 Spring 「アフリカの実情を知って、 若者たちに、自分に何ができるかを考えてほしい」 佐々木 諭 / Satoshi Sasaki 新潟県出身。創価大学法学部卒業、創価大学法学研究科博士前期課程 修了。新潟大学大学院医歯学総合研究科博士課程修了、博士(医学)を 取得。1997年から2000年までNGO職員としてルワンダに赴任、2000 年より2007年までJICA専門家として、ザンビアの貧困地域の保健プロ ジェクトに従事。現在、創価大学看護学部教授、GCPディレクター。専門 は、国際保健学、疫学。 ▲南スーダン難民支援事業の現場にて 鈴木りえこ/ Rieko Suzuki 北海道出身。日本女子大学文学部卒業後、イギリス留学を経て株式会社電通総研に入社。1992年から1 年間休職し、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス大学院にて国際関係論の修士号を取得。復職後、研究 部のチーフプロデューサーや主任研究員として政府や企業からの受託プロジェクトなどに取り組む。2004 年に夫・北岡伸一(現JICA理事長)に同行してニューヨークへ行き、ミレニアム・プロミス創立者で当時の国 連事務総長特別顧問であるジェフリー・サックス教授夫妻らとともにアフリカを訪問したのをきっかけに、 ミレニアム・プロミス・ジャパン(SPJの前身)を設立。 http://sdgspromise.org/ by 鈴木りえこ 佐々木:常に現場に入って活動されてい る。そういったところから、現地の人々の 真のニーズを理解し活動に反映されてい るのですね。 鈴木:私は好奇心旺盛なので、自分で見 て、聞いてみないと納得できないのです。 一方で、若い人を育てる活動もしていま す。例えば有志の学生によって構成され た「ミレニアム・プロミス・ジャパン (MPJ)ユース」に参加する学生とともに現 地に行くこともあります。私は以前、日本 国内のシンクタンクに勤めていました。そ のとき、日本の若者は将来に希望を持っ ていないというデータがありました。だか ら自分たちを不幸だと感じている今の若 い人たちに、アフリカの実情を見てもらう ことで、自身の環境が恵まれていること に気づいてほしいのです。アフリカの子ど もは学校へ行きたくても行けないし、字 の読み書きができないことも多い。日本 は教育面ではかなり恵まれているので、 まずはそれを理解してもらいたいです。 佐々木:学生が海外へ行き、特にアフリ カなど日本とは大きく異なる環境で、異 なる価値観や文化に出会うことは、本当 に貴重な財産になりますし、将来につな がるビジョンを広げる機会にもなります。 創価大学でもできるだけ多くの学生が海 外で学ぶ機会を増やそうとサポートして います。今では毎年約900名(学生数の 11.6%)が留学・海外研修(単位認定を 伴うもの)を行っています。 創価大学が目指す教育理念の1つとし て、「世界市民」の育成というものがあり ます。その根底の1つが、鈴木さんのお 話にもあった、苦しんでいる人と同じ立 場に立って、その人の思いに寄り添いな がら自分を見つめていくことです。 鈴木:世界に出るためには語学力はとて も大事です。しかし、英語がいかにでき ても、中身がなければ何も伝わりません。 自分のビジョンが必要です。自分がリー ダーだったら何ができるかといった、自分 の意見を若者に持ってもらいたいですね。 佐々木:本学の「GCP(グローバル・シ ティズンシップ・プログラム)」では、まさ にそうしたビジョンを養うための授業を 行っています。2年生の秋学期で、世界 の課題に学生の立場で実現可能な解決 策を提示する授業があります。例えばあ る年の学生グループは、インドでは貧血 が妊産婦の主な死亡要因となっている 課題に挑戦しました。どうしたら貧血を 予防できるかを考え、昔の日本では鉄鍋 や鉄瓶を使うことで自然に鉄分を摂って いたという風習を知り、応用しました。 「鉄なす」というなすの形をした日本の工 芸品を料理する鍋に一緒に入れることで 鉄分を摂取するプロジェクトを考えたの です。さらにその学生たちは、実際にイ ンドへ行ってプロジェクトを実施しまし た。学生がどんどん力をつけてたくまし くなっていく姿を見ると、私たち教員とし ては大変嬉しいですね。 鈴木:実際に現地で活動をすることは、 とても素晴らしいですね。やはり現地に 足を運んで、いろいろな経験をすること で視野が開け、自分の軸ができると感じ ます。SPJの活動に参加した学生たちは、 国連をはじめとした国際機関で働いてい たり、外務省やJICA(国際協力機構)の スタッフとして支援活動に携わり続ける など、大きく羽ばたいています。もちろ んそのなかには創大生もいます。  1人でも多くの学生が世界に対しての 好奇心を持ってくれれば、それだけ世界 は豊かになると思います。 語学力とともに、伝えたい自分のビジョンも養うべき。

05 「世界 問題 ニュース」。 たった3ワードを、Webブラウザの検索バーに打ち込めば、 地球の反対側で何が起こっているかを知ることができます。 しかし、それでは世界を変革することはできません。 創価大学では「よりよい世界のために」という志を持って、 “Action” を起こす「世界市民」の育成に取り組んでいます。 『自らの目で、耳で、世界を体験することで、どんな可能性が広がるのか』 『考えるだけでなく、行動を起こすことで、いくつの笑顔が生まれるのか』 豊かな明日を創るための “Action” を起こした2人の創大生のストーリーをご紹介します。 インドネシアの子どもたちを 感染症から守る 「手洗いソング」を作成 経済学部4年 川上智美さん GCP7期生。GCPの一環として、インドネシアの感 染症拡大を防ぐプロジェクトを考案し、現地の小 学校を対象にした「石けん手洗い教育」を実施。そ の後もハーバード大学国際会議「HPAIR」や国際 開発ユースフォーラムといった国際舞台で、社会 貢献への道を自ら切り拓いている。 「シリコンバレー」に飛び込み、 テクノロジーの進化速度を 肌で体感 理工学部4年 大依正宣さん 生活の場で人間と共存するヒューマン支援型ロ ボット「SOBIT」を開発した崔龍雲研究室に所属。 留学先で自らの肌で実感したテクノロジーの持つ 大きな可能性を糧に、子どものころに思い描いた、 「ドラえもんのようなロボットを実際につくりたい」 という夢の実現に向け、日々、研究に邁進している。 社会の明日を創る #EVKQP 㧘 自分の明日を創る #EVKQP 㧘 #EVKQPU HQT 6QOQTTQY 明日を創る、 創大生の アクション (QEWUഃᄢ

