小林 和夫 先生

現代社会にもつながっている歴史上のできごとを社会学という観点から解明

歴史社会学をメインに幅広い社会学について研究

研究内容の基本情報を教えてください。
私の専門分野は「インドネシア地域研究」で、日本占領期のジャワをテーマに研究しています。オランダやインドネシアの古文書館や資料館で、とても珍しい資料を見つけたときは興奮しますし、これまで誰も言っていないことや知られていなかったことを掘り起こすことができた瞬間は、とてもやりがいを感じます。

ただ、ぼくの研究領域はニッチなので、現在は「歴史社会学」をメインに、ゼミでは社会学に関わる幅広い学びを行っています。

「人間と社会の関係を解き明かす」社会学部のコピーに魅せられた

中学、高校ではどのような学校生活を過ごされましたか。
中学時代は本ばかり読んで、友だちとあまり交わらない、目立たない生徒でした。三島由紀夫や太宰治、芥川龍之介を読破していたので、友だちと話が合うわけがないですよね(笑)。高校では、さらにジャズも好きになり、マイルス・デイヴィスの自伝を読んで生き方に感化され、ずっとレコードを聴いていました。

高校1年生のとき、大学受験雑誌の社会学部の紹介記事で「人間と社会の関係を解き明かす」といったキャッチーなコピーに一瞬で魅せられ、大学で社会学を勉強したいと志すようになりました。

インドネシア留学の経験から社会人を経て大学院へ

研究の道に進まれたきっかけは、何でしたか。
大学時代は、ジェンダー論、当時はフェミニズムと言っていましたが、それに関する論文をよく読みました。男性だからこう、女性だからこう、とあるべき姿を信じ込まされていたことが実は虚構だったという理論に大きな衝撃を受け、卒業論文もフェミニズムをテーマに選んだんです。

大学4年次にインドネシア大学へ留学をしました。大学卒業後、制御・計測機器メーカーに就職し、5年間、会社員として勤務をしました。インドネシアのセクションに配属されたため、留学時に勉強したインドネシア語が役立ちましたね。

ただ、仕事をしているなかで、いろいろ考えたことがあり、もう一度、研究の道を志そうと、東京都立大学大学院へ進学しました。

社会学の概念を用いて歴史上で起こったことを解明

授業の内容について教えてください。
「歴史社会学」の授業では、単に歴史の事実だけを追うのではなく、社会学の概念を用いて歴史を解明しています。歴史上で起きたできごとがどういうことだったのか、社会学という観点から解釈するのが「歴史社会学」の領域です。そのときそうだったよね、で終わるのではなく、現代にも連続していて、今、ぼくたちが考えている枠組みが過去の歴史においても当てはまる、ということがよくあります。それを解明していくのが「歴史社会学」のおもしろさです。

大学の授業は、一般的にはつまらないですよね(笑)。だから、ちょっとでも聴いてみようかと思ってもらえるよう、オンライン授業の「社会学概論」や「歴史の社会学」では、授業前の15分間、J-POPやROCKなど学生からのリクエスト曲を流しています。授業の冒頭でその曲にまつわる学生のエピソードを紹介してから講義がスタートします。エピソードは、キラキラした話や成功体験ではなく、あえてつらかった(つらい)体験を送ってもらっています。こういう学生がいるのだと知ると、恵まれた環境の学生は身を律しますし、同じような体験や気持ちをもっている学生は共感し心が少し軽くなったとの声もあり、おかげでとても好評です。チャットを常時開放していて、創価大学で一番チャットが自由に飛び交う授業だと思います。

身近なことを題材にして自由に意見が飛び交うゼミ

ゼミの内容について教えてください。
私の授業のシラバスには、The Blue Heartsの歌詞を載せていますが、ぼくはThe Blue Heartsを社会学だと考えています。現在のゼミでは、就職活動やキャリア教育をテーマに、悩みや心配ごとを計量的に分析して論文にまとめる学生が多いです。社会学は身近なことが題材になるため、ゼミでも自由に発言してもらっていて、とても活発に意見が飛び交っていますよ。

今後は、自分の専門分野である「アジア・太平洋戦争の社会学的研究」のゼミも開講予定です。今の日本人や日本社会のモノの考え方や価値観は、アジア・太平洋戦争のときの東南アジアの戦場にも現れていて、過去を知り、今のことをさらにふり返る、という学びができると思います。戦争は重いイメージがあるので、音楽や芸術など様々な領域から研究していきたいですね。

何でもあり、の文学部で自分の領域を見つけてほしい

文学部での学びは、どのようなところがおもしろいと思われますか。読者へのメッセージをお願いします。
文学部は、こんな生き方があるんだ、こんな考え方があるんだ、ということを知ることができる学部です。ある意味、何でもありです。文学部では入学時に専攻を決定せず、1年半じっくり時間をかけて、自分に合う領域、学問を見つけるシステムなので、やりたいことが決まっていなくても問題ありません。自分が何を学べばよいかわからない学生や、自分の大学生活をイメージできない学生にこそ、文学部に来てほしいと考えています。

自分はもっとこういうふうにやってみたいとか、悩むことはあるかもしれませんが、「生きているだけで幸せ」です。朝起きて、ご飯を食べて、学校へ行き、夜は家に帰って眠れる、っていうだけでいいじゃないか、と思っています。まずは焦らず、今日の日を迎えられたことが何よりも素晴らしいと考えて、一日一日を大事にしてください。
<経歴>
東京都立明正高等学校卒業
1991年 創価大学 文学部 社会学科卒業
2004年 東京都立大学大学院 都市科学研究科博士課程単位取得退学
  • キャンパスガイド2023文学部
  • 英語DD
  • 中国語DD
  • 【留学日記】イギリス・バッキンガム大学 夏期語学研修
  • 【留学日記】インド・セントスティーブンカレッジ 春季語学研修