宍戸 英彦 准教授

視覚認識の技術を活用し、
人体の動きの謎に挑む!

「苦手なりに好きだった数学」
挑戦することで見つけた自分の武器

私は情報工学とスポーツ科学の融合をテーマにした研究に取り組んでいます。特に視覚認識技術(カメラで撮影した映像をコンピュータが認識し、分析する技術)の活用に焦点を当てており、スポーツ中に行う動作や、人体の仕組みを分析しています。
小学校では少年野球に、中学・高校ではバドミントンに打ち込みました。勉強面では、実は数学が最も苦手な科目でした。なぜ自分は数学が苦手なのだろう?という疑問の答えが知りたくて、大学では数学科に進学しました。当たり前ですが、周囲は数学が得意な学生ばかりなので、数学が苦手な私は圧倒的な少数派です。優秀な友人の姿を見て落ち込むことも多かったですね。

それでも、数学に向き合うことでたくさんの発見があり、後の研究テーマにつながるプログラミングのスキルも身につけられました。苦手分野に挑戦することで成長できたと実感しているので、結果的にはとても良い選択をしたと思います。進路を考えている高校生の方も、得意なことだけではなく苦手なことにも目を向けてみれば、進路選択のヒントを見つけられるかもしれません。もちろん、それなりに大変なのでおすすめはできませんが(笑)。

ベンチャー企業で培った視覚認識の技術と、
スティーブ・ジョブズのスピーチが人生の転機に

大学卒業後はIT系のベンチャー企業に就職し、3年ほどがむしゃらに働きました。視覚認識技術に出会ったのもこの頃です。

仕事は楽しかったのですが、次第に「自分はこのままITエンジニアとしてキャリアを終えて良いのか?」と考えるようになりました。そんな時にふと思い出したのが、Appleの創業者、スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行った有名なスピーチです。その中で、ジョブズが学生時代に勉強したカリグラフ(文字のデザイン)の知識が、後にApple製品の洗練されたデザインに影響を与えたという一節があります。一見すると無関係な経験を組み合わせて新たな価値を生み出すことを、ジョブズは「ドット(点)をつなぐ」と表現しました。

当時の私が持っていた「ドット」が、中学・高校で熱中したバドミントン、大学で学んだ数学、そしてベンチャー企業で培った視覚認識技術です。これらを組み合わせれば、情報工学とスポーツ科学を融合した研究ができるはずだと思い立ちました。現在に至る研究のスタート地点に立った瞬間です。

思い切って会社を辞め、研究に取り組み始めました。その後は筑波大学大学院システム情報工学研究科の修士課程、博士課程を修了し、 国立スポーツ科学センターの契約研究員、英国サリー大学の客員研究員、筑波大学計算科学研究センターの助教を経て、2023年に創価大学理工学部の准教授に着任しました。

IT技術を駆使してスポーツ選手の動作を分析

続いては、具体的に私の研究内容を紹介していきましょう。研究では実際に運動している人をビデオカメラで撮影し、その映像をコンピュータで分析します。例えば上の画像は、複数のカメラを使って撮影したバドミントン選手の映像から、選手の骨格モデルをリアルタイムで生成する研究です。この研究の特色のひとつが、選手の体に計測用のマーカーが必要ないことです。つまり、いつも通りにプレーする選手を撮影するだけで、分析用のデータを生成できるのです。通常、複数のカメラを使用して3次元以上の情報を得るためには非常に難しい作業が必要ですが、簡単かつ高精度に行う手法を研究しました。

このような研究により、スポーツ選手の動きを詳細に分析することが可能になります。シンプルな動作であっても解明されていない部分が多く、バドミントンを長年続けてきた私にとっても驚くような発見がたくさんあります。これまでわからなかった情報が可視化される過程こそ、研究の醍醐味ですね。スポーツの動作解析の研究は、効率的な練習方法の開発やケガの予防など、幅広い分野での応用が期待されています。私の研究が、スポーツ界にとって何か有益な情報になれれば嬉しく思います。

「伝える力と聞く力」を伸ばすゼミ
研究にもビジネスにも役立つスキルを習得

私のゼミの特色が、プレゼン発表の機会をたくさん設けている点です。これは、学生たちに「発表力と質問力」を身につけてもらいたいという指導方針に基づいています。自分の考えを相手にわかりやすく伝えたり、効果的な質問をしたりすることは、研究者に欠かせない基本的なスキルです。さらに、就職後のビジネスシーンでも必ず役立ちますので、徹底して指導しています。スキル向上のためには、繰り返し練習することが欠かせません。これはスポーツでも学業でも共通ですね。

また、一般的にゼミの研究は4年生から始まることが多い中、創価大学のゼミは3年生から個人研究を開始します。このアプローチの最大の利点は、普通の学生が研究を始める4年生になる頃には、既に研究の基盤が築かれているという点です。質の高い研究につながることはもちろん、就職活動で研究内容をアピールできる点も大きなメリットです。

幅広い学問の知見と
グローバルな姿勢が創価大学の魅力

創価大学理工学部はやや小規模な学部でありながら、情報セキュリティからロボット工学に至るまで、多岐にわたる分野の先生方が所属しています。様々な分野を横断して学ぶことができるので、自分の興味・関心に応じた研究テーマを見つけやすい環境です。

そして、もう一つの魅力はグローバルなマインドです。語学の授業や留学支援制度、留学生との交流など、様々な施策を実施しています。英語が得意でなくても問題ありません。海外に興味を持ち、世界で活躍する人材を目指したい、という気持ちがある学生を全力でサポートしています。語学や海外での学びに興味がある方は、ぜひオープンキャンパスにお越しください。

研究を漢字一文字で表すと?

「体」

私の研究は人体の仕組みを情報工学、スポーツ科学の観点からアプローチしています。

この漢字を選んだもうひとつの理由が、研究は体が資本だということです。徹夜作業で心身を酷使するよりも、きちんと睡眠時間を確保する方が遥かに効率的です。私はそれに気づくまでに何年も費やしてしまいました(笑)。学生のみなさんも、くれぐれも体を大切に、学生生活に打ち込んでもらえれば幸いです。
<略歴>
2016年  筑波大学 大学院システム情報工学研究科 修了
             博士(工学)
2016年  国立スポーツ科学センター 契約研究員
2017年  筑波大学 計算科学研究センター 助教
2018年  英国 サリー大学 客員研究員(兼任)
2023年  創価大学 理工学部 情報システム工学科 准教授
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