倉橋 耕平 先生

メディアとともにある社会と人々のあり方をメディア文化論の観点から読み解いてみよう

メディア文化論を中心に、政治、ジェンダーなど幅広い分野を研究

研究内容の基本情報を教えてください。
私はメディア文化論を専門にしています。メディア文化論とは、メディアを取り巻く文化的な現象を考察し、メディア自体について理解を深める学問です。ナショナリズムやジェンダーなど幅広い分野を研究していますが、特に注力している分野が「日本の右派とメディア文化の関係性」です。いわゆる保守派と呼ばれる方たちが、メディア文化を使っていかに自分たちの主張を大衆に広げていったのか。そのメカニズムを研究しています。

大きな衝撃を受けたインターネットとの出会い

中学、高校ではどのような学校生活を過ごされましたか。
中学、高校と部活動をドロップアウトしてしまうくらい、学校に馴染めない生徒でしたね。勉強自体も苦手なタイプだったので、あまり学校生活に良い思い出がないかもしれません(笑)。ただ、当時から政治の仕組みには興味がありました。文系科目が好きだったので、大学受験も政治や哲学、社会学を学べる文学部系を志望しました。

高校時代で印象に残っている出来事が、インターネットとの出会いです。当時は個人用のパソコンが普及し始めたタイミングで、メディア環境が劇的に変化していた時代でした。10代〜20代前半の多感な時期にそのような変化を経験したことが、私のキャリアにも影響を与えたと思います。

メディアが持つ「ノリ」を見極める?メディア文化論を学ぶ魅力とは

専門分野について教えてください。
メディア文化論について、もう少し高校生の方に身近な内容と関連させて説明していきましょう。例えば、みなさんは「メディアリテラシー」という言葉を聞いたことがありますか。「メディアに書かれていることを見比べて、違いを理解しよう」といった説明がされると思うのですが、メディアリテラシーを考える上ではその内容だけではなく、メディアごとの特性や文化を考慮する必要があります。砕けた言い方をすれば、メディアが持つ「ノリ」のようなものです。

例えば、同じSNSでも画像が主体のInstagramと、テキストが主体のTwitterでは、使い方や投稿される内容が大きく異なりますよね。このように、メディアが持つ文化を読解することも「メディアリテラシー」のひとつです。メディア文化論は高校生のみなさんが日常的に親しんでいるメディアの一つひとつが分析対象になり、それを取り巻く現象について深く学ぶことができる学問です。

なぜ「タイパ」が重要視されるのか。メディアとともに人々の知のあり方がどう変わるのかを追究したい

研究の目標はありますか。
私が現在取り組んでいる研究は政治とメディアの関係性が中心ですが、将来的にはもう少し広い範囲で捉えていきたいと考えています。その一つが「いかにメディアの作り出す人々の知のあり方が変化し、社会規範が形成されるのか?」という論点です。
例えば、最近はメディア文化を巡るトピックとしてタイムパフォーマンス、いわゆる「タイパ」が話題です。動画を早送りで視聴する「倍速視聴」などがその筆頭とされていますね。私が学生と話していても、もはや倍速視聴は当たり前の行為として認識されています。世間では倍速視聴に否定的な論調が目立ちますが、まずはそのような行為が定着していることを認めて、なぜその現象が発生しているのかを考えることがメディア文化研究の視点では重要です。

テクノロジーによって人々の考え方や行動、そして価値観は驚くほど変化します。そういったことを継続して研究することで、自分たちなりのメディア文化論をまとめていきたいと考えています。

学生自ら企画し、考えるゼミ。興味のある分野からメディア論を考えてみよう

ゼミの内容を教えてください。
ゼミではメディア研究を軸に、学生が興味のある分野を取り上げます。具体例を挙げると、ある学生は筋トレに熱中していて、筋トレブームとメディアの関係性を研究しました。また、私がジェンダー論の講義を担当していることもあり、ジェンダー関連の研究を行う学生も多いですね。現代のメディア文化を研究する上で、ジェンダー論は欠かすことができない視点です。
ゼミの特長はありますか。
私のゼミでは学生の自主性を尊重しています。例えば、2月に卒業論文のキックオフのためのゼミ合宿を行いましたが、合宿所の選定や合宿のスケジューリングなどを学生自身が行いました。もちろん全て学生まかせではなく、最終的には私のチェックが入りますよ。時には自由時間だらけのスケジュールを提案されることもあるので(笑)、その代わり学生から研究のアドバイスを求められた際は徹底的にサポートしています。

学ぶ分野も、学び方も十人十色。学びの多様性こそが文学部の魅力

文学部での学びはどのようなところがおもしろいと思われますか。
創価大学文学部は文学や語学だけでなく、歴史学や社会学、人類学など様々な分野の先生方が所属しています。幅広い分野の専門家が所属しているメリットが、一つのテーマに対して異なるアプローチから研究できる点です。例えば、ジェンダー論に興味のある学生の場合、私のゼミではメディアとジェンダーの関係性を学ぶことができ、歴史学のゼミでは歴史とジェンダー論を関連させた研究が可能です。興味のある分野を見つけるだけでなく、それを探究するアプローチも含めた様々な選択肢が用意されている。そんな「学びの多様性」に優れた環境こそが、創価大学文学部の魅力なのではないでしょうか。
<経歴>
2000年 愛知県立 豊丘高等学校 卒業
2004年 近畿大学文芸学部文化学科 卒業
2006年 近畿大学大学院文芸学研究科 国際文化専攻修士課程 修了
2011年 関西大学大学院社会学研究科 マス・コミュニケーション学専攻博士後期課程 修了
  • キャンパスガイド2023文学部
  • 英語DD
  • 中国語DD
  • 【留学日記】イギリス・バッキンガム大学 夏期語学研修
  • 【留学日記】インド・セントスティーブンカレッジ 春季語学研修