創価女子短期大学×SDGs 「生理の貧困をなくそう!」

昨年(2021年)11月18日に運用開始された、生理用ナプキンの無料提供サービス「OiTr(オイテル)」。短大生が声をあげ実現することができたこの取り組みの背景には、どのような道のりがあったのでしょうか。中心となって動いた青野ゼミ生16名に取材をしてみました。

短大に生理用ナプキンの無料提供サービス「OiTr(オイテル)」を設置しようと思ったきっかけは何ですか。

春学期に「都民による事業提案」への挑戦をゼミナール全体で取り組みました。SDGsに関連する様々な社会課題を調べていく中で、日本の相対的貧困である“生理の貧困”という課題を発見しました。生理の貧困とは「生理用品に十分にアクセスできない環境」のことを指します。私たちは、この問題を解決するためにはどのような提案を東京都にするべきなのか毎週のように授業外の時間を使って検討を重ねてきました。そのような中、「OiTr」という生理用ナプキンを無料で提供するサービスを知りました。そして、このシステムを東京都の女子大・女子短大に設置することを提案しましたが、結果は採択されませんでした。
不採択の結果を受けた時、努力が報われず、残念な気持ちになりました。しかし、私たちが本当に達成したいのは、生理のことをオープンに語れる世界を築いていくことであり、本当に困っている人を救っていきたいという原点に立ち返ることができました。
そこで、私たちが通う創価女子短期大学から「生理の貧困」をなくしていきたいと考えました。実際にコロナ禍で奨学金により生計を立てるなど経済的に苦労している短大生がいることを知り、短大生が安心して学業に専念できる環境を学生中心で作っていきたいと「OiTr」の設置を短大へ提案しようと決意しました。

この取り組みの中で嬉しかったことは何ですか。

これから先の短大生にも繋げられる無料ディスペンサーを設置することができ、金銭面での負担の軽減や、多くの人が生理について考えてくれたことがとても嬉しかったです。短大生からも次のような声をいただき、私たちの活動が短大生のお役に立ったことが何よりも嬉しく思います。
「毎月の生理に対する心配事が減り、学業に専念できる環境ができたことが嬉しいです」
「実際に使ってみて、とても簡単で使いやすかったです。」
「経済的に負担があり、他の人には打ち明けにくいことだったので、このようにトイレットペーパーと同じ感覚で生理用品にアクセスできることは本当に助かりました。」

この取り組みの中で大変だったこと、印象に残っていることは何ですか。

先が見えず実現できるのかどうかわからない中、皆の意見をまとめつつ進んでいくことが手探りで難しかったことを覚えています。
また短大に設置するにあたり、ネット環境の不安定さなどの壁があり、一つひとつクリアしていくことが大変でした。
また、当初一つのチームが考えた提案をゼミ全体の取り組みとすることができるか心配でした。しかし、ゼミ生の原点を忘れずに進んでいる姿や、真剣に考える姿を見て、その思いが伝わり、一緒にやっていきたいという息吹を感じることができました。また、トイレの実地調査をしたことを通して、一人の考えがみんなの行動につながることを知り、とても印象に残っています。

この取り組みのビジョンを教えてください。

「“生理の貧困”をなくし、生理のことをオープンに語れる世界」です。
生理の貧困の解決方法の一つとして、生理に欠かせない生理用ナプキンを誰でも利用できるディスペンサーを設置することで、安心して生活できる環境を作っていきたいと考えています。
しかし、いまだに残る生理へのタブー感があるのも事実です。生理の貧困は、必ずしも生理用品を買うことが経済的に難しいということだけではないということを、研究を進めていくうちに知りました。例えば、親のネグレクトや虐待、父子家庭で生理用品が用意されず、必要だとも言い出せない環境、性教育の不足、知識不足など、このような問題は「可視化されにくい」という問題があります。
そのため、生理の貧困が解決されても生理へのタブー視が残る場合、生理のことをオープンに語れる世界は実現されません。生理は生きていくためのサイクルであるため、恥ずかしいことではないということを、私たちから社会に訴えていくことで、生理のことをオープンに語れる世界の創造を実現したいという思いをビジョンに込めました。

この取り組みとSDGsの関係性を教えてください。

生理用ナプキンの無料提供サービスの導入は、SDGsの1番「貧困をなくそう」や5番「ジェンダー平等を実現しよう」だけでなく、3番「すべての人に健康と福祉を」、6番「安全な水とトイレを世界中に」といった目標に貢献すると考えています。さらに、生理用品が生活必需品であることを生理のある人ない人共に理解することで、生きやすい世の中になり、SDGsのスローガンである、「誰も置き去りにしない(leave no one behind)」にもつながると考えています。
また、今回の取り組みをもっと多くの方に知ってもらいたいという思いから、本年1月に八王子市役所(男女共同参画課)の担当の方に視察に来ていただき、意見交換を行うことができました。そして、地元のメディアであるタウンニュース八王子にも私たちの取り組みを記事として掲載していただくなど、大勢の方のパートナーシップがないとSDGsの目標は達成されないと思います。その意味で、SDGsの11番「住み続けられるまちづくりを」や17番「パートナーシップで目標を達成しよう」にも繋がると考えています。

最後に今後やっていきたいことと今後の決意を教えてください。

私たちの取り組みを通して、生理の貧困があることをまず知っていただきたいです。生理の貧困の解決方法の一つとして実現したこれまでの挑戦の姿を通して、生理のことを今一度考えるきっかけを作っていきたいです。そして最終的には正しい情報を理解し、生理に対するタブー視をなくしていきたいと考えています。
今後は、地元の友人や企業の方など、周囲の人から教えていきたいです。この取り組みが、日常的に生理に悩む女性を支えるディスペンサーになるということを伝えていきたいです。また、ゼミ全体でSDGsについて学んできたとはいえ、生理の貧困やSDGsの知識が足りないので、もっと深めていきたいです。

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