生徒たちが嬉しそうに「おにぎり」を持って微笑んでいる。トントンと紙相撲を楽しむ生徒の姿も目に映る。
 ここは、微笑みの国、タイ。この学校では、多くのタイの生徒たちが日本語を勉強している。そこでは、机上の学習だけでなく、五感を使った体験重視のオリジナリティ溢れる授業がおこなわれていた。タイの生徒たちが活き活きと日本語を学ぶ背景には、日本からやってきた学生アシスタントの努力と工夫があった。
 今回は、日本語パートナーズのプログラムを利用し、タイで日本語ティーチングアシスタントをおこなっている今村さくらさん(国際教養学部4年生)に、現在取組中の活動について詳しく話を伺った。
 国際教養学部の特色である「学部必修留学」を終えた後、学生は海外でどのようなキャンパスライフを送っているのだろうか。
 
●現在活動している内容を教えてください。
国際教養学部4年・今村さくらさん

 現在、私はタイ・ピッサヌローク県の中高一貫校で日本語パートナーズというプログラムで日本語アシスタントをしています。日本語パートナーズというのは国際交流基金のプログラムで主に日本語授業のサポート、日本文化を通しての交流、現地語や現地の文化の習得をします。短く言えば言語や文化学習を通して、日本とアジアの交流を深めていく活動です。毎日、タイ人の日本語の先生とチームティーチングで授業を行っており、タイ人の先生が文法の説明を行い、私は主に会話練習や発音、文化紹介を担当しています。私が派遣されている学校(PCSHSPL)はサイエンスに力を入れている学校なので日本語専攻はありませんが、日本の高専やスーパーサイエンスハイスクールと提携・交流がある為、日本に興味をもっている生徒も多く、楽しんで日本語を学んでいます。
 文化紹介では、今までに紙相撲、スイカ割り、日本のゆるキャラ紹介、日本の妖怪紹介、おにぎり作り、年賀状交換などを行いました。自分の学校以外でも日本語コンテストの審査員や日本語キャンプのスタッフとして他校の生徒とも交流しています。

●挑戦しようと思ったきっかけは何ですか?
現地の学生と紙相撲を楽しむ今村さん
 もともと、文化や教育が人に与える影響に興味を持っていました。そこでタイ独自の文化を教育の面から学べること、日本と日本語を知ってもらうこと、そして文化を通しての人間交流ができるこのプログラムを見つけ、ぜひ挑戦したいと思い応募しました。興味をもった理由は、国際教養学部の学部留学中の経験が大きいです。私はイギリスのロンドン大学ゴールドスミスに留学しており、留学中に地元の老人クラブで日本文化についてのプレゼンをする機会がありました。そこで、最初は全く日本のことを知らなかったお年寄りがどんどん日本文化に興味をもつ姿に、日本人として喜びを感じました。また、Japanese Language and Cultural Exchange(JLCE)というボランティア団体で日本語と日本文化を約半年間教えていました。参加する人たちの日本語が上達するのを見るのが嬉しく、多様な国籍の人に教えていた中で日本語や日本文化を通してその人たちが仲良くなる姿を見て喜びを感じました。一国の文化や言語を学ぶことによって、人と人とが繋がれることを確信しました。この経験を活かし、タイの人たちにも日本のことをもっと身近に感じてほしいとともに、私もタイの文化を人との交流の中で学びたいと思い挑戦しました。
 
●どのような学びがありましたか?
 タイは仏教国なので朝礼でお経を唱える、お寺によく寄付をする、大事な行事の時はお坊さんが学校に来るなど仏教が生活に根差しています。そのような生活や環境がタイ人の行動規範を作っているように感じます。タイ人は一人一人が自分らしさに自信をもっており、すごくキラキラしています。他人の見た目や行動にあまり介入せず、個人を「男らしさ、女らしさ」の観点で批判する人はほとんどいません。(もちろん親から結婚はまだかと言われることもあるそうですが)多様性が重んじられていて、すごく生きやすい世の中だと感じました。これは、タイ独自の考え方が浸透しているからだと思います。やはり、環境と教育は個人の行動に影響を与えるのだと身をもって学びました。
 