06 SUN105 2020 Spring  途上国では感染症による下痢などで命を落としてしまう子どもたちが 何万人もいる――。高校生のころからずっと、そんな現実に憤りを覚え、 創大に進学したらGCPでこの問題に何かアクションを起こしたいと心に 決めていました。  学生として感染症という大きな問題に対して何ができるのか。GCPで リサーチと議論を重ね、出てきた課題が「手洗い教育の欠如による手洗 い習慣の不足」というものでした。  そこで私たちは「Ala!Wash!プロジェクト」と題し、インドネシアの 小学生に石けん手洗いの大切さを楽しんでもらいながら啓発する「オリ ジナル手洗いソング&ダンス」を作成。現地のガジャマダ大学の学生や 保健系NGOの方と連携し、実際に3つの小学校を訪問しました。 活動するなかで何度も困難にぶつかりましたが、思いを共有して一緒に前 に進める仲間のおかげで乗り越えることができ、感謝の思いでいっぱいです。 今回のActionを起こすとき、「学生だからこそできることがあるので は?」という観点と、現地にどれだけ寄り添えるのかをチーム全員で考え 抜きました。その結果、感染症という問題をより身近なことと捉え、“手洗い” を歌とダンスで啓発するというおもしろい施策を実現できたと思います。  創立者よりいただいた「世界が舞台」というメッセージを受けて、世界 中のさまざまな人々とコミュニケーションをとってみたいと漠然とした “野望”を描いていました。  そんなとき、文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN」の存在を知り、 挑戦してみようと思いました。「トビタテ!」は充実した奨学金の支援が 特徴であるほか、私が魅力に感じたのは、留学計画を自分自身で設計 することができる点です。留学計画を作成する工程は、ハッキリとした 目標を描けていなかった私にとって、じっくり未来を考えるいい機会に なりました。「どんな道を目指すのか」「どんな人材に成長したいのか」 と、突き詰めることができたのです。  そうして行きついたのが、子どものころから憧れていた「モノづくりの 最先端を体験したい!」ということ。そこで、最新テクノロジーを発信し 続けている「シリコンバレー」への留学を決めました。  それまでの私は「与えられたことをやりこなす」タイプだったのです が、今回の留学は「自分で全部つくり上げていく」ものでした。私にとっ ては大きなチャレンジで、自分の弱さや強みに気づくきっかけになりま したね。 ਎⇇ ࠍ ᄌ ޔߣ߁ࠃ߃ ޽ ߇ߚߥ ⿠ ࠕߚߒߎ ࡚ࠢࠪࡦ ߪ 㧩 大依正宣 さん 理工学部4年 さん 経済学部4年 #PUYGT #PUYGT (QEWUഃᄢ

07 ⃻࿾ ߢ ಴ળ ޔߚߞ ⼾ ߥ߆ ᣿ᣣ ߩ ⒳ ࠍ ᢎ ߐߛߊߡ߃ ޿㧋 大依正宣さん 川上智美さん GCPの授業では、まず徹底して英語力を鍛えることで、現地 の人と協力してプロジェクトを円滑に進めるだけのコミュニケー ション力を養えました。それと同時に、課題を発見し解決策を導 くプロセスを学びました。それは、実際にActionを起こすための 大切な礎になります。そのうえで、行動を起こして社会課題を抱 える現地のリアルを知り、“世界に大きく近づけた”と感じました。 インドネシアの実情を目の当たりにし、「この子たちのために何か したい」という、より具体的な目標が生まれたことで、これからも 多くの人々のためになりたいという思いが強くなったのです。 #PUYGT  また、世界を舞台にして改めて知ったのは、「協働力」の大切 さ。GCPの活動でも、国連のイベント参加でも、国籍や文化の 違う人たちと一緒に動くためには、相手の文化に寛容になるこ とがスタ―ト地点だと知りました。どんな場面でも、一人ひとり と話して距離を縮めることで議論は活発になったのです。そう した潤滑油的な役割ができることを私の強みとして、これから もさまざまなActionを起こし、インドネシアで関わったような 途上国の子どもたちや社会的マイノリティの人たちが自分らし く輝ける社会を築きたいと思っています。 ▲HPAIR参加時の写真 ▲インドネシアで多くの人と出会う 1年間の留学期間は、テクノロジーの最先端を肌で感じること ができました。Google社をはじめとした有力企業を訪問し、現 地の人々と議論をする機会も得ることができました。シリコンバ レーは市民同士で自由に討論するコミュニティが活発で、テクノ ロジーを用いた世界の気候変動への対応策、AIやディープラーニ ングの活用といった幅広いテーマについて、学生、研究者といっ た立場に関係なく、お互いの意見を交わすことができました。  現在、私はゼミでロボット工学を学んでいます。人との距離が 近く、心を預けられるようなロボットをつくることが目標です。 #PUYGT  留学前から、そうしたヒューマン支援型のロボットに興味が あったのですが、シリコンバレーで世界レベルのロボティクス に触れたからこそ、世界と比べた日本の強みは「人の心を豊か にする技術」にあるとの確信を得ることができました。シリコン バレーには、私が夢に描いていたロボットを形にしようとして いる研究者がいると知り、その最先端の現場を実際に体感で きたことが、今の自分にとって大きな強みになっています。  留学で得た財産を活かしながら、これからもっとたくさんのこと を学び、日本のロボティクス界を牽引できる人材になりたいです。 ▲研究室の看板ロボットSOBITくん ▲海外の来賓に向けた研究室のプレゼン ▲留学先のカリフォルニアにて (QEWUഃᄢ

