崔 龍雲 教授

学生と共に、自律型AIロボットの可能性に挑戦!

コンピューターに導かれ、日本で出会ったロボット研究

「COMPUTER? このコンピューターとは、一体何なんだ?」

1970年代後半の韓国、浪人生だった私は、偶然手にした雑誌の記事でコンピューターという存在に出会いました。当時の私は医学部を目指す浪人生で、コンピューターや機械工学とは無縁の生活を送っていましたが、その記事を読んで以来、コンピューターのことが頭から離れなくなりました。最終的には進路を変更してコンピューター関連の大学に入学したのですが、当時はコンピューターそのものが黎明期なので、大学のカリキュラムも満足のいくものではありませんでした。どうしたものかと思っているうちに、2年半の兵役生活が始まります。しかし、その間もずっとコンピューターに対する憧れは止みませんでした。

除隊後は、さらにコンピューターを勉強するために、神戸大学への留学を決めました。先進国の大学に行けば、もっと設備が整った環境で勉強できるだろうと考えたからです。当時(1986年ごろ)はパーソナル・コンピューターが一般にも普及し始めており、コンピューターを「どう使うか」が問われる草創期でもありました。そんな時代に神戸大学で出会ったのが、コンピューター応用の代表でもあるロボットの世界です。それ以来、一貫してロボットを研究テーマにしています。

ロボット大会「ロボカップ」で学生の成長を促す

私の研究はロボットの設計や製作、センサの製作およびそのソフトウェア製作です。研究室の特色としては、自律型移動ロボットの競技大会「ロボカップ」のJapanOpen大会に10年以上連続で出場しています。ハードウェアからソフトウェアまで、学生自らチームワークでロボットを設計・製作しています。そのチーム名がTeam SOBITSです。

この取り組みは学生に好評で、研究室には連日たくさんの学生が集まり、研究に没頭しています。また、ロボカップに出場して活躍する学生には企業側も注目しており、例年大手企業グループなど、多数の有名企業への就職実績にも結びついています。
なぜ大会に出場するのかと言えば、学生には高い目標をもって実践してほしいからです。ロボカップは世界的に有名な大会なので、出場する学生は厳しい競争にさらされます。他大学との競争だけでなく、自分自身との戦いでもあります。大会の現場では、わずかでもミスがあれば、努力してきたことの全てが水の泡になってしまいます。だからこそ、自分が培ってきた技術や経験を当日の大会に総動員するわけです。

普段の大学生活の中で各自の技術を磨き、チーム全員で目標に挑戦する。そういう経験は学生を大いに成長させてくれますし、努力する学生に対して企業の採用担当者も目を光らせています。ロボット工学はソフトウェアとハードウェア、双方の技術が求められるので、企業にとっては即戦力の人材になるわけです。
研究室の学生の就職実績に関してですが、大企業に入社することがすなわち成功ではありません。むしろ私が嬉しく思うのは、学生達が自分の夢を叶えていることです。例えば、ある学生は企業の最終面接で、「ロボットの研究ができないなら」と、大手IT系グループ企業を断ってしまいました。驚くかもしれませんが、その後宇宙航空研究開発機構(JAXA)から内定を獲得し、次年度からは長年の夢であったロボット開発を仕事にしています。だからこそ、高校生の皆さんも大学生活を単位取得と就職を勝ち取るための場ではなく、「目標を見つけ、その実現のためのスキルを身に付ける実践の場」として捉え、社会に羽ばたける人材になってほしいと願っています。

育てるのではなく、共に実践する研究室

教授から手取り足取りで、指示や指導だけをもらえればうまくいくと思ったら学生は成長できません。教員を含め先輩と後輩のチームワークで、一緒に議論して実践することで必要な知識を身に付け、一人前に成長していけると考えています。私の研究室では毎日のように学生達がグループを組み、皆で議論しながら実験を繰り返しているにぎやかな様子が見かけられます。

私の研究室では先輩・後輩などの上下関係もありません。先輩だからといって技術が優れているとは限らないからです。現在は学部1年生も参加しています。私も大学院生や学部生、学年を問わず、平等に厳しく指導しています。だから私の研究室は厳しいとよく言われますが、同じくらい「優しい」と言われることも多いです。ただ厳しくするだけでなく、しっかりと学生達に向き合うことを心がけているからでしょうか。そのような方針をもう20年以上も貫いています。

「その数式は何に役立つのか?」数学を通して世界を考えてほしい

昨今は理工系学部でも、数学に苦手意識を持つ学生が増えています。あくまで私の推測ですが「数学がどのように社会に役立っているのか」を理解していない学生が多いからではないでしょうか。

例えば、AIの根本は確率統計です。確率統計がAIやロボット開発に直結すると考えれば、数学の授業もワクワクしてきませんか? 微分積分も三角関数もベクトルも、その先は全て一般社会に、ひいては私達の身の周りの環境につながっているのです。

高校生の皆さんは、ただ先生に言われるがまま数学の問題を解くのではなく「この数式は、何に対して使われるのだろうか」と興味を持っていただきたいと思います。そうすればおのずと大学で研究したいことや、将来の目標を見つけるきっかけになるのではないでしょうか。

理工系は新しいことに挑戦する学問なので、ある面では厳しい世界かもしれません。でも、難しい課題や競争の世界に飛び込むからこそ成長することができます。高校生の皆さんも、理工学部での学びを通して新しい世界に出会っていただければ嬉しいですね。

研究を漢字一文字で表すと?

「挑」

私にとって研究とは、未知の世界に挑戦することです。挑戦の精神を失った時は、私の研究室を閉める時ですね(笑)。もう30年近く、学生達と共にワクワクしながら、「これができれば、面白くなる!」と言いながら次の課題に向けて楽しく研究に挑んでいます。

<略歴>
1961年 韓国釜山生まれ
1983年 韓国中央大学工学部電子計算学科卒業
1990年 神戸大学大学院工学研究科修士課程修了
1995年 同大学院自然科学研究科博士課程修了.博士(工学)
1995年 創価大学工学部情報システム学科助手
2000年 同大学講師
2006年 同大学准教授
2012年 同大学教授
  • 理工学部|創価大学 受験生サイト
  • キャンパスガイド2023理工学部
  • 理工学部公式Facebook