Vol.88

ひたむきな学びと挑戦、人との繋がり。私を大きく成長させてくれた大学生活

制野 瞳美(せいのひとみ)
法学部 法律学科 4年

国際社会の課題解決に貢献する力を付けるため、創価大学に進学した制野瞳美さん。グローバル・シティズンシップ・プログラム(GCP)をはじめとする学内での学びで、英語力、課題解決力、リーダーシップ、環境問題への意識などを高め、交換留学や学外活動では学びのアウトプットにも果敢に挑戦しました。数々の学びと挑戦で得られたもの、そしてその挑戦を支えた原動力とは何だったのか、制野さんにお話を聞きました。

大学進学にあたり、創価大学を志望校に選んだ理由を教えてください。

幼いころ母に勧められて読んだ『地雷ではなく花をください』という絵本にをきっかけに、世界中で理不尽な環境に置かれた人たちのために働きたいと思うようになりました。高校時代、国際協力の現場で働くための学びが得られる大学を検討する中、創価大学のパンフレットを見て、卒業生の進路実績に、私が目指していた「国連職員」「国際NGO」とあるのが目に止まりました。さらに法学部に「国際平和外交コース」があり、紛争の解決や平和に焦点を当てた学びを打ち出していることにも強く惹かれ、志望校として考えるようになりました。

最終的に受験の決め手になったのは、グローバル・シティズンシップ・プログラム(GCP)の存在です。創大で学ぶ地元の先輩に、GCPではグローバルな活躍に不可欠な英語力と思考力を徹底的に磨き、卒業生には国際機関で働いている方が大勢いることを教えていただき、創大に行けば平和を学びながら国際社会で活躍する確かな力を身に付けられると考え、入学を決めました。

GCPやGLCでは、どのような力を身に付けましたか。

GCPで私が身に付けたものは、大きく3つあります。

1つ目は英語力です。毎日の英語の授業では、国際問題を英語で学ぶ授業と、英語でのアカデミックな学び方を身に付ける授業を通して、国際課題に関しての知見を深めながら英語力が鍛えられました。英語に集中する時間が毎日あることで、一歩ずつ着実に英語力を伸ばすことができたと思います。

2つ目は、課題解決力です。実際の国際課題に対して解決策を提案するプロジェクトでは、先行研究の論文や海外の文献、政策などを調べ、調査結果を分析し、筋の通った解決策を示すことが求められます。その過程で、複雑な問題を解決するために必要な多角的な視点、リサーチ力、分析力、論理的思考力が養われました。

3つ目が、仲間との絆です。ハイレベルな英語力や思考力が求められるGCPの授業は厳しく、それを乗り越えられたのは、同じような目標を持って励まし合う同期の仲間がいたからです。悩みを相談したり、英語の問題を添削し合ったり、苦しい時間を一緒に乗り越えた同期との絆は、社会に出た後も自分に力を与えてくれるものになると思っています。

グローバルリーダーカレッジ(GLC)は、グローバルリーダーを目指し、課題解決力やコミュニケーション力を鍛える課外講座です。私は2年次からGLCを受講して、周囲を巻き込むリーダーシップ力を学びました。以前の私は自分の意見を主張しすぎるところがあったのですが、GLCのグループワークを通して、他者の意見に耳を傾けること、普段の雑談やおしゃべりから仲を深めることを意識するようになりました。コミュニケーションを重視したチームビルディングができるようになったことに、自分の成長を感じています。

GCP成果報告会の様子
GCP成果報告会の様子

法学部で専攻した惑星政治学とはどのような学問ですか。また、制野さんはどのようなテーマで学びを深めましたか。

惑星政治学は、国家と国家の関係、ひいてはヒトとヒトの関係に絞って考えてしまう従来の国際政治分野を批判的に捉え直し、大地や生態系との関係を軸に、社会の分断や気候変動といった現代社会の問題の所在を明らかにし、課題解決の探求をとことん追求していく学問です。紛争や格差が起こる原因を知りたいという思いで惑星政治学の授業を受けたのですが、その中で、人間の活動によって起きた生態系の破壊がかえって格差を広げ、弱い立場にある人や生物をより厳しい環境に追い込んでいることにショックを受けました。人間はパートナーであるはずの大地が沈黙していることをいいことに、明らかに都合よく一方的に利用・搾取してきました。その関係性が政治的であることに着目します。この授業をきっかけに、環境に過度な負荷をかけない活動を追究することが世界の課題の根本的解決につながるのではないか、と考えるようになり、『地雷ではなく花を』大切にできる社会に向けて、ヒトと大地との平和な関係性の実現に強い関心を持つようになりました。

惑星政治学は様々なイシューを包摂していますが、その中でも、私が研究テーマとしているのは、農業の持続可能性です。自然の恩恵を受けながら自然と共生するような農業こそ、人間の活動と自然環境を両立させ、格差問題を少しずつ解決に導くものではないかと希望を持ち、農の営みに焦点を当てて学びを深めています。卒業論文では、これまで経済性や安全性の側面から論じられてきた食料安全保障の組み換えを見据えて、生物多様性、周囲の自然環境への配慮といった観点から問い直しが可能な、従来のものとは異なる別様の食の安全保障について執筆しました。

加えて、2024年度は地球平和共生フィールドワークも履修しました。これは自然体験型のフィールドワークで、キャンパスで頭(ロゴス)だけで考える限界を乗り越えるために、水や土の循環を身体感覚(ピュシス)で理解を深める授業です。惑星政治学を深める、実りある多くの学びができたと感じています。

「地球平和共生フィールドワーク」の授業の様子
「地球平和共生フィールドワーク」の授業の様子

ブルガリアへの交換留学では、どのようなことが印象に残っていますか?

