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2023年08月09日 09時29分

本学理工学研究科 博士後期課程3年 太田隼人さんの論文が米国科学誌『Scientific Reports』に掲載されました

理工学研究科博士後期課程3年
太田隼人さん

 創価大学理工学研究科博士後期課程3年太田隼人さん(西原祥子教授の研究グループ)は、前立腺がんが3位硫酸化へパラン硫酸を介して去勢抵抗性を獲得することを見出しました。本研究の成果は、ネイチャー・リサーチ社のオープンアクセスジャーナル「Scientific Reports」に2023年7月18日に掲載されました。

 前立腺がんは男性において代表的ながんであり、男性ホルモンのアンドロゲンを介して増殖します。一般的な治療としては、去勢などのアンドロゲン除去療法を行い、前立腺がんの増殖の原因となるホルモンを断ち、増殖を抑えます。しかし、一部の前立腺がんはホルモン非存在下でも増殖可能な去勢抵抗性前立腺がんとして生存し、死亡リスクを高めます。今のところ、去勢抵抗性前立腺がんへの有効的な治療方法は確立されていません。去勢抵抗性前立腺がんは、アンドロゲンシグナルの代わりに、上皮成長因子受容体(EGFR)や、IL-6、Wntシグナルなどの別のシグナル伝達経路を介して増殖することが知られています。しかし、その詳細なメカニズムは明らかになっていませんでした。本研究では、シグナル伝達の共受容体として機能するグリコサミノグリカンの一種であるへパラン硫酸に着目し、去勢抵抗性前立腺がんの増殖におけるへパラン硫酸の機能解析を目的としました。

 近年、へパラン硫酸は、硫酸化修飾のパターンによって機能が異なることが知られています。本研究では、3位硫酸化へパラン硫酸と、その合成酵素HS3ST1の発現量が、去勢抵抗性前立腺がん細胞において増加することを明らかにしました。そこで、HS3ST1のノックダウン実験を行い、去勢抵抗性前立腺がん細胞においてEGFおよびヘパリン結合性EGF(HB-EGF)が3位硫酸化へパラン硫酸を介してEGFRに結合し、シグナルを活性化することを見出しました。HB-EGF がへパラン硫酸に結合することはよく知られていますが、これまでへパラン硫酸に結合しないとされていたEGFが3位硫酸化へパラン硫酸を介してEGFRシグナル伝達を活性化する、という事実を明らかにしたことは注目すべき点です。さらに、EGFRシグナルの阻害剤であるGefitinibが、去勢したマウスにおける前立腺がん腫瘍により有効的であることを示しました。

 本研究は前立腺がんの去勢抵抗性獲得メカニズムを解明し、本研究成果は去勢抵抗性前立腺がんのより有効的な治療に繋がることが期待されます。本研究の一部は、AMEDの課題番号JP20ae0101037および創価大学糖鎖生命システム融合研究所共同研究費の支援を受けて実施されました。

ページ公開日:2023年08月09日 09時29分