創価大学 学長 馬場 善久 1953年富山県生まれ。創価大学経済学部卒。カリフォルニア大学サンディエゴ校経済学 研究科博士課程修了。Ph.D.取得。専門は計量経済学。創価大学経済学部講師、助教授を 経て教授。教務部長、副学長を経て、2013年学長に就任。主な著書に、本多佑三編『日本 の景気―バブルそして平成不況の動学実証分析』(有斐閣、第5章、1995年)など多数。 Born in Toyama Prefecture in 1953. Graduated from the Faculty of Economics, Soka University. Completed his Ph.D. in Economics at the University of California, San Diego as a specialist in econometrics. Served as lecturer, associate professor and subsequently professor at the Faculty of Economics, Soka University. Appointed Head of Educational Affairs in 1996, Vice President in 2005, and President in 2013. Literary works include Economy Outlook of Japan – A Dynamic Empirical Analysis of the Bubble Years and Subsequent Recession edited by Yuzo Honda (Yuhikaku, Chapter 5, 1995). 2020年度 創価大学 学長ヴィジョン 2020 Soka University President’s Vision Soka University President Yoshihisa Baba  本年度は、新型コロナウィルスの蔓延で、世界が危機に見 舞われる中での始まりとなった。本学でも入学式の中止や対 面授業の開始を繰り下げるなど、学生、教職員の健康と安 全を最優先にして、この問題に取り組んでいる。皆さんと共 にこの試練を乗り越え、明年2021年4月2日の創立50周 年の佳節を迎えたい。  本学にとって本年度は、「スーパーグローバル大学創成支 援事業」の2回目の中間評価を受けることになる。多くの方々 に掲げた目標を着実に達成するために努力していただいて いる。関係者の皆様に心から御礼を申し上げたい。「大学教 育再生加速プログラム(AP)事業」も最終年度を終え、今 後は、本事業の成果に基づいたアクティブ・ラーニングの 推進・高度化と学修成果の可視化をより一層進め、教育の 質保証に取り組んでいく。  研究分野では、JST-JICAに2015年度に採択された「地 球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(COSMOS プロジェクト)」も最終年度を迎える。そして、2017年度「私 立大学研究ブランディング事業」に採択された「途上国に おける持続可能な循環型社会の構築に向けた適正技術の研 究開発と新たな地域産業基盤の形成(PLANE3T)」の研究 開発が、アフリカ・エチオピアの地で順調に継続されている。  大学評価においては、昨年度、「SDGsの取り組みを評価 する世界ランキング」で日本の大学4位相当にランクイン、 「世界大学ランキング日本版」の「国際性」の分野で16位に ランクアップ、「QSアジア大学ランキング」で総合401~ 450位にランクインなど、高い評価を受けることができた。 本年も、教育・研究活動の充実を目指し教職員、学生、関 係者の皆様のご尽力をお願いしたい。 一方、昨年度も学生の活躍には目を見張るものがあっ た。2020年1月2日、3日の東京箱根間往復大学駅伝 競走において、3年ぶり3回目の出場を果たし、往路7位、 復路9位、そして総合9位で初のシード権を獲得するこ とができた。これにより、本年10月の出雲全日本大学選 抜駅伝競走にも初出場が決まるなど、より一層の活躍が 期待される。  また、「第31回経済学検定試験(ERE)大学対抗戦」で 経済学部理論同好会が3大会連続14回目の日本一を獲得 した。また令和元年司法試験に16名が合格し、合格率は 私大6位であった。そのほかにも、各学部のさまざまなゼミ が、各種ビジネスコンテストで優秀賞を受賞するなど学生の 活躍があり、さらに数多くの国際会議や大会、資格試験や 進路、地域貢献等々、学生たちは日ごろの活動成果を、多く の分野で発揮することができた。これらの努力に対し、心か らの敬意を表したい。 さて、本年度は、次なる50年を目指し、「価値創造を実践 する『世界市民』を育む大学」との大学像を掲げ、創価大学 将来構想「Soka University Grand Design 2030」を策定 する。また本年は昨年4月に発表した「創立50周年記念事業」 の一環として、秋には世界の各国から研究者が集まり、創立 者の思想・哲学・教育などについて研究発表する「第11回 池田大作思想国際学術シンポジウム」を開催する予定であ る。本年度、創立50周年に関連する事業を着実に実施して まいりたい。 創造的世界市民を育成する大学を目指して、創立50周 年へのスタートとなる2020年を希望あふれる充実した1年 にしていくためにも、教職員・学生の皆様のこれまで以上 のご協力とご理解を念願して、本年度の学長ヴィジョンと する。 08 SUN105 2020 Spring

The year 2020, a major international sports event, the Tokyo Olympic and Paralympic Games, is scheduled to be held in the summer. Many athletes, personnel, and supporters will visit Japan from all over the world. Also, this year marks the 75th anniversary of the end of World War II, so it will give us numerous opportunities to think about peace. Moreover, Soka University will welcome its 50th class to start this important year