フィスカーネルセン・アネメッテ 先生

社会の「ふつう」を形作るものとは何か?
社会人類学で世の中を読み解こう!

政治と宗教の関係性が日本社会に与える影響とは

研究内容の基本情報を教えてください。
私は日本の政治、宗教、社会、ジェンダーについて、「社会人類学」の観点から研究しています。特に関心を持っている分野が、日本の政治と宗教の関係性です。

政治と宗教はお互いに強い影響を与え合っており、現代の政治と宗教の概念的な関係性は、日本社会を読み解く上で重要なキーワードです。これらの構築された概念は、ある種の本質的なカテゴリーではなく、権威と権力の複雑な関係を明らかにします。

日本留学で見つけた生涯の研究テーマ

中学、高校ではどのような学校生活を過ごされましたか。
10代の頃から政治について考えるのが好きで、よく友人・両親・先生達と政治的なトピックについて議論していました。こう聞くと日本人の方は驚かれるかもしれませんが、私の出身であるデンマークでは、家庭や学校で政治について話し合うことが当たり前なんです。18歳の時にイギリスに渡った後も政治や社会学への興味は衰えず、香港の大学に進学して専門的に勉強するようになりました。

その後に香港の大学院を卒業したタイミングで、創価大学の留学生として日本を訪れました。当時はオウム真理教関連の事件が国際的な関心を集めており、私自身も日本の政治と宗教、そしてメディアの関係性について興味を持っていました。日本留学後もロンドンで日本の政治と宗教を研究し、それがそのまま現在に至る私の研究テーマになりました。

留学中は日本文化に戸惑うことも多かったですね。当時とても驚いたことの一つが、日本の「主婦」という概念です。それまでは結婚を機に仕事を辞めた女性に会ったことがなかったため、なぜ仕事を辞めるのか理解できませんでした。それから、日本は男性と女性が非常に異なる生活を送る場所であることを学び始めました。日本ではこのような生活様式が当たり前のものとして存在しています。私は、この「普通」の感覚が、特定の力関係を維持する上でどれほど強力であるかに興味を持ち始めました。

その「普通」は、本当に当たり前?
世の中の常識を、社会人類学の観点から読み解いてみよう

研究の魅力について教えてください。
どんな社会にも、その社会にとっての「普通」の振る舞いが存在します。例えば私はデンマーク生まれなので、デンマーク社会の価値観を当たり前のものとして受け入れています。人権やジェンダーの平等を目指す姿勢などがそれに当たるでしょう。

そう考えた際、日本社会の特色とは何でしょうか。私にとって興味深い点は、日本社会が持つ「本音と建前」という概念・感性です。もちろん、すべての社会は人が公の場でどのように行動するかについての感覚を持っていますが、日本の場合は行動がとても順応的である点が特徴です。例えば日本では自分の政治的な思想や信仰する宗教・考え方について、学校や会社で表明する機会が少ないですよね。自分の考えや信念を公の場で表明することが難しくなればなるほど、イデオロギーがいかに権威主義的であるかが示されます。

このように、社会人類学では「普通」だと考えられている社会秩序に対して、人生の行動・考え方・社会なりの疑問を研究します。研究を通して社会の仕組みを紐解く行為は、私に知的な興奮を与えてくれます。学生が社会人類学で比較文化を学ぶとき、意味、価値、規範、権力関係のより深い構造を見ることが含まれます。 このようにして、学生はまったく新しい考え方を学びます。

高校生のみなさんも「日本の社会は、なぜこうなってるんだろう?」と疑問に思った経験はありませんか?そんな方は、ぜひ社会人類学を学んでください。日本の、そしてグローバルな社会について、新しい視点から考えることができますよ。

国際色豊かなゼミで実践的な学びに取り組む

ゼミの内容について教えてください。
ゼミで行った沖縄合宿の様子
ゼミで行った沖縄合宿の様子
ゼミでは日本現代社会を基本テーマに、社会人類学的な分析や、文化的比較研究を行います。卒論研究テーマは学生の興味のある分野から自由に選択できます。例えばある学生は、日本のアイドル文化が日本のジェンダー規範に与える影響について研究しました。ゼミは国際色豊かな環境で、中国、タイ、オーストラリア、イタリア、ブラジルなど様々な国から留学生が参加しています。日本人学生にとっては、留学生とのディスカッションを通じて新鮮な発見があると思います。

また、ゼミでは毎年合宿を行います。2023年(取材時)は沖縄に行って、基地問題など地方政治について研究しました。合宿を通して学生同士の仲を深めることも目的のひとつですので、今後も貴重な体験を楽しんでもらいたいと考えています。

英語で専門分野を学べる!ぜひ挑戦してほしい、創価大学ならではの取り組み

創価大学文学部では、幅広い分野の学びを経験できます。その一例として、2022年から始まった新メジャー制のプログラムのひとつ「世界市民育成プログラム」(AKADEMIA)を紹介します。このプログラムでは哲学・社会人類学・平和学などの分野を、英語を使って学ぶことができます。英語力を養いたい方、英語による専門性や実践力を身につけたい人におすすめです。
<経歴>
Social Sciences (BSSc) Hong Kong Open University 1993-1997
Social Psychology (MPhil), Hong Kong Polytechnic University 1999-2001
Social Anthropology (PhD), School of Oriental and African Studies, University of London 2002-2008
  • キャンパスガイド2023文学部
  • 英語DD
  • 中国語DD
  • 【留学日記】イギリス・バッキンガム大学 夏期語学研修
  • 【留学日記】インド・セントスティーブンカレッジ 春季語学研修