笠松 大佑 准教授

データ工学で現実とデジタルをつなぎ、
新しい価値を生み出す!

情報科学技術の可能性を感じ、
創価大学へ進学

中高生の頃は、本当に普通の生徒でした。野球少年で、好きな教科は英語と数学。中学生の時は「自分は勉強が得意だ」と思っていたのですが、高校生の時にはその自信が打ち砕かれていました(笑)。大学進学を意識し始めたのは高校2年生の時です。⾼校が理系コースだったので、自然と理系学部への進学を志望しました。そして受験に関する情報を調べるうちに、創価大学に情報システム工学科があることを知りました。

とはいえ当時は2000年代前半で、情報工学自体がまだまだ一般的ではない時代でした。個人用パソコンの先駆けになったWindows95がリリースされたのが1995年、携帯電話でインターネットが使える「iモード」のサービス開始が1999年ですから、無理もありませんね。当然、今のようにスマートフォンで手軽に映像を見ることなんて不可能ですし、そもそもスマートフォンが存在しません(笑)。そのような時代でしたが、私はむしろ「これから情報分野では何ができるようになるのだろうか?」と興味を持ちました。そのような経緯で創価大学の情報システム工学科に入学したのですが、今思えばとても良い選択をしたと考えています。

大学受験を振り返ると、勉強の時間管理や計画性が足りなかったと感じています。問題集を購⼊したのですが、どれも十分にやり切ることができなかったんです。一方で大学生になってから資格の勉強を受け始めると、どれも問題集が非常に重要だとわかりました。問題集を本番までに何周するのか、そのためのスケジュールをどうするのか。それらを計画立ててやり切れば必ず点数が上がり、合格に近づきます。そのようなノウハウを大学に入ってから知ったので、当時の自分に伝えたいですね(笑)。この記事を読んでいる高校生の方で勉強方法に悩んでいる方がいれば、時間管理の計画を見直してみてはいかがでしょうか。

データ工学とは?
生活の隅々まで浸透している、
注目のテクノロジー

私の研究分野はデータ工学です。これは「いかにデータを上手く利用できるようにするか」について考える学問分野です。データを⼯学的に扱うという観点から、計算機のメモリ上に載り切らないような⼤量のデータを効率よく整理して管理するデータベース技術や、データマイニングや機械学習などのデータ分析技術を含めて研究しています。

この分野の魅⼒は、現実の世界で観測されたデータが研究対象であることです。2010年代ごろから現実世界で計測されたデータのオープン化が進展し「ビッグデータ」という⾔葉をたくさん聞くようになりました。ビッグデータのような⼤量のデータから知識やパターンを抽出することができれば、未来を予測できる可能性があります。

例えば、地図アプリのガイド機能がそのひとつです。地図アプリで目的地を入力すると、到着までのルートや予測時間が表示されますよね。でも、なぜこのような予測ができるのでしょうか?その理由こそが、大量のデータを保持し、分析しているからなのです。人が移動するためにかかった時間などのデータを大量に集めて分析することで、精度の高い予測を行っています。高校生のみなさんが日常的に使っているアプリにも、データ工学が活用されているということですね。

現実とデジタル空間をつなぐ
新たなデータプラットフォームづくりが夢

一つの目標がモビリティ、つまりヒトやモノの移動にデータ工学を組み合わせる研究です。移動する、ということは位置や速度などのデータが常に変化することを意味します。データ工学としての言い方に換えれば「時間と空間の広がりの中で観測される時空間データ」と表現できるでしょう。そこに着目することで、様々な分野に応用可能なデータを取得できると考えています。近年は自動運転や運転補助機能が搭載された自動車が商品化されており、産業面からも注目が集まっています。私自身もこれまで様々な研究プロジェクトに取り組んできましたが、一貫してモビリティが関わる分野に携わってきました。だからこそ、難しい技術が要求されることも身に染みて理解しています(笑)。

上記を発展させて、私が夢見ている研究があります。それはモビリティ分野に関する実データを扱うことができる、デジタルツインまたはCPSの研究基盤の構築です。デジタルツインやCPSは、現実空間のデータを使って、全く同じ空間をそのままデジタル上に再現する試みのことです。メタバースのような架空の空間ではなく、現実の空間のデータを使ってそのまま再現するイメージです。現実のデータを使うことで、現実世界とサイバー空間の融合による新しい価値の創出が期待されています。例えば現実のヒトやモノからデータを収集して、クラウド上のサイバー空間に蓄積・解析し、現実に存在する機械を制御したり、ヒトへのサービスを提供したりするといった活用方法が期待されています。現実とデジタルをつなぐ重要なファクターとして、データ工学が重要な役割を果たすのではないかと考えています。

どんな進路を選んでも、
理工学部の学びがきっとあなたの力になる

理工学部では、特に実験科⽬において様々な実験⼿法を学べます。実際に手を動かすことが好きな学生にとっては、とても面白い環境なのではないでしょうか。またそれに関連して、学生を大きく成長させてくれるのが卒業研究です。卒業研究では、ロジックとエビデンス(実験結果)の組⽴て⽅を経験できます。卒業研究では何かを主張するためのロジックを立てて、実験によりエビデンスを作り出します。このような仮説立案力、検証力、データ分析力は、将来どのような仕事に就いても非常に役立つ能力です。卒業研究では長い時間をかけて実験や検証を繰り返すので、学生にとって大きな成長の機会になっていると強く感じています。
国内外の様々な業界において、「データ駆動型社会」、「Society5.0」、などデータを活⽤する社会が到来しています。 IT技術は⽇進⽉歩で変化しているため、新しいモノやコトが好きな⼈には楽しい学問分野になると思います。興味の分野はなんでも構いません。例えばゲームを考えてみましょう。ただゲームを遊ぶだけではなく「このゲームを作るために、どのような技術が使われているんだろう?」と疑問を持つことが大切です。そこからあなたの学びが始まります。ぜひ、創価大学で私たちと共に、情報通信技術のイノベーションを創造しましょう。

研究を漢字一文字で表すと?

「尖」
辞書で意味を調べると「先端が細く鋭くなっていること、とがっていること」とあります。ある分野において⾃分の研究にしかない、先端となる、尖っている知識・技術を創り出したい、という想いの元、この字を選びました。

<経歴>
2009年  創価大学大学院 工学研究科 情報システム学専攻 博士(工学)
2009年  創価大学工学部 助教
2012年  米国 西ミシガン大学 コンピュータサイエンス学科 訪問研究員(Visiting Scholar)
2012年  米国 パデュー大学 コンピュータサイエンス学科 博士研究員(Postdoctoral Research Associate)
2014年  米国 ロチェスター工科大学 コンピュータサイエンス学科 博士研究員(Postdoctoral Research Scientist)
2017年  (株)富士通研究所 IoTシステム研究所 研究員
2020年  創価大学 理工学部 情報システム工学科 准教授
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