「教員採用試験に向けての具体的取組」
教職キャリアセンター指導講師 小堂 十
世の中を見れば、生きていくことへの不安感に覆われた昨今の状況です。そんな今だからこそ、生きる夢と希望の灯をともす教育の力が重要であり、その現場で働こうとするみなさんの姿は尊いものです。自信と誇りをもって挑戦していってください。
教員採用試験突破のゴールまでのイメージづくりは大丈夫でしょうか。今日は、その第一歩に当たる、「願書」作成について、お伝えできればと思います。
●「願書」提出(3月~6月頃) ※自分なりの教師像を描き、自分自身の分析をしよう
【Point】願書は、面接の時に自分が答えやすいことを選んで、分かりやすく丁寧に書きます。
各自治体教員採用試験・受験の際には、志望理由や自己PRなどを記述する書類を提出します。「志願書」「面接カード」「自己申告書」など、書類の名称は、自治体により、いろいろあります。提出時期・記載様式も、自治体により、異なります。大きく3つの時期に分けられます。
⇒ 出願時(4月~5月)
一次試験時に持参(6月下旬~7月)
二次試験時に持参(8月~9月)
記載項目も、自治体により、様々ですが、よくある項目としては、
○教師を志す理由・志望動機
○本県(道府県)を志望した理由
○校種・教科の志望理由
○自己アピール
○大学で学んだこと・取り組んだこと
○ボランティア・社会貢献活動の経験
○教師になったら取り組みたいこと があります。
このように自治体により様々ですが、どの自治体受験においても共通することは、「志願票」は、自己アピールのための大切な資料であること、面接試験の際に活用されるという重要書類ということです。その自治体の教師となるためのしっかりとしたPRとなるよう、質問に正対し、誠意をもって、作成しましょう。
今回は、その中から「志望動機・自己PR」等の書き方について解説します。以下の文例を見て、記述の工夫されている点や、よい点を探してみてください。
私が埼玉の高校教員を志望したのは、高校2年生で県立高校に転入した際、先生方に熱心に指導・支援していただいたことがきっかけです。学習の進度に合わせた指導、人間関係や進路の悩みの相談など、教科や学年を問わず個に寄り添う先生方の姿を目の当たりにしました。そこで、私も、生徒が学び、課題を乗り越え、自立する支えになりたいと強く思うようになりました。
高校で行った2回の教育実習では、生徒自らが言葉を用いて考え、表現し、コミュニケーションをとることができるよう努めました。改善すべき点を踏まえ、埼玉の教育で実践されている協調学習を基に、言葉にこだわる国語の授業づくりを行いたいと考えます。また、中学校での相談室のボランティア経験や大学での自主ゼミの企画・運営では、多様な存在を認めるとともに、先を見据えて行動することを意識しました。この経験を活かし、笑顔を絶やさない、広い視野を持つ教員となります。
出身地でもある埼玉県で、家庭や地域と連携し、次世代を担う生徒が夢や志を実現できるよう、私自身も学び続けながら、「生きる力を育て絆を深める埼玉教育」に全力で貢献します。
参考:時事通信社『教員養成セミナー』
この文章は、三段落で分けられていることはすぐに気が付くことですが、一段落目は「動機」(過去)、二段落目は「経験と目標」(現在)、三段落目は「決意」(未来)というように、時系列に乗っ取りながら、論を進めていることが分かります。このように書いていくことで、自分の考えが読み手に分かりやすく伝えられます。
次に「教員を志望する理由」について、以下の文章からよい点を見つけてみましょう。
私が教員を志望する理由は2つあります。まず子供たちの将来の自立を支援したいと考えているからです。障害のある子供たちが社会自立し、よりよく生きていくために長所や個性を認め、伸長させていく授業や支援に取り組んでいきます。次に、学校や勉強が楽しいと感じさせてくれた恩師に出会えたからです。児童の視点に立つことで、「学びたい」と思うことができる授業を考え実践していきます。
参考:時事通信社『教員養成セミナー』
短い文章ですが、動機・経験を踏まえ、目標・決意が明確に述べられています。理由について、「~からです」と言い収め、簡潔かつインパクトある表現となっています。
これら以外にも、自治体によって項目内容は変わってきますが、自分なりの考え、読み手に伝わるような論理性と文章表現は大切です。是非、参考にしてください。
創価大学駅伝部の嶋津選手は、先天的に目の障害をもちながらも、箱根駅伝では区間新記録を勝ち取りました。そんな嶋津選手を『魂の走り』へと突き動かしたのは、ファンや関係者からの「嶋津選手の走りから勇気をもらいました」という熱いエールでした。そして、これまでの「自分のため」の走りから、「人のため」の走りへと変わったそうです。周囲の人への感謝やリスペクトは自分が走ることで恩返ししようと捉えたのでした。
今、みなさんも日々の仕事や活動の合間を縫って、通信教育の勉学に取り組まれていることと思います。今の努力は自分のためかもしれませんが、近い将来には「未来の子供たちのため」につながります。是非、その日を目指して、夢や希望を現実のものにしていってください。
こどう つなし Kodo Tsunashi
教職キャリアセンター指導講師
[ 職 歴 ] 東京都小学校校長
[専門分野] 社会科、総合的な学習の時間、環境教育、放送教育、SDGs
[担当科目] 教職概論、教職実践演習
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