●国際教養学部での経験が活きたと思ったエピソードはありますか?
 国際教養学部で様々な分野を学び、広い視野を持てたことで、今まで出会ったことがなかった考え方をすんなりと受け入れられるようになったと感じています。だからこそ、今はタイ人の先生方と楽しんで働くことができています。国際教養学部は留学生と一緒にプレゼンテーションやリサーチをする機会がとても多いです。大学1年生のときは、プレゼンテーションの仕方や内容に関する考え方の違いでチームメンバーとぶつかることが何度かありました。しかし、4年間の学生生活を通じて、自分とは違う意見も尊重することができるようになり、言葉を選びながら自分の意見を伝えることができるようになりました。特に、留学していたイギリスや、多種多様なメンバーが集う国際教養学部の中では、批判的かつ論理的思考能力が求められます。しかし、タイは年上をすごく敬う国で、年上の意見に反論することはあまりありません。それ故、最初はもどかしい思いもしました。しかし、それは私が今まで暮らしてきた環境からそう思うのであって、タイでは普通のことだと認識してからその違いを楽しめ、働きやすくなりました。
 次に、国際教養学部で身に付けた「無理だと思える問題にも、諦めずに取り組む」精神が、このタイでも活きました。国際教養学部は多くの課題があります。苦手な分野では時に諦めたくなるときがありましたが、どうにかここまでやってくることができました。その経験は、ここでも活きています。中々授業がうまくいかないときや、生徒の日本語習得に行き詰まりを感じたときでも、諦めずに取り組むことができました。ある生徒は日本語がほとんどわからず、授業をよくさぼるようになってしまいました。しかし、生徒の可能性を信じ、諦めずにタイ人の日本語の先生と解決策を話し合いました。基本に立ち返ることと、たくさん褒めることで生徒も勉強に励むようになり、2学期の中間テストでは、なんと満点をとってくれました。諦めずに試行錯誤して本当に良かったです。
 最後はやはり英語です。授業中に英語を使うことはありませんが、サイエンス系の学校のため、泰日の生徒で共同プロジェクトをすることもしばしばあります。その為のオンライン会議では、もちろん英語を使います。タイと日本の英語のアクセントはかなり違うので、そのような時にサポート役として通訳をします。また、去年6月に行われた日本とタイの高校が一堂に集うサイエンス発表会でも、文書の翻訳や通訳を任されました。国際教養学部にいなければ、ここまで英語はできていなかったと思うので勉強していて良かったと思いました。
●今後の目標を教えてください。
 セクシャリティや性的指向、宗教、人種などが違っても、その人らしく生きられ、みなが個人として尊重される世の中をつくる為に勉強し、行動を起こしていきたいです。特にわたしはジェンダー学に興味があり、セクシャルハラスメントを含む性暴力(同意のない性的言動)を世の中からなくすために性的同意の概念を広める教育に関わりたいと思っています。(※性暴力は男らしさ、女らしさの固定概念に起因している部分が大きいからです。)
 また、来年度から日本人と留学生が一緒に暮らす国際寮で寮生の生活をサポートする「Resident Assistant」をすることになりました。タイに来る前も国際寮に住んでいたのですが、生活様式や考え方の違いから小さなすれ違いがよく起こりました。しかし、相手とすれ違うときこそ、一番相手を理解することができるのだと思います。帰国後も、後輩が多様性を肌で感じることができる環境作りに力を注ぎたいと思います。
●国際教養学部を検討している未来の創大生へ一言メッセージをお願いします
 自分の行動一つでどこまででも世界は広がります。ぜひ勇気の一歩を踏み出して、自分の世界を広げていってください!

今村 さくら Imamura Sakura

  • ●入学年度:2016年度
    ●留学先:ロンドン大学ゴールドスミス
    ●指導教授(ゼミ):ジョハンナ ズルエタ准教授

ページ公開日:2019年02月19日 11時45分