図書新聞3665号に法学部・前田幸男教授の書評が掲載されました

図書新聞3665号(2024年11月30日発行)に法学部・前田幸男教授の書評が掲載されました。

書評では、2022年10月9日に没したブリュノ・ラトゥールが最晩年に著した以下の二冊の邦訳が取り扱われています。
(1)(2024)『私たちはどこにいるのか――惑星地球のロックダウンを知るためのレッスン』(川村久美子訳)新評論
(2)(2024)『大地に住む――ニコラ・トリュオングとの対談録』(荒金直人訳)以文社

書評の内容について前田教授は、「今回、縁あって光栄にもラトゥールの仕事を紹介する機会をいただきました。書評では、『ラトゥールの重要なキーワードとそれに対する二冊の訳語の関係を軸に吟味する』というサブタイトルのもと、ラトゥールのキーワードであるフランス語で” la terre”、英語でearthを、日本語にどう翻訳するのかという大きな問題に向き合いました。用語という観点で言えば、『地球』という表現が定着していますが、球体であることを身体感覚で理解することは不可能で、文字通り『大地』に足をつけることが求められているのではないでしょうか。
このことは以下のようなラトゥールの示唆を受け止めることを意味します。すなわち、地球上の生息可能空間(habitable zone)は大気・土壌・森林・動植物・地下水の底までのわずか数キロメートルの表面という狭い範囲に限定されているということです。この空間のことをラトゥールは、『生命の薄い膜』あるいは『被膜』と表現しています。今後、私たちにとって、グローバル、インターナショナル、リージョナル、ナショナル、ローカルといったどの空間メタファーから言っても盲点となる、この『膜』を破壊しないような社会デザインをいかにして描いていくのかが喫緊の課題になっていくのではないでしょうか。両書が、その手掛かりを与えてくれることは間違いありません」と述べました。

『私たちはどこにいるのか――惑星地球のロックダウンを知るためのレッスン』(川村久美子訳)新評論
『私たちはどこにいるのか――惑星地球のロックダウンを知るためのレッスン』(川村久美子訳)新評論
『大地に住む――ニコラ・トリュオングとの対談録』(荒金直人訳)以文社
『大地に住む――ニコラ・トリュオングとの対談録』(荒金直人訳)以文社
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