金子 朋子 教授

情報セキュリティとセーフティの研究で、
安心・安全なIT社会を実現したい!

これからのIT社会に欠かせない知識、
情報セキュリティとセーフティとは

私の専門領域はIT技術における情報セキュリティとセーフティです。具体的には、IT技術が社会に悪影響を与える可能性を防いだり、対策する方法について研究しています。

高校生のみなさんも当たり前のようにインターネットやデジタル機器を使っていると思いますが、それらの安全性についてどこまで考えたことがあるでしょうか?今後、AI(人工知能)やロボット、自動運転車などの先端テクノロジーが生活に大きな影響を与えるようになるでしょう。情報セキュリティとセーフティの知識は、これからのIT社会を生きる上で欠かせない知識と言えます。

大きな刺激を受けた、
合唱団での活動

小さいころから歌が大好きで、高校生の時には合唱団に所属しており、創立者とお会いする機会に恵まれたこともあります。合唱団では自分の生き方や人生の目標について触発される機会が多く、大切な思い出になっています。
当時の夢は学校の先生になることでしたが、同時に興味を持っていたのがコンピュータです。「いつか教育者になれたとしても、自分の専門分野を持った方が良いだろう」と考えてコンピュータを仕事で学ぶことに決め、大学卒業後は株式会社NTTデータにエンジニアとして入社しました。入社後20年目ごろに情報セキュリティの専門的な勉強を始め、仕事と夜間大学院での勉強、そして育児を同時に行う生活が始まりました。

高校時代は将来の夢を描く原点!
大きな目標を立てて努力してほしい

IT業界に携わる中で、2006年に日本テレワーク協会のテレワーク推進賞 優秀賞の受賞、情報セキュリティ大学院大学で女性初の博士号取得、国立情報学研究所で特任准教授の就任など、貴重な経験を積むことができました。このようなキャリアを評価いただき、2023年に創価大学の教授に就任しました。「教育者になりたい」という高校生の時の夢を、約40年越しに実現したかたちになります。

今振り返ると、高校時代は自分の夢を描く原点になった時期だと実感します。この記事を読んでいる高校生のみなさんも、進路選びの第一歩として、自分がなりたいと思う将来の姿を描いてみてほしいですね。

AIやIoTの発展で、
情報セキュリティとセーフティがますます重要に

私の研究における重要なキーワードが「セキュリティ&セーフティ」です。

セキュリティとは「情報」に関するものです。例えば個人情報データベースへの不正アクセスを防ぐ技術などが該当します。それに対し、セーフティは人の命や健康に関連するものを指します。自動運転車や飛行機の制御システムがこれに当たるでしょう。私はこれら2つの観点を主軸に、IT技術が人々の命や安全にどのような影響を及ぼすかを分析し、安全性を確保するための手法を研究しています。

具体的には、IoT(Internet of Things=家電などの「モノ」がネットに接続してサービスを提供すること)とAIを組み合わせたシステムの安全性に関する研究に取り組んでいます。今後はAIが普及することで、ますます情報の活用手法が複雑化すると予想されます。そのような状況において、情報セキュリティとセーフティの確保がとても重要になっているのです。私はシステムの安全性を向上させるために、セキュリティガイドラインの策定や、日本国内の技術者が集うAI / IoTシステム安全性シンポジウムの主催などを行ってきました。

より良い社会を目指すために、
IT技術をコントロールするスキルを学ぼう

IT技術は私たちの生活を豊かにしてくれる一方で、たくさんの問題を抱えています。企業が利益を追求するあまり、情報漏洩などのリスクをおろそかにしてしまうこともあるでしょう。特に若い世代のみなさんは、AIの発展と共に成長する世代です。情報セキュリティとセーフティに関する正しい知識を学ぶことで、IT社会をより良い方向に導く存在になってもらえれば嬉しいですね。

創価の精神を体現するゼミを目指し、
学生同士の交流を促進

ゼミではオンライン、オフラインを問わず積極的に交流する機会を設けています。学生の研究テーマに関する研究者を招いて講義をしていただいたり、夏季休暇中にリアルとオンラインの勉強会を行ったりしています。
先日はゼミ合宿を開催し、バーベキューや花火を楽しみました。というのも、現在(取材は2023年に実施)の大学生はコロナ禍で高校〜大学生活を送ったことから、学生同士のリアルな交流を経験していない方が多いんです。先日もゼミで懇親会を開催したのですが、初めて学生同士で飲食をしたという学生が少なくありませんでした。

学生同士が積極的に交流することでお互いの刺激になり、ひいては創価の精神である「価値の創造」の実現につながります。そのような想いでゼミを運営しており、学生からも「所属してよかった」「コロナ禍でのオンライン授業にはない楽しさがある」と好評です。今後も和気あいあいとした雰囲気のゼミ運営を続けていきたいです。

教授として、1人の親として、
温かく学生を支えていきたい

創価大学は比較的小規模な大学なので、学生と教員との距離感の近さが魅力です。私の研究室にもよく学生が遊びに来て、お菓子を食べながらおしゃべりしていますよ(笑)。また、教員が研究室配属前の1、2年生を担当する「コンタクトグループ制度」があるため、相談事がある際はすぐに教員まで質問できます。そのような取り組みの影響なのか、素直で勉強熱心な学生が多いですね。キャンパスも緑豊かで居心地がよく、勉強に集中できる環境だと感じます。

私は学生と同世代の子どもたちがいるので、教授であると同時に、親の目線を持って学生と接するように心がけています。勉強面はもちろん、学生生活の悩み事など、なんでも相談してほしいですね。学生のいきいきとした姿を見ることが、何よりのやりがいになっています。

研究を漢字一文字で表すと?

「力」です。

情報セキュリティ大学院大学の修士課程に入学したとき、恩師から「研究は大きな力がつくんだよ」と言われたことが深く心に残っています。

研究とは、受験勉強のように教科内容を暗記して勉強するのとは全く異なり、概念、事象を追求し、新たな知見を創り出すことです。研究のためには、過去の研究状況を調査・理解することは必須で、そのうえで新たな知見を世に出していきます。採択された研究論文は、仮説検証によってその知見の新規性と有用性を示した範囲においては、世界初で世界一の知見です。そのため、単に勉強しているより、大きな「力」を研究でつけることができます。そして、その研究で培った発想自体も人生において大きな「力」になります。「研究の創価」を世界に示せる「力」をつけていきたいですね。
<略歴>
1988年  慶應義塾大学 文学部人間関係学科教育学専攻 卒業
1988年(株)NTT入社 同年7月(株)NTTデータに分社
1992年  創価大学 通信教育部法学部法律学科卒業
2010年  情報セキュリティ大学院大学 情報セキュリティ専攻 博士前期課程 修了
2014年  情報セキュリティ大学院大学 情報セキュリティ専攻 博士後期課程 修了
             博士(情報学)
2016年(独)情報処理推進機構 研究員
2020年  国立情報学研究所 特任准教授
2021年(株)NTTデータ エグゼクティブR&Dスペシャリスト
2023年(株)NTTデータ 退職
2023年  創価大学 理工学部 教授
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