towards the auspicious milestone of the University’s 50th anniversary on April 2, 2021. This year, Soka University will receive its second interim evaluation for the Super Global University Project. I would like to express my sincere gratitude to the many people involved in the preparations towards steadily achieving our goals for the project. As the final year of the Acceleration Program for University Education Rebuilding (AP Project) has ended, going forward, the University will continue to work to make the learning outcomes based on the project’s outcome further visible. In the research fields, adopted in 2015 by JST-JICA the “Research & Development of Appropriate Technology for Establishing a Recycling-oriented Society in Developing Countries” (Cosmos Project) is welcoming its last year and “a new interdisciplinary research field to contribute to environmental conservation and the elimination of hunger in developing countries through constructing a sustainable recycling society.” (Plankton Eco-engineering adopted by the Private University Research Branding Project in 2017 is being carried out smoothly in Ethiopia, Africa. Regarding the university evaluations, Soka University has received high academic recognitions in various aspects, including “the 4th Japanese university in the global university ranking to measure institutions’ success in delivering the United Nations’ Sustainable Development Goals,” “ranked higher than the previous year at No. 16 in the ‘internationality’ category of THEWorld University Rankings, Japan edition,” and “ranked 401st – 450th in the QS Asia World University Rankings.” I would like to ask everyone, including instructors and staff, students and other people affiliated with the University, to continue your efforts at achieving higher rankings. I was very surprised at the great achievements of our students last academic year. From January 2 to January 3, 2020, the University participated in the Tokyo-Hakone Intercollegiate Ekiden. This was the third time in the race and first time in 3 years for Soka University. Soka University placed 7th in the first half and 9th in the second half. Overall, the University finished 9th and automatically qualified for next year’s race, this is the first time the university has automatically qualified. This also resulted in an invitation for the first time to the Izumo Ekiden that is scheduled to be held in October of this year. I have high hopes that our team will be even more successful in 2020. In addition, the Soka University Economics Theory Association won first place for the 14th time and for the third consecutive time in Japan at the Economics Record Examination (ERE) University Contest. Sixteen