第10回ピース・フォーラムが開催されました

創価大学・慶南大学・中国文化大学の3大学協働学術会議であるピース・フォーラムが、2026年6月12日、創価大学で開催されました。

第10回の節目となる今回のフォーラムでは、 「『権力と平和の闘争』を再考する」とのテーマをかかげ、日本、韓国、台湾それぞれの立場から情勢分析報告と討論が行われました。

フォーラムの開会にあたり、創価大学・鈴木美華学長からあいさつがあり、10回目となるピース・フォーラムの意義を述べるとともに、この共同研究のさらなる発展に期待を寄せました。また、慶南大学のパク・ジェキュ総長のメッセージをリ・クァンセイ教授(慶南大学極東問題研究所所長)が代読し、中国文化大学のチャオ・チェンミン教授は代表してあいさつを述べられました。

オープニング・セッションの様子
創価大学鈴木学長あいさつ

第1セッションでは、創価大学のヴェセリン・ポポフスキ教授(国際平和学研究科)が、「ロシア・ウクライナ戦争と国際秩序の未来」と題し、泥沼化するロシア・ウクライナ戦争の本質と、それがもたらす国際秩序への影響、そして今後の国際社会が目指すべき具体的な改革案について、歴史的・法的な視点から多角的に論じました。ロシア・ウクライナ戦争は19世紀的な帝国的侵略であり、支援と経済制裁の継続による終結が求められるとし、今後の国際秩序に向け、拒否権や常任理事国制度を完全に撤廃した「新国連憲章」による国連の根本的再構築の必要性を提唱しました。

この報告に対するコメントとして、チャオ・チェンミン教授(中国文化大学)は、現実主義の観点から米中対立の影響を分析し、米国が多国間枠組みから後退し国際規範を脅かす一方、中国は独自の国際秩序構築を狙っており、国連の麻痺に対して、東アジアを含めた地域安全保障枠組みの強化が必要だと述べました。チェ・ヨンジュン博士(慶南大学極東問題研究所)は、国際秩序の危機は大国政治の構造的課題であり、国内の格差やポピュリズムとも連動していると指摘。市民交流による信頼醸成を重視し、緊張高まる北東アジアには多層的な地域協力枠組みが必要だと提唱しました。

第1セッションで報告するポポフスキ教授

第2セッションでは、オウヤン・シンイー教授(中国文化大学)が「台湾の戦略的転換:構造的脆弱性から進化する不可欠性へ」と題し報告。​​​​​​アジアの「蜘蛛の巣」型安保や台湾の「ヤマアラシ戦略」を分析し、軍事力に依存する対立の論理を超え、半導体や民主主義の強みを活かした互恵的共生への転換を提唱しました。そして、創価大学創立者・池田大作氏の平和哲学や孫文の「大アジア主義(王道)」に通じる人道的な共生の論理を用い、覇権主義を排した平和的な共存ネットワークを構築する重要性を訴えました。

これに対するコメントとして、イ・ビョンチョル博士(慶南大学極東問題研究所)は、経済的抑止力は過大評価されがちであり、「シリコンシールド」が絶対的な抑止力になるとは限らないと指摘。台湾の運命は米中対立の力学に依存しており、大国の衝突を前にヤマアラシ戦略だけで防ぎきれるのかとの観点で論じました。

ジョナサン・ラックハースト教授(創価大学グローバルガバナンスセンター長)は、経済的な相互依存が抑止力にならないリスクや、香港のようにインフラだけでは政治的同化を防げない点を指摘。さらにG7の脱リスク戦略に伴う日米韓での半導体生産拡大が、台湾の不可欠性を揺るがす懸念を示しました。

第2セッションで報告するオウヤン教授
ディスカッションの様子

第3セッションでは、イム・ウルチョル教授(慶南大学極東問題研究所)が「日韓台の三国間協力:課題、機会、今後の課題」とのテーマで報告。指導者不在の「Gゼロ」時代において、日韓台は利害の不一致から軍事同盟の構築は困難であるため、特に韓国は台湾有事と北朝鮮の挑発が重なる「二面危機」を警戒し、非軍事の後方支援に留まるべきと主張しました。その打開策として、台湾の製造、韓国のHBM(高帯域幅メモリ)、日本の装置・素材を融合した「アジアAI半導体ドリームチーム」を構築し、政治に左右されない機能的な技術サプライチェーン協力を推進すべきだと提唱されました。

この報告に対するコメントとして、ウルヴ・ハンセン准教授(創価大学法学部)は、核放棄国への侵略は北朝鮮の核への執着を正当化させたと指摘。米国の孤立主義は一過性ではなく、以前の国際秩序には戻らないとの前提で、中ロへの配慮も視野に入れながら、半導体等の機能的協力へ舵を切る現実策を支持するとしました。

チェン・チュンシン教授(中国文化大学)はトランプ氏の取引外交を前に、独自の機能的ネット構築は生存に不可欠であると主張。台湾の対中投資比率が大幅に低下した劇的変化に触れ、中韓台の技術を融合した「AIドリームチーム」による経済的強靭化が急務だとして、イム教授の提案に賛意を示しました。

最後に、3つのセッションの総括が行われたあと、玉井秀樹副学長(創価大学平和問題研究所所長)からは閉会にあたり、参加者への深い謝意が述べられました。力による支配が常態化する厳しい現実に対し、平和構築への創造的かつ実務的な知見が多く提示されたことから、大学などの学術共同体が平和創造への具体的アイデアを国際社会に発信し続ける重責を担っているとの確信を述べ、歴史的なシンポジウムを締めくくりました。

 

第3セッションで報告するイム・ユルチョル教授
ファイナルセッションの様子
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