髙橋 正 先生

英米と日本の文化や発想などの違いを知ると英語がおもしろくなる!

英文法の研究から、英語と日本語、英米と日本の文化を比較する

研究内容の基本情報を教えてください。
中心的なテーマは英語学です。歴史的・認知的観点から英文法を研究しています。さらに、英語と日本語の比較、そこから英米文化と日本文化の比較へと研究を広げており、これがゼミのテーマでもあります。日本語の小説を英語に翻訳されたものと比べたり、日本語のコミュニケーションの仕方が英語とどう違うのかを調べたり。また、文化の面では、「幸福観」についての日本人と英米人との捉え方の違いや、世界的な観点から見て日本文化はどのように位置づけられるのかなど、いろいろなことに取り組んでいます。

英語が苦手だった中学2年生の夏、先生の話から理解できるように

中学、高校ではどのような学校生活を過ごされましたか。
実をいうと中学校1~2年のときは英語が苦手だったんですよ。ところが、中学2年生の夏休み、しつこく先生に質問して、いろいろと話を聞いているうちに、ふと「そういうことか」と理解できるようになり、中学3年生になる頃には英語が得意に。高校では英語しかできなかったといいますか(笑)。高校1年生のときに大学で英語を学びたいと考えるようになりました。

大学受験では、参考書をまず1冊勉強して、一通り終わったら、次の参考書に取り組む。くり返しやるのは嫌いだったので(笑)、次から次へと新しい参考書を買っていました。英語の勉強はとにかく量をこなし、やればやるほど成績が伸びたので、そこがおもしろかったのかもしれません。

世界中に広がった英語の表現の由来に興味をもった

大学ではどのようなことを学ばれましたか。
大学では、所属していた英語研究会の活動で横田基地のアメリカ人と交流できるのがおもしろかったですね。当時はネイティブスピーカーと会話できる機会が少なく、貴重な経験でした。

英語学のゼミを専攻し、卒業論文のテーマは、「英語に入ってきた外国語のイディオム」。世界中で使われている英語は、その広がった先の国の文化や言葉を英語に取り入れています。例えば「メンツを保つ」を意味する英語に“save face”があります。「メンツ」は中国語の「面子」からきています。「面子」は「顔」という意味なので、それを英語にして“save face”。この英語表現は中国語から英語に取り入れられました。このような事例が英語の中にたくさんあり、興味深く研究しました。

丸暗記ではない英語学習のおもしろさを伝えたい

教員の道へ進まれたきっかけは、何でしたか。
私自身が英語学の勉強でいろいろなおもしろいことを発見できたので、英語が苦手な学生たちにも、英語はこんなにおもしろいんだ、ということをわかりやすく伝えたいと思っています。

英語の勉強は、単語や文法を丸暗記してしまいがち。でも、なぜこんな言い方になるのか、理由がわかればスムーズに覚えられます。例えば「英語で話す」は“speak in English”と前置詞の“in”を使います。英語では言葉を容器に例えて「(自分の考えを)英語の中に入れて話す」と言っているんです。ところが日本人は言葉を道具や手段としてみていますから、“by”や“with”を間違って使ってしまう。なぜその言い方になるのか、英語でのモノの見方、認知のしかた、発想などの違いを伝えることで、丸暗記ではない英語学習のおもしろさを教えたいですね。

英語を話す人の発想や例えが表現の違いにつながっている

この研究分野の、どのようなところに魅力を感じていらっしゃいますか。
言葉には人間の一般的な認知能力が反映されているはずだという仮説の下で発展してきたのが「認知言語学」です。認知言語学の観点から研究すると英語の様々な用法が見えてきます。言葉を何かに例えるのもその一つ。さきほどの“in”は容器の例えですが、英語では奥さんや恋人を“honey”と言いますよね。奥さんがハチミツなわけはないけど(笑)。その他、愛する人を甘い食べ物に例えて“sugar”とか“sweetie pie”と呼びかけることも。

逆に日本語では人間の成長を鳥の成長に例えています。「医者の卵」から始まり、「まだまだひよっこ」。そして卒業するときは「巣立つ」と言いますよね。でも英語で“egg”は使いませんし、「ひよっこ」だからと“chicken”と英訳すると「弱虫」という意味になって怒られちゃいますよ(笑)。

英語学を研究し、日本語と比べることで、英語を話す人の発想や例えの違いがわかってくる。そうすると英語の学習がもっとおもしろくなってくると思うんですよね。

校外学習で日本の文化や日本にある外国文化も調べる

ゼミの内容について教えてください。
小グループ単位で、日英語や文化の違いについてアクティブ・ラーニングを行っています。また、鎌倉・横浜・川越などへ日本文化や日本にある外国文化を見に行く校外学習を行っています。海外留学したとき、日本のことを聞かれて何も答えられないと困るので、教室では学べないことを自分の目で確かめることも大切。大学祭では、ゼミでの研究内容を展示しています。コロナ禍前では、ゼミの学生の半分くらいは、アメリカ・イギリス・カナダ・フィリピン・マレーシアなどで10カ月間程度の留学を体験していました。

世界で起きていることを知り、自分ができることを考えてほしい

最後に、読者へのメッセージをお願いします。
私の授業では、英語力のほか日本文化の学習にも力を入れているので、英語圏と日本の文化や習慣との違いに関心のある人には、おもしろい学びになると思います。世界中の人々を相手に仕事をしたいという野心や希望をもっている人は、私のゼミに来てほしいですね。今、世界で何が起きているか、ということに目を向け、世界の状況を知ったうえで、「自分ができることは何か」を問い続けてほしいと思います。
<経歴>
大阪府立桜塚高等学校卒業
1978年 創価大学 文学部 英文学科卒業
1984年 創価大学大学院 文学研究科 英文学専攻博士課程満期退学
  • キャンパスガイド2023文学部
  • 英語DD
  • 中国語DD
  • 【留学日記】イギリス・バッキンガム大学 夏期語学研修
  • 【留学日記】インド・セントスティーブンカレッジ 春季語学研修