students passed the national bar examination in 2019 where the passing rate was 6th among private universities. In addition, seminars from respective faculties saw great achievements in different business contests by being awarded Grand Prize and also students were able to show the outcomes of their daily activities in various areas at many other international conferences and contests, qualification exams, career paths, and regional contributions. I would like to express my respect for those efforts. This year, we will be the aiming towards the next 50 years, and formulate Soka University Future Concept “Soka University Grand Design 2030” under the basis of a “university that fosters ‘global citizens’ that can create value.” Also for this year, as part of the Soka University 50th Anniversary Commemorative Project announced in April of last year, researchers will be invited from all over the world to participate in the “11th International Academic Symposium on the Philosophy of Daisaku Ikeda” this fall. Researchers will give presentations on the founder’s ideas, philosophy, and education. The Soka University 50th Anniversary Commemorative Project will be sequentially implemented as planned in various areas. In order to make the year 2020 a fulfilling year overflowing with hope and the beginning towards the 50th anniversary, I would like to conclude my vision of this year by asking all the Faculty, staff, and students for further support and understanding with the aim of becoming a university that fosters creative global citizens. 教学マネジメント 研究基盤の強化 競争的資金獲得強化のための支援制度の拡充 国際競争力の強化 重点研究の推進 適正な研究活動の推進 創立者の思想・実践および創価教育に関する研究を推進 データサイエンス教育の進展 新たな教育課程の充実 AP事業の継承・発展 学生の文章力向上に向けての取り組み 入試制度改革 1: 2: 3: 4: 5: 1: 2: 3: 4: 5: 6: 1: 2: 教育の質保証への取り組み強化 外部評価体制の拡充 1: 2: 3: 4: 5: 新たな奨学金制度へ 学生寮のさらなる充実 適切な障害学生支援の提供と環境整備 キャリアサポートの強化 留学生へのキャリアサポートのさらなる充実 1: 2: 3: 4: 「スーパーグローバル大学創成支援」の第2回中間評価に向けて 留学・学習成果の分析(BEVI-j) SDGsに関する取り組みと「THE University Impact Rankings 」 創立50周年記念事業としての国際戦略 学生支援の充実 国際戦略 1: 2: 3: 4: メディア授業の拡充 オンラインガイダンスを実施 社会教育士の取得 各都道府県別の学習会の支援強化 通信教育部の取り組み 教育戦略 研究活動 09 1 4 5 6 2 3

1956年熊本県生まれ。創価高校、創価大学の4期生。経済学部を卒業後、創価大学大学院・ 博士後期課程を満期退学。経済学修士。専門は経営学。短大開学より教鞭を執り、講師、准 教授を経て教授。入試部長、学生部長などを歴任し、現代ビジネス学科長、副学長を経て、 2019年より学長に就任。研究テーマは「人間主義とマネジメント」。業績として「多国籍企業 と人間主義-社会貢献と平和」『創価女子短期大学紀要』(中国語、英語で翻訳)など多数。 Born in Kumamoto Prefecture in 1956. 