卒業を祝して
学長 鈴木 将史
通信教育部での学業を無事に終え、晴れて卒業の栄冠をつかんだ皆さん、ご卒業おめでとうございます!これで皆さんは、創価大学卒業生という栄えある資格を手にされたことになります。数々の困難を乗り越え、努力と忍耐でつかみ取った卒業は、皆さんそれぞれにとって、かけがえのない価値を持っていることでしょう。そんな卒業生の皆さんの頑張りを、3つの観点から讃えたいと思います。
言うまでもなく、通教生の多くは、日々社会生活を営みながら、仕事のあとや家事の合間の時間をこじ開けるようにして勉学に励んでいます。しかも多くの場合、一人で頑張っておられます。学長である私のもとには、通教生の皆さんの、大変なご苦労の様子がよく伝えられます。海外で学ぶ通教生から、深夜のオンライン授業のお話をうかがったこともあります。そうした困難な状況を見事に克服された皆さんは、まさに「努力の勝利者」であると言えます。
創立者池田先生は、1976年5月の通信教育部開学式でのメッセージにおいて、「通信教育で、学業を全うし卒業することは、きわめて至難であると言わざるをえない」と述べられ、また「当初いだいた向学心を持続させることが、いかにむずかしいかを物語る証左でもあります」と指摘されています。その上で創立者は「五年かかろうが、十年かかろうが、断じて初志を貫き、全員が卒業の栄冠を勝ちえていただきたいのであります」と、全通教生を大激励されています。
それぞれの努力のドラマを描きながら今回卒業された皆さんを、創立者が「努力の勝利者」として讃えてくださることは間違いありません。
皆さんが在籍された期間は、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るった時期と重なります。おかげでこの3年間、対面でのスクーリングが全く行えない状況が続きました。夏期スクーリングで全国の仲間と出会えるのを心待ちにしていたのに、がっかりした人も多かったと思います。
しかし物事には明るい面と暗い面が必ずあります。この状況に対応して全国の通教生の学業を止めないために、通信教育部ではいち早くオンライン授業のシステムを確立し、すべてのスクーリング授業をオンラインに代えて行うことができました。この取り組みは全国的に高く評価され、創価大学通信教育部は日本e-Learningアワードの「オンライン授業支援特別部門賞」を受賞しました。
実際、オンライン授業は大学教育の可能性を大きく広げました。複数の大学から好きな授業を選んで受講するといった未来像も描かれています。また、「リカレント教育」と言われる社会人の学び直しの機会も、オンライン授業により提供できます。
多くの授業をオンラインによって履修して卒業する通教生の皆さんは、まさに大学教育の「可能性の証明者」です。創価大学は今後、通信教育の能力を大いに活用することを目指していきます。
3月には多くの通学生も卒業します。しかしながら、同じように単位を積み重ねて到達する卒業でも、通学生と通教生では意味が異なると思います。
最近よく話題になりますが、アメリカでは卒業式のことを”Commencement Ceremony”、すなわち「始まりの式」と呼びます。卒業は「新しい人生の始まり」だからです。高校を卒業して大学に入り、そして大学を卒業して社会に出ていく通学生たちにとっては、卒業とは「社会生活の始まり」に他なりません。それでは、すでに社会で働きながら学問を志した通教生にとっては、卒業によって何が「始まる」のでしょうか?
もちろんその答えは人によってさまざまでしょうが、私は学んだ知識を社会で生かす「知恵の生活」の始まりであると考えます。それは家庭にいる主婦であっても、すでに仕事から退職したシニアであっても同じです。
先にご紹介した通信教育部開学式のメッセージで、通教生が年齢も地域も幅広いことについて、創立者は「私はそこに、創価教育の原点ともいうべき学問への姿勢をみる思いがしてなりません」と表現されています。また、「人々の現実生活を凝視し、その向上、発展のために習得した豊饒な知識を駆使するなかに、創造性の開花がある」とも述べられ、知識を現実生活の向上へと活用する中に創造性が開花すると主張されました。
通教を卒業する皆さんが、学んだ知識を現実社会で見事に生かし、「知恵の体現者」となることこそ、皆さんにとっての卒業の意味であり、創立者が望まれていることであると思います。
ますます分断と対立の深刻な様相を見せる世界にあって、人々を結び付け平和を実現する創価教育は、いよいよ強く求められています。晴れて卒業された皆さんが、創価教育の知恵の担い手として、社会の向上を目指して大いに力を発揮されることを願ってやみません。