林 亮 先生

今、現実に起こっている世界の戦争・紛争をアカデミックに解明する

ウクライナ戦争や中国の台湾侵攻を学問として扱えることに関心を高くする

研究内容の基本情報を教えてください。
私の専門分野は「国際関係論」と「安全保障」。平和追求を目的とする国際社会の歴史・理論・地域研究をテーマにしています。ウクライナ戦争や中国の台湾侵攻などの問題を学問として扱えることが一番手ごたえがあります。なぜウクライナ戦争が起きたのか、ロシアが本当は何をしたいのか、それに対抗するため西側世界は何をしているのか。今、世界で起こっている戦争・紛争を、大学のアカデミックなレベルで明らかにしていく。誰もやっていないところを解明していくところが魅力です。

もともと平和研究に興味があり、恩師の誘いで大学院へ

研究の道に進まれたきっかけは、何でしたか。
武漢大学で中国人学生に国際関係論の講義をしている様子
武漢大学で中国人学生に国際関係論の講義をしている様子
高校時代から歴史や平和運動に興味をもっていました。世界史の先生が有名な方で、太平洋戦争の話をよく聞いていたこともあり、大学では平和研究をしてみたいと考えて、国際関係論を専攻。当時は、核戦争が起こりかねないとヨーロッパでいわれていた時代。平和研究のベースになった学問で、核戦略や冷戦などについて勉強していました。

大学卒業後、企業に就職して、飛び込みセールスの仕事をしていましたが、3年やったら、もう限界かなと思って(笑)。ちょうどその頃、大学の恩師に会ったら、「そろそろ戻ってこないか」と言われ、大学院に戻ったんです。

大学生のとき、中国の武漢大学へ1年間留学しましたが、さらに教員になってから在外研究でもう1年。日本では「お客さまは神様」っていいますよね。会社員時代はセールスをやっていたので、何よりもお客さまが大事。でも中国は労働者が主人公なので、お店で「これを見せてください」と店員に言っても、おしゃべりをして、こっちを向いてくれないんですよ。全く反対側の世界がここにある、とビックリしたと同時に、中国はおもしろいな、と思い、いろいろな意味で気づきの多い、とても有意義な留学でした。

戦争の研究をしながら世界平和を目指すことができる

この研究分野の、どのようなところに魅力を感じていらっしゃいますか。
中国・武漢市の中山艦記念館を見学したときの様子
中国・武漢市の中山艦記念館を見学したときの様子
平和の研究は、どうして戦争が起こるのか、どうやったら戦争をなくすことができるのか、平和研究とは逆の戦争研究をしながら平和を目指すことが具体的にできます。国際機関に論文を提出したり、国際会議で報告したりすることで、世界の平和に直接関わっているという手応えを感じることが、大きな魅力です。

私の研究室には飛行機や船のモデルがたくさん飾ってあります。ロシアの核弾頭を積んだ短距離弾道ミサイルや中国の最新型の核ミサイルなど、ほとんどおもちゃですけどね。でも学生に説明をするとき、写真や動画だけでなく、モデルを見せると伝わりやすいんです。ロシアではスーパーマーケットでミサイルのおもちゃを売っていて、ロシア人の子どもたちは、こういうもので遊んでいる。身近に武器がある環境で育った人と、私たちのように無縁で暮らす人では、根本的に考え方が違います。実地教育を通じながら、それを学生に紹介しています。「学者の先生はリアルな世界を知らない」と言われると腹が立つので(笑)、私は戦車を見にモスクワまで行くし、様々な国の軍事施設を見てきました。自衛隊のイベントには、学生を連れて行くこともありますよ。

ゼミでは自分が一番興味をもつ国際問題について研究する

ゼミの内容について教えてください。
ゼミ生には、自分が一番興味をもっている問題を研究するよう指導しています。だから、私の専門領域に限らず、様々な国の問題がテーマ。学生から教えてもらうこともあり、私自身もおもしろいです。

ゼミの授業は基本的に輪読。クラス全員で同じ1冊の本を読み、担当者が発表して、それについてディスカッションをすると、精読、つまりものすごく細かく読み込んだのと同じように理解力や知識が深まるんです。いろいろな考え方がわかり、時にはケンカになることもあるくらい白熱します。

私のゼミの卒業生の多くは、外務省や国際機関など世界各国で活躍しているので、そのOB・OGに、今、現場で起きていることを話してもらうこともあり、本には載っていないリアルな現実を学ぶことができます。

文学部での学びによって複雑な社会を分析できる

文学部での学びは、どのようなところがおもしろいと思われますか。読者へのメッセージをお願いします。
今の社会はとても複雑なので、法学でも、歴史学でも、経済学でも、単独では理解できません。でも、いろいろな学問をひとまとめにすることで国際社会の全体像が理解できるんじゃないか、というのが、基本的な社会学の考え方。そういった意味では、文学部は今の複雑な社会を分析するために向いている学問だと思います。

何にでも好奇心をもってください。とにかくテレビや新聞を見て、いろいろなものに興味をもつと、出会ったものの中から本当にやりたいことが見つかるはず。インターネットは、閲覧や検索履歴から自分用に情報が調整されているので、世間も自分の見ている世界と同じものにしか関心がないと思い込んでしまいます。だからテレビや新聞など、万人向けのメディアから情報収集をしましょう。大学で学ぶということは、情報の消費者ではなくて生産者にまわる可能性を高めることなのです。
<経歴>
東京都立新宿高等学校卒業
1979年 創価大学 文学部 社会学科卒業
1989年 創価大学大学院 文学研究科 社会学専攻博士課程修了
2005年9月 博士(社会学)取得
  • キャンパスガイド2023文学部
  • 英語DD
  • 中国語DD
  • 【留学日記】イギリス・バッキンガム大学 夏期語学研修
  • 【留学日記】インド・セントスティーブンカレッジ 春季語学研修