4th graduating class of Soka High School and Soka University. Graduated from the Faculty of Economics, Masters in Economics, specializing in business administration. Together with the opening of Soka Women’s College, served as a lecturer, associate professor and subsequently professor. Also notable appointments as Dean of Admissions, Dean of Student Affairs, also Dean of Department of Modern Business, Vice President, and appointed President from this academic year. His main research theme is “Humanism and Management” and notable literary works are “Multinational Enterprise and Humanism-Social contribution and Peace” from “Soka Women’s College Bulletin” (also translated into both Chinese and English) 2020年度 創価女子短期大学 学長ヴィジョン 2020 Soka Women’s College President's Vision This academic year, SokaWomen’s Collegemarks its 35th year since its opening. The Department of International Business Studies will have its 1st-class graduate and welcome its 3rd-class, making the 2020 academic year a year of dynamic advancement. In the second year since my appointment as president, I would like to create a stronger foundation toward further development. The 1st-class of the new department bravely challenged themselves to create new traditions, creating many paths. In terms of studies, the special English program (E-Swans) made certain achievements, and in terms of obtaining qualifications as well, many passed various upper-level exams, centering on special business classes, adorning the first complete academic year. In particular, receiving the “Minister of Education, Culture, Sports, Science and Technology Award,” which is the foremost award in Japan for Business Writing Skill Examinations (sixth time in five years), a 14-year consecutive Group Award in the Secretarial Proficiency Test, and the individual “Outstanding Award” and “Japan Secretaries Club President’s Award” in the second level of Business Writing Skill Examinations attests to the high appraisal of education carried out at Soka Women’s College. Also, in terms of employment, graduating students have been able to enter various fields such as Flight Attendant, travel agency, hotels, construction, and banking. Students are playing major roles such as occupying first to third place in the third level of Bookkeeping Champion Convention, also winning fifth place nationally as a group. We achieved the top 50 in English Presentation Contests, also receiving 11 awards in various other competitions and presentations, including an “Outstanding Award” and a “Judges’ Award.” The college was also selected for two years consecutively in the Student Planning Project of the “The Consortium of Universities in Hachioji,” and confections using Hachioji ginger became a commercialized product. The “35th Anniversary Project” began fromOctober last year, for which we celebrated with a commemorative lecture by the Ambassador to Japan from the Republic of Uganda and a short movie contest. We will continue to celebrate this occasion until October of this year, and, centering on the Department of International Business Studies, we will strive to further develop our education, as we aim to foster “Be a person with a global view and social wisdom.” 