Faculty of Letters Professor Takao Ito's book "Neo-Kantian Philosophy and Modern Japan: Reception and Development" has been published
本書は、伊藤貴雄教授が2020年より研究代表者を務める科研費・基盤研究B「近代日本における新カント派受容の歴史と意義―社会科学との交渉を中心に―」および「昭和戦前期における新カント派価値哲学の展開・意義・特色―学際的/国際的研究―」の成果をまとめたものです。総勢29名による約40本の論文・コラムを収録し、計688頁に及ぶ大規模論集となっています。
新カント派は19世紀後半から20世紀初頭にかけて世界的な影響力をもった思潮で、日本では明治末期から昭和初期にかけて積極的に受容されました。その影響は哲学にとどまらず、経済学・政治学・法律学・教育学、さらには評論・文学など多岐にわたります。
本書では、ヴィンデルバントやリッカートなどドイツの新カント派哲学者をはじめ、彼らを日本に紹介した桑木厳翼や左右田喜一郎、西田幾多郎・田邊元・朝永三十郎・三木清ら京都学派、河合栄治郎・南原繁など東京の思想家、土田杏村・牧口常三郎など在野の思想家、横光利一・芥川龍之介などの文学者、与謝野晶子や高橋ふみなどの女性思想家まで、40名を取り上げています。
巻頭には、ドイツ・マインツ大学カント研究所のマーギット・ルフィン教授による「推薦の辞」を収録しています。ルフィン氏は本書を「近代日本の思想史および価値哲学に関する今後の研究に資する基礎文献」であり、「新カント派研究そのものにも新たな里程標を打ち立てるもの」と評価しています。
また、ハイデルベルク大学日本学研究所のハンス・マーティン・クレーマ教授も寄稿し、東京富士美術館所蔵の「リッカート直筆書簡」3通の復刻・翻訳・解説を担当しました。書簡のカラー写真も巻頭に掲載され、資料的価値としても第一級の内容となっています。
発刊にあたり伊藤教授は、「本書の刊行は多くの研究者の知見とご協力の結晶です。近代日本が新カント派哲学をどのように受け止め、思想・文学・社会科学の諸領域で展開させてきたのかを総合的に描き出しています。世界的に『日本哲学』研究が活発化する中、日本の思想家の営みを国際的文脈に正当に位置づける試みとして、本書が新たな研究の扉を開くことを願っています」と述べました。
Professor
Takao Ito
- Specialized Field
Philosophy/ethics, history of thought
- Research theme
Modern German Thought, Social Contract Theory, and Spiritual and Cultural History