鈴木学長による学生歌の意義考察

私の大好きな「学生歌」について話をさせていただきます。新入生向けの「人間教育論」という授業で、初めて担当させていただいた学長講義で、私は学生たちに「学生歌」の歌詞について話し合ってもらいました。「この歌詞について思いついたことを述べてみよう」という問題です。皆さんの中には私よりも「学生歌」に長年親しんでこられた方がたくさんおりますので、このような質問は「今さら」といった感じかもしれませんが、私なりに考えてみました。 
学長  鈴木 将史(2022年)

まず誰もがすぐに思いつくのが、1番から3番までの末尾がすべて「誰がために」となっており、そこに建学の精神が3つ歌われていることです。
「人間の道学ぶかな」は「人間教育の最高学府たれ」。「平和の要塞築きたる」は「人類の平和を守るフォートレスたれ」。そして「生命の真求むかな」は「新しき大文化建設の揺籃たれ」に当たります。「新しき大文化」とは、「生命の尊厳に基づく新しい文化」だからです。
「誰がために」には、「英知を磨くは何のため」といった問いかけや、「大学は大学に行けなかった人のためにある」といった哲学が込められていると思います。

この歌詞は、他にもたくさんの見方が可能です。

この青い文字のところを見ると、1番の「白蝶」「葉桜」「緑のしげり」「青嵐はげしく」などは春から夏にかけて、2番の「桑の実みのれる」は秋、3番の「不二の峯真白く」は冬の風景です。

このように、学生歌にはキャンパスにおける季節の移り変わりが、様々な色を用いて表現されていることが分かります。

さらに1番の「喜び舞いて」「集える若人」などは明るい昼間の風景、2番の「たそがれこめぬ」等は夕方から夜にかけて、そして3番の「朝日は昇りゆく」などは朝の風景です。

学生歌を歌うと、キャンパス及び周辺地域における、一日を通した光の変化を感じ取ることができます。またこの順番は決して偶然ではなく、春夏には明るい昼が、秋には長い夜が、そして冬には清冽な朝が、最も季節感をよく感じられる時間帯として選ばれているのだと思います。

また、1番のこれらの歌詞を見ると、広いキャンパスに白亜の学舎が建っている創価大学の姿がわかります。2番の「城跡」「土塁」などは滝山城の姿です。3番ははるかに山々が連なり遠くに富士山が見える、八王子の風景を表しています。このように、創価大学周辺の風景がありありと浮かび上がってくるような歌詞です。

そしてこれらの箇所には、学問を志し、父母や正義のために立ち上がり、世界へと雄飛しゆく創大生の精神が見て取れます。

また、1番ではまず自身の人生についてひそかに考える姿が、2番では家族や社会について真剣に思いをめぐらせる姿が、そして3番ではいよいよ世界や人類のために行動しようとする姿が描かれています。まさに自身から世界へ、知識・理解から思索・行動へとスケールを広げる、創大生の成長の姿を描いていると言えます。

このように「学生歌」には、創価大学が持つ様々な価値が余すところなく描かれています。

私は学長になったばかりですが、本学のこのような多彩な価値が、彩り豊かに開花するような大学を目指していきたいと思います。
学内の皆さんの声に真摯に耳を傾けるとともに、誰もが何でも正直に言い合える大学にしてまいります。
グランドデザインや学長ヴィジョンをしっかりと掲げつつ、それぞれの個性や資質・能力を発揮し合うキャンパスになるよう、皆で力を合わせて前進していきましょう。