本年度、短大は開学35周年の佳節を迎えた。「国際ビジネ ス学科」1期生を送り出し、3期生を迎え、いよいよ2020年度 は飛躍の年となる。学長就任2年目としてさらなる発展を目指 し、より強固な基盤をつくっていきたい。 新学科の1期生は新たな伝統に果敢に挑戦し、道を切り拓 いてきた。勉学面では英語特別プログラム(E-Swans)も一定 の成果を収め、資格取得においてもビジネス特設クラスを中心 に、各種上級資格にも数多く合格するなど、完成年度を飾るこ とができた。とりわけ、ビジネス文書検定での日本一となる「文 部科学大臣賞」の受賞(5年ぶり6度目)、および秘書検定での 14年連続の団体表彰、さらに個人でのビジネス文書検定1級 「優秀賞」ならびに2級「優秀賞」、「日本秘書クラブ会長賞」の 受賞は、短大教育に対する高い評価の表れである。また、就職 先もCAや旅行、ホテル、建設、銀行など多くの分野を勝ち取っ ている。学生の活躍についても、簿記チャンピオン大会では会 場で3級1~3位を独占し、団体でも全国5位に輝いた。英語プ レゼン・コンテスト大会ではTOP50に入り、その他、各種コン ペティション・発表会においても、優秀賞や審査員賞など11件 の表彰をいただくことができた。「大学コンソーシアム八王子」 の学生企画事業補助金にも2年連続採択され、八王子ショウ ガを使ったスイーツ企画として商品化することができた。 「開学35周年記念事業」を昨年10月より開始し、ウガンダ共 和国女性大使による記念講演会、そして、ショートムービーコ ンテストを実施し、その開幕を祝ってきた。本年の10月までこ の佳節を祝うべく、国際ビジネス学科を軸に、これまでの教育 をさらに発展・充実させ、建学の指針の1つである「社会性と 国際性に富む女性」の輩出を目指し、以下の5点を教職学で力 を合わせ取り組んでいきたい。  Soka Women’s College President Noboru Mizumoto 創価女子短期大学 学長 水元 昇 10 SUN105 2020 Spring 教育内容の充実 1: 2: 3: カリキュラム改革 英語教育の充実 資格取得への支援 1 学習支援センター の充実 1: 2: 土曜講座 学習サポート 2 学生支援 1: 2: 3: 初年次教育 奨学金制度 進路支援 3 入学者選抜の充実 4 教員の研究・教育活動の 活性化と教員業績評価の取り組み 5

1969年福岡県生まれ。創価大学経済学部在 学中より留学で海外サッカーを経験し、卒業後 はプロサッカー選手として国内外のチームで活 躍。その後トップチームのコーチ、強化部長を 歴任し、2015年からFC東京GMとしてチーム の強化に尽力。2018年よりベルギー1部のシ ント=トロイデンVVのCEOに就任。 立石 敬之さん “本場”欧州のサッカー界に、経営の日本代表として挑む  ベルギーのサッカー1部リーグに、日本企業が親会社となるチー ム「シント=トロイデンVV」が誕生してから、早2年半の月日が経とう としている。チームのCEOとして、この類を見ないプロジェクトのタ クトを振っているのが、創価大学サッカー部OBの立石敬之さんだ。 「ベルギーの小さな町であるシント=トロイデンでは、国民性か らか保守的な方が多く、ローカルな枠を越えた変化はあまり望 まれません。そんななかでサッカーという彼らの一番の文化を、 異国人がリードしていくのですから反発も多くあります。だから こそ、目に見える“結果”を出すことで、国境や文化を越えたリスペ クトや真の友情を勝ち得ているのです。プロサッカークラブとい う、外から見れば華やかな業種かもしれませんが、日々コツコツ と信頼を勝ち取る闘いです」  立石さんは自らもJリーガーとして活躍。選手引退後はJ1トップ 芝生のフィールドではなく、経営というステージで、チームを勝利に導き、信頼を得る。 チームの運営を担っていた。そんな立石さんをベルギーでのチャ レンジに向かわせたのは、創立者の「英知を磨くは何のため 君よ それを忘るるな」という言葉だ。 「大学では『なぜ創価大学に入学したのか?』『何のために生ま れてきたのか?』『それに応えられる自分になるためには何が必 要か?』を追求する日々を過ごしました。そこで培った“使命感” が、今の原動力になっています。私はチームの代表としてはもち ろん、シント=トロイデンの町の代表として、アジアの代表として、 そして創価大学卒業生の代表として、勝利をつかむという使命を 果たすために、英知を磨き、前進し続けるだけです」  シント=トロイデンの町には以前よりも多くのチームフラッグが 掲げられるようになった。立石さんが勝ち取った信頼が核となり、 ベルギーの古都にさらに大きな歓声が巻き起こることだろう。 11 ◀ 目指すは、 アジアで もっとも人気のあるクラ ベル ギ ー の 地 での 挑 戦 は まだまだ続く。

EUの本部やNATOの本部が置かれているヨー ロッパの中心として、ベルギーは多くの人種や国 籍の方々が共働する多様性国家。「シント=トロイ デン」は小さな町だが、世界遺産もある歴史と趣 きが感じられる古都。「シント=トロイデンVV」は、 そうした町の象徴として、人々から愛されている。 立石 敬之さん 経済学部1993年卒業(18期)ベルギーサッカー1部リーグ 「シント=トロイデンVV」CEO ベルギー [シント=トロイデン] 12 SUN105 2020 Spring

