村上 信明 先生

歴史は暗記科目じゃない!東アジアの歴史から学ぶ「人の営み」としての歴史

シルクロードから民族問題へ。留学で見つけた研究テーマ

「歴史は暗記科目だから苦手」

みなさんは学問としての「歴史」について、このようなイメージを持っていませんか?確かに高校までの歴史の授業は暗記が中心の、地味な科目として捉えられているでしょう。ですが、私はそうは思いません。歴史とは人間の営みそのもの。人間がどのように社会を作ってきたのかを考察できる、非常に刺激的な学問だと考えています。私は歴史の中でも東洋史を専門に、主に17~19世紀の中国(清朝)の国家体制や民族政策について研究しています。
歴史に関心を持ったきっかけはなんですか。
東アジアの歴史に関心を持つようになったきっかけは、子どもの頃に「NHK特集 シルクロード」や「人形劇 三国志」・「漢詩紀行」(ともにNHK)といった番組を見たり、西田敏行さん、佐藤浩市さん出演の映画「敦煌」(原作は井上靖『敦煌』)を見て、シルクロードや中国にあこがれを抱いたことでした。それでも高校1年生までは、工業大学出身の父の影響もあり理系に進学するつもりでしたが、シルクロードや中国の歴史を本格的に学びたいという思いには勝てず、歴史学を学ぶために文学部を選びました。

大学に入学した当初は社会科の先生になろうと考えていたのですが、大学3年次が終わったあとに中国の新疆ウイグル自治区の区都ウルムチにある新疆大学に留学したことで、私の人生が大きく変わることになりました。
新疆大学に留学したのは、子どもの頃から憧れていたシルクロードの現地で生活をしてみたいと思ったからです。しかし、留学先で目にしたものは、現在のウイグル問題につながる民族問題の現実でした。あこがれの地で目にした現代中国の抱える暗部に直接触れたことで、中国の民族問題の歴史を本格的に研究したいと考えるようになりました。そこで筑波大学大学院に進学し、この地に「新疆」という名称がつけられた清朝時代の研究をするようになり、現在にいたっています。

偉人だって間違える。歴史に見る「人間らしさ」が面白い

研究の面白さを教えてください。
研究の魅力は、一人ひとりの人間が歴史を動かしていると感じられる点です。歴史を勉強すると国家や経済など、社会構造によって歴史が展開しているように感じることがあります。ですが注意深く研究していくと、そのような歴史の中に、一人ひとりの生きた人間の存在が見えてくるんです。彼ら・彼女らは英雄的な活躍をすることもあれば、大きく間違えてしまうこともあります。そのような「人間らしさ」によって我々の社会が動いていると実感できる瞬間が研究の魅力です。

歴史を振り返ると、時には一人の判断が歴史を変えてしまうこともあります。そう考えると、この記事を読んでいる高校生の方も、未来の歴史を動かす一人になるかもしれませんね。

マンガと史実を比較してみると?多様なアプローチで中国史の魅力に迫る

ゼミの内容について教えてください。
私のゼミは東アジアの歴史を勉強するゼミと考えていただいて問題ありません。特に学生の関心が高い分野は人物研究です。例えば始皇帝は、マンガや小説でも人気のキャラクターです。では、実際はどのような人物だったのでしょうか?ゼミ生のなかには、フィクションに登場するキャラクターと史実の人物像を、歴史的な資料を基に比較研究する学生もいます。

他にも儒教などの思想をテーマにすることもあり、年度によって柔軟にカリキュラムを変えています。東アジアの歴史に少しでも興味をお持ちの方は、ぜひ参加していただければと思います。

歴史はビジネスにも役に立つ?「曇りなき眼(まなこ)で見定める」ために、歴史から学べること

文学部で学ぶ魅力について教えてください。
創価大学文学部は、幅広い分野を学ぶことができます。授業を選ぶ際は文学部のテーマである「人間の営み」をぜひ意識してください。歴史はもちろん、哲学や文学など、全ての分野は一貫して人間の営みを扱っています。一つの分野だけでなく、様々な分野に触れることで、人間の営みについての理解、つまりは人間理解を深めることができます。そのような視点があるだけで、文学部での学びがより意味のあるものになるのではないでしょうか。
特に歴史を学ぶことは、どのように役立つのでしょうか。
企業の経営者の方には、歴史好きの方が多いです。それはきっと歴史の勉強が「時代の流れを読む」ことにつながるからだと思います。歴史上の偉人たちは、世界の運命を変えるような決断を行ってきました。人生の難関にいかに立ち向かい、決断し、それを乗り越えていくのか。歴史の勉強は、判断力や決断力などの実践的な「生きる知恵」を身につけられる学問だと私は思っています。

…こういう人生訓のような話って、若いときにはピンと来ないかもしれません。でも、今はわからなくても大丈夫です。いつの日かきっと歴史から学んだ知見が、あなたの背中を押してくれる日が来るはずです。自分の人生を自分で決断できる大人になりたい。そう考えている方は、ぜひ歴史を学んでみてはいかがでしょうか。
<経歴>
創価大学 文学部 人文学科 卒業
筑波大学大学院博士課程人文社会科学研究科 修了
  • キャンパスガイド2023文学部
  • 英語DD
  • 中国語DD
  • 【留学日記】イギリス・バッキンガム大学 夏期語学研修
  • 【留学日記】インド・セントスティーブンカレッジ 春季語学研修