『ヤングケアラー -介護を担う子ども・若者の現実』
通信教育部 准教授 山﨑 勝
「ヤングケアラー」という言葉は、今までほとんど聞いたことがありませんでした。「ヤング」という名称がついている若い世代の人たちくらいの認識しかありませんでした。本書では、18歳未満の子どもを「ヤングケアラー」としています。また、18歳~30代ぐらいまでのケアラーを「若者ケアラー」という呼び方もあるようです。本書では、18歳未満を「子ども」、18歳~30代ぐらいを「若者」としています。本書でも述べられていますように、「イギリスでは、18歳未満が『ヤングケアラー』、18歳以上~24歳ぐらいまでは「ヤング・アダルト・ケアラー」と呼ばれている(22頁)。国によってその定義は異なるようです。本書で18歳未満に注目したことは有意義だと思います。18歳未満といえば、高校生までの多感な青春時代を過ごしている年齢です。そのような年代が家族のケアにあたることは、大変に大きな負担を担うことになります。
本書から「ヤングケアラー」とは何かを紹介します。「ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいるために、家事や家族の世話などを行っている、18歳未満の子どものことである。慢性的な病気や障がい、精神的な問題などのために、家族の誰かが長期のサポートや看護、見守りを必要とし、そのケアを支える人手が充分にない時には、未成年の子どもであっても、大人が担うようなケア責任を引き受け、家族の世話をする状況が生じる」(ⅰ頁)。少し長い引用になりましたが大変に分かりやすいと思います。
本書の構成は、「第1章 子どもが家族の世話をするということ」。印象深かったのは、「戦後のライフコースと家族のあり方の変化」という項で、「(略)実際に日本人のライフコースや家族の形は戦後どのように変化してきたのだろうか。(中略)まず注目したいのは、日本人の平均寿命の推移である」(6頁)。戦後日本人の平均寿命は世界に類例を見ないほど急速に長寿化しています。長生きすることは良い事ですが、社会保障等の整備が追いついていないような気がします。超高齢化、急速な少子化と人口減少は、ヤングケアラーの負担を重くし、またその数が増加する可能性があります。また、「(略)現在の家族のあり様を考える時に大切になってくるのは、それを支える家庭内の人手の問題である」(7頁)。母子世帯、父子世帯、単身世帯、高齢者単身世帯、世帯人数が3人弱の世帯もあります。確かに家庭内の人手の問題は深刻になりつつあると感じます。
「第2章 日本のヤングケアラーに関する調査」。第2章では、著者が2013年に医療ソーシャルワーカーの団体、東京都医療社会事業協会に行ったアンケート調査が紹介されています。このアンケートに回答した402人の8割は、主に病院に所属し、患者やその家族の経済的・社会的・心理的相談を受け、問題解決の援助をしている人たちです(29頁)。子育て相談の内容やその子がケアをすることになった理由などの様々なアンケート調査がされています。また、実施年は異なりますが、南魚沼市と藤沢市の教育者に対する調査も実施されています。ケアの問題は、ある意味ではプライバシーの問題でもあり、様々な困難な問題も含まれますが、ヤングケアラーが行う家族に対するケアの支援策は当然に必要なことである。
「第3章 調査後の支援体制作り」。第3章では、第2章で述べられた新潟県南魚沼市と神奈川県藤沢市の実態調査後の取り組みについて取り上げています。また、ヤングケアラーの悩み、体験、意見を率直に語り合っています。青春時代に好きな事もままならない様子が伝わります。
その他に、「第4章 ヤングケアラーの体験」、「第5章 ヤングケアラーへの具体的な支援」、「終章 ヤングケアラーが話をしやすい環境を作っていくために」などが掲載されています。熟読することをお勧めいたします。
最後に、ケアの内容について、一般社団法人「日本ケアラー連盟」のネット資料より紹介させて頂きます。長い引用になりますが、ケアの内容を具体に知って頂きたいと思います。
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