学 問 探 訪 ロバート・シンクレア教授 【 国際教養学部 】 哲学は世界を理解するために必要な考察力を養う学問  哲学とアメリカのプラグマティズムを専 門とするロバート・シンクレア教授。そも そもプラグマティズムとはどういう学問な のでしょう。 「プラグマティズムとは、19世紀後半の 科学における革新―例えばダーウィンの 進化論などを通して、人間とはどういう生 き物か、自然界とはどういうものか、また、 そういった革新が我々の道徳観や社会、 知識、思考などにどう影響するかを考察す る哲学的な試みです」  シンクレア教授はカナダのサイモンフ レーザー大学で、W.V. クワインをはじめと する哲学者たちについての研究で博士号を 取得。哲学と科学、両方への関心を追求 する中で、クワインに代表されるような、 理論的で抽象的な哲学者のための哲学だ けでなく、より現実に近いところで展開さ れるプラグマティズムにも興味を持つよう になり、卒業後に独学で研究しはじめまし た。アメリカのプラグマティズムを代表す る思想家ジョン・デューイについては現在 も研究を続けています。ただ、アメリカの プラグマティズムというと日本ではあまり 馴染みのない学問。日本での教育活動に おいて困難はないのでしょうか。 「プラグマティズムは、科学、教育、宗教、 政治、情報、道徳などにおけるさまざまな 問題の解決に直結するため、学生たちも 学ぶモチベーションを持ちやすいようで す」とシンクレア教授。理解を深めるには、 できるだけたくさんの例を示すことが必要 だと言います。 「例えば、伝統と最新の科学との対立や、 価値観の変化や相違などの社会における葛 藤です。より具体的な例を挙げると、日本 におけるジェンダーの問題があります。こ れまでの日本の発展は伝統的な価値観の 上に成り立ってきたものですが、これから 先、新しい価値観をどう受け入れていくの かというように、学生たちが生まれ育った 社会に引き寄せて考察させるわけです」  このように、どの時代、どの場所でも、 当てはめて検証できるのがこの学問の特徴 だとシンクレア教授は言います。 「ここで重要なのは、ある特定の理論で、 ある文化の変容を説明しきれるかどうかで はありません。そもそも自分の考えを整理 File 23 創大の すること自体が、哲学的な作業なのです。 私の役割は、現代社会について考察する にあたって、ビジネスや経済学を学ぶので はなく、哲学を学ぶことの意義は何なのか を伝えること。そして、現代の社会に即し た形で哲学の妥当性をよりわかりやすく提 示し、世界が直面する問題を解決する糸 口にたどり着きやすくすることです。そこ から先を考え、行動を起こすのは学生自身。 よりよく行動するには、よりよく考えること が必要です」  シンクレア教授はクワインとデューイに 関する論文執筆をさらに進めるとともに、 宗教や政治哲学などについての考察を深 め、私たちに世界市民に必要な考える力を 与えてくれることでしょう。 13 [ テーマ ] 実 用 主 義 プラグマティズム ROBERT SINCLAIR ◀シンクレア教授の 最近の著書。 1980年代に実施された W.V.クワインによる 講義の内容を初めて 英語で出版した。

14  私が成長を実感できたきっかけとなったのは、西浦ゼミでの活動です。ビジネ スコンテストを目標にゼミ生一丸となって、海洋プラスチックなどの社会問題の 解決に取り組みました。その活動のなかで、西浦先生をはじめ、熱い思いを持っ て挑戦を続ける友人たちに刺激をもらい、私自身も「いろいろなことに挑戦し続 けていこう」という気持ちが芽生えました。将来の目標として掲げている「貧困問 題の解決」を目指して、まずは目の前の人を大切にしていきたいと考えています。  大学入学から始まり、ゼミ活動、GLCでの課外活動、フィリピンへの留学な ど、今までさまざまな挑戦を続けられたのは、「麻衣子が決めた道を全力で進 みなさい」と言葉をかけてくれた両親の支えがあったからです。私の挑戦を受 け入れてくれた両親には感謝の思いでいっぱいです。この気持ちを返せるよ う、これからも夢に向かって日々挑戦していきます。 ▲(左)3年次に創大祭の役員メンバ-と (右)高校時代の家族写真 ▲(左)留学で出会ったフィリピンの子どもたちと一緒に (右)留学出発前、挑戦を支えてくれた両親との写真  10歳上の兄が創価大の卒業生で、寮の役員などを通じて成長する姿に私は憧 れていました。私も学内活動に従事し、創立者の平和や建学の理念を具現化する ために、同じ志を持った仲間たちと試行錯誤するなかで成長できました。学生自 治会では、各種行事の実行委員会と大学職員の方をつなげる立場として、物事を 陰から支える役割の大切さを自覚しました。一つひとつの行事をつくり上げるな かで、自分の働き次第で関わる方々の負担が軽減でき、成功を生み出せる…… そういった状況での頑張りに対してもらう「ありがとう」の言葉は大きな喜びでした。  そうした体験から、私もサポートしてくれる家族に心から「ありがとう」と言 えるようになりました。大学に進学させてくれたこと。そして今は、税理士にな り地元宮城を支える中小企業を助けたいという夢を応援してくれていること。 感謝しきれません。 最高の人間教育を受け、心を磨き日々 成長する姿に喜びと頼もしさを感じ ています。今、震災で被害を受けた東 北の力になりたいと税理士への道を 歩み始めました。どんなに高い山で あっても創立者との原点を忘れず、誓 いを果たせる人生を歩んでください。 熱い思いを持った仲間たちに囲まれて、 自分らしく挑戦し続ける気持ちが芽生えた。 三浦 伸悟さん 創価大学 経営学部4年 学内活動での経験を通じて 「ありがとう」という言葉の大切さを改めて実感。 学生たちが、夢に向かって歩みを進められるのは、保護 者の皆さまの温かいサポートがあってこそ。また保護者 の皆さまも、大学・短大で一生懸命に学び、大きく可能 性を羽ばたかせる我が子の頑張りに、大きな喜びを感 じていらっしゃるはずです。でも、お互いに思いを伝え る機会はなかなかないもの。本企画ではそんな気持ち を「SUN」誌面を介して伝え合っていただきます。 Dear Shingo 蛭田 麻衣子さん 創価大学 経済学部4年 母より フィリピン大学への留学では、体調を 崩しながらも頑張りましたね。現地の 方々にもお世話になり、帰国してから 感謝の思いを話すあなたは、とても嬉 しそうでした。どんなことも前向きに頑 張る姿に、私たちも本当に励まされて います。これからも自分の道をまっすぐ に進んでいってください。 母より Dear Maiko SUN105 2020 Spring 東北編 福島県出身 宮城県出身

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