2022年9月から10カ月間、ブルガリアのソフィア大学に留学しました。交換留学だったため学費は免除され、さらに日本学生支援機構の奨学金、ソフィア大学の特別奨学金もいただいて、金銭的な負担をほとんどかけずに充実した留学生活を送ることができました。

授業では、国際情勢学や安全保障学の授業を履修し、ヨーロッパの学生たちと国際関係について議論しました。創大のGCPで培った語学と思考力のおかげで、自信を持って議論に参加できましたし、授業で課されたエッセイの執筆にもそれほど苦労しませんでした。提出したエッセイが留学生の中で1番の高評価を受けた時は、創大での学びが生かされたと感じてうれしかったですね。

留学中は、ブルガリア人の友人もたくさんできました。ブルガリアは自然豊かな国で、田舎にある友人の家を訪ねた時には、牛や鶏が放し飼いされていて「なんて自由なんだ!」と感動しました。近所からミルクをもらって自家製ヨーグルトをつくったり、各家庭で伝統的な料理の味が守られていたり、とても豊かな暮らしだなと感じました。

ただ、その一方で、ブルガリアでも離農する人が急速に増えていることを知り、どの国でも農の営みと風景を廃れさせてはいけないと強く感じる経験にもなりました。そうした体験を含め、留学中は、日本の中、創大の中にいるだけでは得られない貴重な学びがあったと思っています。

留学中にリラ湖にて
留学中にリラ湖にて
エラスムスのイベントにて
エラスムスのイベントにて

学外では、国際NGOが主催する「GGG+フォーラム」に、学生代表として登壇したそうですね。

「GGG+フォーラム」は、世界の栄養課題や疫病などの課題に対して政策提言を行っている国際NGOが主催する、産官学民連携のフォーラムです。私は「パンデミック後の世界-UNRWA保健局長とガザを考える」というセッションに、司会者兼学生代表として登壇しました。

現地のUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)保健局長の先生や職員の方と、オンラインでディスカッションを行ったのですが、報道で知る以上に厳しい現地の状況に圧倒されました。本来は農業が盛んな土地にも関わらず、今は今日食べる物もない、医療的支援物資も全く足りていないという状況の中、苦しんでいる人々の声を代弁し、一刻も早い停戦と十分な食糧支援の重要性を訴えておられる姿に胸を打たれ、現実の厳しさを直視することの意義を強く感じました。

GGG+フォーラムで発表する様子
GGG+フォーラムで発表する様子

卒業後の進路と、今後の目標について教えてください。

卒業後は、農林・食品系団体の経済部門に就職します。GCPやゼミで学んできた格差や環境の問題に対して、「農の営み」という観点から向き合っていこうと考え、全国の農家さんと繋がりを持って国内外の食と農のシステムに影響を与え得る場所で働くことを決めました。

今後の目標は、生産者や農業生産に関わる全ての人々との協働の中から、日本・世界の農業現場の課題を誠実に学び、地球規模の課題解決のため、自分に何ができるかを考え続け、実行に移していくことです。これまで学んできた英語力だけでなく、課題発見・解決力、リーダーシップ力を発揮し、ゼミで学んだthink planetarily, act terrestrially(地球規模で考え、大地に根ざして行動する)を実行していきます。

大山での農作業
大山での農作業

学内外でのさまざまな挑戦の原動力になったものは何でしょうか?

人との繋がり、「人のために」という思いに力をもらっていました。私が創大の恵まれた環境で学び、挑戦できているのは、家族、先輩方、仲間たちの応援のおかげです。周囲への感謝の気持ちと、応援に応えるには自分が結果を出すしかないという思いが、最後まで頑張り抜くモチベーションになりました。

人との繋がりをとても大事にするようになったのは、大学生活を経て自分が一番成長したところでもあります。元々内向的な性格で、自分から積極的に人と繋がりを持つのが苦手なタイプだったのですが、GCPやGLCで出会った仲間とは、時にぶつかりながらも、それを楽しい思い出として笑い合えるほど強い絆が生まれました。これからも新しい環境で出会った人と繋がりを持ち、絆を大切にしていきたいと思っています。

GLCの仲間と
GLCの仲間と

創価大学への進学に興味を持つ後輩たちに、メッセージをお願いします。

創価大学には、驚くほど優秀な人や面白い人がたくさんいます。自分の夢や悩みに真剣に向き合ってくれる、温かい人たちもいます。「後輩を自分以上の人材に」という思いが根付き、在学生や卒業生が後輩を全力でサポートしてくださる環境があります。私自身、そんな素敵な人たちとここで出会えたおかげで、自分の能力を磨き、さまざまな挑戦をし、多くの学びを得て、入学時は想像できなかったような自分に成長することができました。私も残りの学生生活で、これから入学されるみなさんがよりよい挑戦や成長の機会を得られるよう活動していくとともに、卒業後も、それぞれの場所で奮闘する創大生と繋がりを持ち、切磋琢磨していきたいですね。

創価大学は、目標や夢を実現できる場所です。たくさん本を読み、たくさん人と会い、たくさん語り合って自分の可能性を広げていってほしいなと思います。

せいの ひとみ Seino Hitomi
[好きな言葉]
循環
[性格]
好奇心旺盛
[趣味]
旅行、和太鼓、美術館に行くこと
[最近読んだ本]
「大地の再生」実践マニュアル:空気と水の浸透循環を回復する/矢野智徳
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