教員採用試験の二次試験に向けて
通信教育部 講師 栗本 賢一
教員採用試験一次試験受験、お疲れさまでした。その結果が出てこのたよりを目にしておられることと思います。
合格された方、おめでとうございます。残念ながら不合格だった方、ここであきらめずに来年こその決意で、今一重精進していきましょう。
一次試験を無事突破したからといって、けっして安心はできませんね。かえって緊張や不安が増しているのではないでしょうか。というのも、一次試験では教職教養や専門教養などの知識を問われたのに対して、二次試験では「個人面接」や「小論文」、あるいは「場面指導」「模擬授業」「集団討論」「実技試験」など、多岐にわたる観点から受験者の教育観や力量、人間性などが問われるからです。
二次試験とは、これまでの学び、努力や経験、培ってきたもの、磨いてきたものなど、まさに自分が生きてきた歴史を引っ提げての「勝負」だといえましょう。その勝負に勝つためには…
中国の有名な兵法書「孫子」の「謀攻篇」にこうあります。
「彼を知り己を知れば百戦あやふからず。彼を知らず己を知れば一勝一負。彼を知らず己も知らざれば毎戦必ず敗れる。」
勝負に臨んでの重要なポイントですね。
これを教員採用試験に当てはめると、「彼」はすなわち受験する自治体になります。まずは過去問チェックです。そして、その自治体が掲げている教育ビジョン、求める教員像、教育施策、教育振興基本計画、特色や課題などの把握です。すべてを覚えるわけにはいきませんが、ポイントとなりそうなところは押さえておきたいですね。
そして「己」とは自分、すなわち自分を知ること。自分のよさ、強み、アピールポイントなど…
結論から言います。自信を持って「強気」で臨んでください。創立者は折々に「人生は強気で」とおっしゃっています。
かつて教員採用試験の面接官をした時のこと。質問に対しての返答がおどおどして自信が無いような受験者の評価は低かったですね。なぜなら、教師になったとして、子供や保護者からの質問にしっかりと対応できるのだろうかと、不安になってしまうからです。質問に対してたとえ自信がなくても、堂々と胸を張って答えた方がいいですね。もし間違ったことを言ってしまったと思ったら、「申し訳ありません。ただいまのは訂正いたします。本当は〇〇だと思います。」というように潔く答えると、かえって好印象を与える場合もあります。
何よりも、通教生の皆さんは、さまざまな社会人経験、我が子の子育て体験など多様な人生経験をしています。それらはみな、自身の宝の財産です。「私が教師になったら、すべての子供を幸せにしてみます!」「私に任せてください!」くらいの強気で、それでいて謙虚に、堂々と自分の思いを語ってきてください。
ここからは「個人面接」「小論文」に絞って、そのポイントを確認します。
1.個人面接
二次試験は「個人面接」重視と言っても過言ではありません。受験者が教育や教職についてどのように考えているのかとともに、識見、力量、人間性など、さまざまな観点で評価されます。特に以下の5点は重要な質問なので、自分なりの回答をしっかりと用意してください。
(1)なぜ、教師を目指したのか。
(2)なぜ、この自治体を受験したのか。
(3)どのような教師になりたいか。
(4)どのような児童生徒を育てたいか。
(5)これまでの経験の中で特に頑張ったことは何か。そこから何を学んだか。また、それを教師になったらどのように活かすか。
ひとつアドバイスです。型通りの答えではなく本音で語ることをお勧めします。例えば(2)の質問です。「はい、〇〇県の教育施策である△△に感銘を受けたからです…」というようなことを述べる受験者は多いのですが、本当にそれがいちばんの理由ですか? 用意した原稿通り答えたのではないですか? と切り返したくなります。もちろん、それも大事な理由には違いありません。しかしそれだけではなく、例えば、「はい、〇〇県は私が生まれ育った愛するふるさとだからです。私は、ふるさとの子供たちのために役に立って恩返しがしたいと思い…」のような本音を語るのはいかがでしょうか。面接は面接官と受験者の「人間どうしの対話」です。本音をぶつけて面接官の心をつかんでください。
2.小論文
「小論文」に頭を痛めている方も多いことでしょう。①文字数、②制限時間、などの基本的な情報と併せて、原稿用紙のマス目は横何文字縦何行か、なども事前に把握してください。そして、過去問から論題を選んで書いてみるのが大事です。「手書き」にも慣れておく必要があります。鉛筆はBなどの少し濃い目がお勧めです。
小論文のポイントとしては、序論本論結論の3つに分けて論理的に書くこと、文は常体の「~だ/~である」調で、一文はできるだけ短めに簡潔明瞭に書くことなどです。一文が長くなるとどうしても文が途中でねじれがちになるからです。また、誤字脱字なども減点対象になります。何よりも大事なのが「論題に正対」すること。何について書くのか論題(テーマ)をしっかりと読み取って、そのテーマからぶれずに最後まで書き切ることです。
個人面接も小論文も、あるいは場面指導も模擬授業も、どなたかに聞いてもらう、見てもらうことが大事です。その機会として、創大の教職キャリアセンター個別相談や通教の二次対策講座などがありますので、積極的に申し込んでアドバイスをもらってください。
さあ、ありのままの自分で勝負です。自分を信じて、堂々と挑戦して合格を勝ち取ってください!
くりもと けんいち Kenichi Kurimoto
通信教育部 教職指導講師
[ 職 歴 ] 埼玉県小学校校長、中学校教諭(国語科)、ハンブルク日本人学校、市教育委員会指導主事
[専門分野] 国語科、道徳教育、国際理解教育
[担当科目] 教職概論、教職実践演習
Search-internal-code:faculty-profiles-2017-