来年度の教員採用試験に向けて~教職体験を踏まえて~
教職大学院 准教授 大久保 敏昭
私は創価大学教育学部1期生として学び、山口県で約40年、小学校教員を務めました。
定年退職時のエピソード
新任で受け持たせていただいた子ども達には、一生懸命に教育実践に取り組んだとは言え、今から振り返ると合わせる顔がない程冷や汗ものの実践でした。校長として定年退職を迎える年、この子達(既に40代を迎えていましたが)が、何と同窓会を開いてくれたのです。約40年前の出会いですし、顔や名前がわかるのかどうか不安もありました。しかし、出会った途端、顔と名前、当時の数々のエピソードが一人ひとりよみがえってきました。子ども達も、「あのとき、先生とこんなことして大笑いしたよね」など、当時のことをよく覚えていました。そのような子ども達の姿を見て、『ああ、この人達がそれぞれの人生を築いていくことに、私なりに何かしら貢献することができたのだな』と、しみじみと感慨を深くし、教職の醍醐味を実感することができました。
「私の人生を変えた」との涙
定年退職をあと一月残すばかりになった時、休日に開催されたある大会に出席しました。大会終了後、帰途に向かう私に近づいてくる一人のご婦人がいました。「先生、○○です、覚えていらっしゃいますか」私が初めての人事異動による転任校で担任した6年生でした。〈ああ、○○さん、よく覚えていますよ〉、「先生、私が算数苦手だったの覚えていらっしゃいますか」、〈え、その記憶はあまりないなあ、○○さんはユーモアがあって明るかったのは覚えているよ〉、「先生は、ウルトラマンとか大魔神を使って算数の授業をしてくださいましたよね」、〈それはよく覚えている〉、「私は6年生になるまで算数が苦手で」、「算数はできるできないがはっきりわかる授業なので、それがいやで、私は学校生活にすごく後ろ向きだったんです」、〈そうだったの〉、「でも、先生がおもしろくてわかりやすく算数を教えてくださって、私は算数ができるようになったんです」、〈それで、算数が苦手だったという記憶がないのかな〉、「それから学校生活が前向きになり」、「中学も楽しく行け、高校もスムーズに行け、就職し、今の主人と結婚することができ、今は子どもの学校でPTAの役員をしているんです」というようなお話をしてくださいました。そして、「先生は、私の人生を変えてくださったんです」と、言われ涙されました。
すてきで魅力的な教職という仕事
教師として出会う子ども達一人ひとりの人生を、それぞれの子どもにとってよりよい方向にかたちづくっていける教職という職業。みなさんが目指している教職は、このようにすてきで魅力的な仕事です。真面目に教育実践に取り組んでこられたみなさんの先輩教員の方々は、このようなエピソードを数限りなくおもちです。
ぜひ、教員採用試験を勝ち超えて合格し、このやりがいのあるすてきな職業である教職に就いていただきたいと願っています。
教員採用は、選考であること
教員採用試験は、正しくは教員採用候補者選考であり、「選考」、つまり教職を目指すあなたの資質や能力、教職を目指す志などが問われ、適任者かどうかが判断されます。
特にその判断の決め手ともなるのが、個人面接です。どのようなことが問われるかというと、例えば…。
・ 教職を志望した動機、目指す教師像、この自治体での採用を希望する理由
・ 教師に必要な資質能力、目指す児童生徒像、学級経営の方針、担当する教科の魅力
・ あなたの長所や短所、これまでの経験や学び、そこから教職に活かせること
・ 不登校やいじめ防止の対策、具体的場面での保護者対応や危機対応
・ 喫緊の教育課題や時事問題への理解と取り組み方 等々
ある問題状況を想定し、ロールプレイで教師としての対応を演じることが求められる自治体もあります。各自治体には、それぞれのよさと克服すべき課題がありますから、当然、個人面接では、その自治体に必要な選考のための様々な内容が問われることになります。
そこで、対策としては、各自治体の過去問題集などを参考にしながら、想定される質問に答えていく想定問答を作成していくことになります。
実は、シンプルな個人面接対策
想定される様々な質問に答えていくことは、それぞれの答え方を考えることになるので、たいへんそうです。しかし、想定問答を作成し面接練習を重ねていく内に、これが実にシンプルなことだと実感されるはずです。なぜなら、以下の3点が明確になれば、すべてそこから答えていけるようになるからです。つまり…。
・自分は、どのような教員になりたいのか
・自分は、どのような子ども(生徒)を育てていきたいのか
・自分は、どのような学級をつくり(中高では:どのような教科指導をし)たいのか
これらは、あなたにとっての教育信条、教育哲学になるものだと言ってよいでしょう。この教育信条は、あなたにとって教職の原点になるものです。しかも、毎年異なる子どもや保護者と出会うごとに、柔軟に更新されていくべきものになります。
そうです、教員採用候補者選考の個人面接対策は、じつはあなたの教師としての原点づくりなのです。
恐れることなく、困難さを負担に感じることなく、あなたの教師としての原点づくりに挑んで、選考を勝ち越え、ぜひすてきで魅力的な教職に就いていただきたいと願っています。
通信教育部の教員、教職キャリアセンターの講師陣も、しっかりとサポートいたします。
おおくぼ としあき Toshiaki Okubo
教職大学院 准教授
[ 職 歴 ] 山口県小学校校長,臨床心理士
[専門分野] 学校心理学,精神分析的心理療法,授業研究,教員養成
[担当科目] 教員研修実務研究、学習指導の方法研究Ⅰ・Ⅱ、人間教育事例分析研究、人間教育事例分析課題研究、教職課題研究Ⅰ・Ⅱ、教育課題実地研究(国内:富山)、実習研究Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ
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