斉藤 信浩 先生

言語データを解析して日本語や韓国語の習得のメカニズムを知る

日本語や韓国語の習得をデータ分析することで解明

研究内容の基本情報を教えてください。
上海で行われた学会での発表のようす
上海で行われた学会での発表のようす
私の専門分野は、日本語と韓国語の第二言語習得と、日本語教育です。第二言語としての日本語や韓国語の習得について、統計や実験などのデータを分析することで解明しています。

赤ちゃんが言葉を覚えていくのが第一言語習得。外国語としての言葉をどういうふうに習得していくのか、というのが第二言語習得になります。例えば、外国人に日本語を教えたとき、教えた通りに覚えてもらえないことがあります。間違って覚えたり、教えたことが変なふうに解釈されていたり、そういうことがなぜ起こるのか、いろいろな原因を突きつめていく、それが第二言語習得の研究の基本です。

この言語が母国語の人はなぜこんな発音になってしまうのか、この言語の人はなぜ常にこの部分で間違った日本語を使うのか、そこにはさまざまな要因があります。母国語に起因していたり、心理的な要因があったり、日本語自体の難しさが問題だったり、教えた通りにならない学習者の内側のメカニズムを調べるのが第二言語習得の研究です。言語のデータを集めて、データ分析をして、統計的に解析していく手法で研究を進めています。

偶然見つけた本がきっかけで韓国語を独学で勉強

中学、高校ではどのような学生生活を過ごされましたか。
高校では文系科目が得意でした。あるとき、ふと英語以外の外国語を勉強したいと思って本屋へ行ったら、偶然、韓国語の本を見つけて、それを手に取ったのが韓国語との出合いになりましたね。当時は、近所に韓国語を学べるような語学学校がなかったので、テキストを使って、独学で勉強しました。

留学先で日本語を学びたい外国人が多いことを知った

研究の道に進まれたきっかけは、何でしたか。
名古屋大学の大学院生時代。外国人に日本語を教えていた
名古屋大学の大学院生時代。外国人に日本語を教えていた
高校時代、2年間くらい韓国語の勉強をしていたので、大学でも語学を学ぶことを考えました。しかし、当時はあまり韓国語のコースがさかんではなかったので、文学部へ進学。大学入学後も、独学で韓国語の勉強を続けたところ、大学1年次の韓国語のスピーチ大会で優勝!その勢いで、2年次のあとの約1年間、韓国に留学しました。そのときは交換留学制度がなかったので、アルバイトして貯めたお金を使った私費留学でした。

留学先で日本語を勉強したい外国人がたくさんいることを知り、日本語教師になろうと決心。創価大学卒業後、名古屋大学大学院へ進学して、日本語教育を研究しました。

日本語教師と韓国語教師の両方を目指せる

ゼミの内容について教えてください。
日本語や韓国語で、第二言語習得について研究するゼミで、日本語教師と韓国語教師の両方を目指すことができます。

3年次の前期は日本語教育を中心に学び、日本語の模擬授業を実演してもらいます。後期は、パソコンで音声分析や文章分析のソフトを動かしながら、実験ツールの活用方法を学んでいきます。もちろん第二言語習得の論文を読んでディスカッションする授業もありますが、言語のデータを分析して、第二言語習得のメカニズムを統計的に解析していく研究は、文学部のゼミのなかで最も理系に近い内容かもしれません。

データを分析すると新しい発見があって楽しい

この研究分野の、どのようなところに魅力を感じていらっしゃいますか。
ソウルの大学で韓国人学生にデータ分析をしてもらった実験風景
ソウルの大学で韓国人学生にデータ分析をしてもらった実験風景
第二言語習得の研究では、学習者にいろいろなテストをしてデータを集めて分析します。ある程度の目算を立ててからデータを集めるのですが、期待通りの結果がでると嬉しくなります。自分の予測と違った結果がでたとしても、それはそれで何か別のことがいえるので、いろいろなことがわかって、新しい発見があり、おもしろいですね。

日本語教師は、教室に座っているだけで、普通に生活をしていたら出会えないような馴染みのない国の人たちが日本語を習いに来て、いろいろな話を聞くことができます。○○人は真面目、○○人は遅刻する、ではなく、それぞれ個人の問題だと気づくようになり、「○○人だから~」という偏見がなくなりますよ。

研究力のある日本語教師になってほしい

文学部での学びは、どのようなところがおもしろいと思われますか。読者へのメッセージをお願いします。
文学部の学びは実学ではないため、直接どういうふうに社会に役立つのか、簡単に言えないところがあります。しかし、技術的な知識は数年でアップデートされて変わってしまうことがありますが、文学部で身につける教養やものの考え方は一生涯の知識になると思います。

日本語教師を目指す人は、しっかりと言語を分析したり、考えたりできるような基礎的な研究力を獲得して、問題が発生したときに根本的な原因を突きつめられる対応力のある教師になってほしいと思います。
<経歴>
創価大学 文学部 卒業
名古屋大学大学院 国際言語文化研究科 博士課程満期退学(文学博士)
韓国昌原大学講師(3年)、名古屋学院大学留学生別科特別講師(4年)、九州大学留学生センター准教授(12年)を経て、現職。
  • キャンパスガイド2023文学部
  • 英語DD
  • 中国語DD
  • 【留学日記】イギリス・バッキンガム大学 夏期語学研修
  • 【留学日記】インド・セントスティーブンカレッジ 春季語学研修