森下 達 先生

映画・マンガ・アニメなどのポピュラー・カルチャーの魅力を解き明かし、見つめ直す

大好きな映画やマンガを自分なりに研究して論じる

研究内容の基本情報を教えてください。
私の専門分野は「ポピュラー・カルチャー研究」ですが、映画・演劇・マンガ・小説・音楽などのポピュラー・カルチャー、つまり一般大衆に広く愛好される文化は非常に広大です。そこで、私のゼミでは、こちらからレールを敷くのではなく、学生が自分の興味関心、あるいは自分自身の経験を生かしてテーマを決め、研究してもらうことにこだわっています。

例えば最近の卒業論文では、2.5次元舞台や『週刊少年ジャンプ』を扱った学生も何人かいました。ポピュラー・カルチャーについて、どういうふうに受容されて社会が回っているのか、自分なりに解き明かし、見つめ直す研究をしています。

マンガやアニメや怪獣映画好きで、小説を1日1冊ペースで読破

中学、高校ではどのような学生生活を過ごされましたか。
私が子どもの頃は「ゴジラ」シリーズなどの特撮映画がふたたび盛り上がっていた時期でしたし、マンガでも『週刊少年ジャンプ』が史上最大の発行部数を達成していました。また、自宅には親が読んでいた手塚治虫などのマンガもたくさんあり、自分が生まれる以前のポピュラー・カルチャーにも慣れ親しんでいました。

中高一貫校に通っていて、高校受験をしなかった分、中学時代は時間がたくさんあり、通学電車の中ではずっと本を読んでいました。ミステリー小説が大好きで、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズは当然として、大人向けの乱歩の初期作品にも手を伸ばしていました。近年の作家では京極夏彦や東野圭吾が好きでした。通学時間や学校の休み時間などを利用して、地域の図書館や学校の図書室で借りたハードカバーや文庫本を1日1冊ペースで読破していました。

ポピュラー・カルチャーが大学の研究対象になると知った

大学はどのような道に進まれましたか。また、それはなぜですか。
高校の文化祭での展示物を作成している様子
高校の文化祭での展示物を作成している様子
京都大学の文学部は、文学部らしい変な自由があり(笑)、ここなら幅広く、のびのび学べると思ったのが志望理由です。大学へ入学して、当時二十世紀文化の象徴といえる映画・マンガ・アニメなどを扱える専修があることを知り、おもしろそうだなと思ってそこに進むことにしました。マンガや映画にもちゃんとロジックがあって、読み解いていけば言語化して伝えることができることを学びました。ポピュラー・カルチャーが大学の研究対象になるとは思わなかったので、今まで娯楽として接し、論理的に読み解くことがなかった作品を、言葉に置き換えて論じることができるのはとても新鮮でした。

大学の卒業論文では、中学生の頃に読んだ手塚治虫の初期作品を論じ直してみることで、これまでとは違うマンガ史をひもとくことができたらおもしろいかなと思って題材に選んでいます。さらに大学院の博士論文は特撮映画を題材に、作品がどんなふうに受容されたのかを通じて、ポピュラー・カルチャーと社会との関係を見つめ直しました。

漠然と感じていた作品の魅力を論理化・言語化して議論できる

この研究分野の、どのようなところに魅力を感じていらっしゃいますか。
「ポピュラー・カルチャー研究」は、自分の知っている作品に、違う角度から光が当たることが一番おもしろいですね。自分が漠然と感じていた作品の魅力も、論理的に言葉にすることができる。すると、もう少し物事が見やすくなり、自分の論理的な言語化スキルも上がっていくことが、この研究のいいところなのかなと思います。

文学作品や哲学、歴史についてディスカッションする場合、まず学生全員が作品や文献を読み解き、議論できるだけの知識を身につけなくてはいけないですよね。でも、ポピュラー・カルチャーに関しては、この作品ならみんな論じられる、なんとなく知っているという作品を共有しやすく、これはこうも観られる、いや、こう観たほうがいいんじゃないか、といった大学生らしい活発な議論をスムーズに行うことができます。学生に議論の喜びを感じてもらうことができる可能性が高いのも、ポピュラー・カルチャー研究のいいところだと思います。

だから、私の授業では、できるだけ学生主体でディスカッションできるようにしています。例えば、声優雑誌の記事の変移から、声優という文化のあり方そのものが変わっているという発表をした学生がいましたが、私自身も声優の研究書は読んだことがなかったので、勉強する良い機会になりましたね。

自分の好きなものに浸ってスキルや感性を磨いていく

文学部での学びは、どのようなところがおもしろいと思われますか。 読者へのメッセージをお願いします。
ゼミ合宿の様子
ゼミ合宿の様子
文学部の学びは、語学以外は必修科目が少なく、学生が自分で選択科目を組める自由さが魅力。とりあえず自分の好きなものに浸って、そのうえで、どうやったら普遍的な形で言葉にできるか、自分を見つめ直しながらスキルや感性を磨いていくことができると思います。世間的な価値ではなくて、自分が論じたいことを選んで邁進できる人が文学部に向いている気がしますし、私も、そういう学生であれば、例外なく議論ができて楽しいと思います。

このマンガや映画が本当に大好きで、これについて語ったら誰にも負けない、という作品がある人、ポピュラー・カルチャーを心から好きな人は、ぜひ私の研究室にきてほしいですね。
<経歴>
2009年 京都大学 文学部 基礎現代文化学系二十世紀学専修卒業
2014年 京都大学大学院 文学研究科 現代文化学専攻二十世紀学専修 単位取得認定退学
2015年 京都大学大学院 文学研究科にて、博士(文学)の学位を取得
2016~2019年 東京成徳大学 人文学部 助教
  • キャンパスガイド2023文学部
  • 英語DD
  • 中国語DD
  • 【留学日記】イギリス・バッキンガム大学 夏期語学研修
  • 【留学日記】インド・セントスティーブンカレッジ 春季語学研修