郷田 秀一郎 教授

酵素や微生物など、
ミクロな世界の謎を追求し
社会に貢献!

自分の目で見る、手で触れる大切さを
学んだ10代の日々

私の主な研究対象は酵素やタンパク質です。酵素やタンパク質という言葉自体はよく耳にすると思いますが、実は生命科学に欠かせない存在だとご存じでしたか?医薬品や化粧品など、みなさんの身近な商品にもこれらの研究が活用されています。私は酵素やタンパク質の化学的特性を分析し、社会に役立てる研究を行っています。
私は創価中学から学園で学び、その後、創価高校に進学しました。高校生の思い出は、2つのサマーセミナーに参加したことです。高校2年生の時には北海道の別海町で行われたサマーセミナーに参加し、タンチョウヅルの観察や釧路湿原を散策しました。実際にフィールドに出て観察した体験はかけがえのないものでした。
高校3年生の時には創価大学ロサンゼルス分校(当時)に語学研修に行き、とても有意義な経験をさせていただきました。自分の学生生活を振り返ると「教室内だけでなく、外でも色々と体験したい」という性格が強く、後の研究スタイルにも結びついているのかもしれません。

大学進学は、とても悩みましたが、創立者池田先生とライナス・ポーリング博士の対談集「『生命の世紀』への探求」にとても感動して、自分の入学と同時に新しく開設される創価大学工学部生物工学科(当時)に運命を感じ、創価学園から推薦で入学することを決めました。

特殊な働きを持つタンパク質で
社会課題の解決を目指す

今、特に力を入れているのが「溶血性レクチン」という、赤血球を壊してしまうタンパク質に関する研究です。このタンパク質はグミと呼ばれるナマコの体液中にあり、ヒトを含む生物の赤血球を溶かしてしまう毒素が含まれているので「溶血性」という名前が付けられています。
「赤血球を壊す毒素」と聞くと、とても危険なように思えますよね。ですが、この溶血性という性質を活かし、蚊が血を吸うことによって感染するマラリアの根絶を目指している研究者もいます。私たちは「壊す」という特徴を活かして、特定の細胞を破壊するタンパク質にできないか、と考えています。例えばがん細胞だけを特異的に破壊することができたら、とても効果的だと思います。このように、一見何に役立つのかわからないものの用途を見つけることも研究の面白さのひとつです。

フィールドワークの中で
身近なところから新たな発見も

続いては「好熱菌とそれらのタンパク質」の研究に関して説明します。好熱菌とは読んで字の如く、温度の高い環境に生息する微生物の総称です。好熱菌は人の体温よりはるかに高い55℃以上、種類によっては100℃以上の環境でも生き延びることができます。そのため採取できる場所も限られており、当研究室では温泉の源泉まで採取遠征を行っています。
例えば、伊豆の峰温泉からは好熱菌「サーマス・サーモフィルス」が発見されていて、現在では好熱菌・超好熱菌由来の酵素がPCRなど様々なものに利用されています。サンプル調査を行う場所は伊豆、草津などの温泉地が多いので、旅行客の方から「水質調査ですか?ご苦労様です」と声をかけられたり、旅行ガイドの方と間違えられたりしたこともありました(笑)。

未知の微生物を見つけ出し、
人々の暮らしに貢献したい

研究をしていて楽しさを感じる時は、好熱菌や酵素に代表されるような、未知の存在を見つけた時です。人工的に培養できる微生物は、微生物全体の1パーセント以下だと言われています。そのため、今でも未知の微生物や酵素が次々に見つかっています。また、タンパク質や酵素の研究は、化粧品や医薬品など身近な商品に使われることが多いのです。未知の存在を発見できる嬉しさ、そして、それによって多くの人々の暮らしに貢献できること。これらの点が、研究の大きなやりがいになっています。

学生もフィールドワークに参加!
仲間と共に成長してほしい

好熱菌のサンプリング調査は研究室の学生と一緒に行っています。現地に行って自然の中から採取することが重要なので、学生にも主体的に参加してもらっています。お互いにアドバイスしたり、サポートしたりしながら採取するので、自然とチームワークが養われます。サンプリングは持ち帰った試料を研究室で培養するところまでが一連の作業なので、スピーディーかつ正確に作業を終わらせる必要があります。少々大変なところもありますが、学生からはとても好評です。楽しみながら行ってくれているようで、私としても非常に嬉しく思っています。

自分で手を動かして実験するのが何よりも楽しい!
自ら考え、行動する人に!

私の研究室でフィールドワークを行うように、共生創造理工学科は実験を非常に重視しています。「手を動かし、何かを作ることが好きな人」にとって、とても居心地の良い環境なのではないでしょうか。学生を指導する立場から見ても、フィールドワークなどで大学の外に飛び出す経験が、大きな成長の機会になっていると感じています。もちろん最初はどうして良いかわからないと思いますが、先生や先輩がきめ細かくサポートしますので、安心して何でも聞いていただければと思います。

研究を漢字一文字で表すと?

「極」

私は「極限環境生物学会」に所属しており、好熱菌など厳しい環境に生きる生物の研究を行っています。また、研究は対象を深く掘り下げて「極める」ことが重要です。妥協することなく、分からないことを解明していきたい。1つの専門分野を極めていきたい。そんな意味を込めてこの字を選びました。

<経歴>
1995年 創価大学工学部生物工学科卒業
1997年 筑波大学大学院修士課程修了
2000年 大阪大学大学院博士課程修了 博士(理学)
2000年 東北大学大学院工学研究科博士研究員
2002年 徳島大学工学部生物工学科助手
2002年 理化学研究所播磨研究所共同研究員 併任(2005年3月まで)
2005年 理化学研究所播磨研究所客員研究員 併任(2007年3月まで)
2006年 長崎大学工学部応用化学科講師
2007年 長崎大学工学部応用化学科准教授
2007年 英国・インペリアルカレッジロンドン Visiting researcher(2008年5月まで)
2020年 創価大学理工学部教授
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