Vol.76

赤十字の職員として世界中の人々の命の尊厳を守りたい

佐藤 美樹
日本赤十字社東京都支部 事業部 青少年・ボランティア課
経済学部 経済学科 2022年3月卒業/48期

 「世界の人々の命を尊重し、救いたい」という目標を胸に創価大学で学び、現在は日本赤十字社で働く佐藤美樹さん。昨年11月には、日本赤十字社の代表の一人として、国連本部で開催された核兵器禁止条約第2回締約国会議にも参加。大学時代にグローバルシティズンシッププログラム(GCP)で培った語学力、他者と協働する力を生かして、国内外の人々の命の尊厳と幸せを守る事業に力を尽くしています。

現在携わっているお仕事について教えてください

現在のお仕事の様子
現在のお仕事の様子

 日本赤十字社の東京都支部で、ボランティア活動の推進や関連団体との連絡調整を行っています。赤十字は、世界191の国・地域に広がるネットワークを生かして、災害救護をはじめ、苦しんでいる人を救うために幅広い活動をしている国際的な組織です。その活動は、多様なボランティアによって支えられ、日本国内では現在、2,860の奉仕団(ボランティアのグループ)、約85万人の方が活動しています。私はそのうち東京都内に所属する奉仕団のみなさんと関わり、ユースボランティアのイベントの企画・運営、行政機関との連絡調整、赤十字の理念や役割をお伝えする研修などを主に担当しています。将来的には、世界の災害や人道危機に対する支援を行う国際救援活動の業務に携わることを目標に、社内での研修などに参加して理解を深めているところです。

日本赤十字社での仕事に興味を持たれたきっかけは?

 国際支援や社会貢献に興味をもったのは、病気で苦しむ家族がいたことや、1994年のルワンダにおける大量虐殺(ジェノサイド)を描いた映画「ホテル・ルワンダ」を中学時代に見てショックを受けたことがきっかけでした。当時学んでいた関西創価学園で、創立者の「不幸を見過ごすな!民衆を守れ!」という言葉にも触れ、大勢の人が大変な状況に置かれている現状を変えていかなければならない、世界の人々の命を平等に尊重し救いたい、という使命感を持ったのを覚えています。その後、高校、大学では、途上国の衛生問題や開発経済学を中心に学びを深め、就職活動でも医療業界や国際団体を志望していました。就職活動をする中で、世界的なネットワークがあり、中立な立場で人間のいのちと健康、尊厳を守る事業を行っている赤十字の存在を知り、私自身の目指すものととても近いと感じて入社を決めました。

現在のお仕事の様子
現在のお仕事の様子

昨年アメリカの国連本部で開催された核兵器禁止条約第2回締約国会議へは、どんな思いで参加されたのでしょうか?

核兵器禁止条約第2回締約国会議に参加
核兵器禁止条約第2回締約国会議に参加

 赤十字は、広島・長崎への原爆投下直後から救護活動に従事し、現在まで核兵器廃絶に取り組んできました。その経験を背景に、核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバーとして参加しており、今回私もその一員として知見を深める機会をいただきました。高校時代、核兵器廃絶に向けた人権教育について研究した経験があり、核兵器廃絶に対して赤十字と他団体がどのように協働しているのか、廃絶に前向きではない国の意見や、昨今のウクライナ情勢に伴って高まる核抑止論にどう対応していくのか、リアルな現場の議論を通して学びたいという思いで現地に入りました。
 会議の期間中、核兵器の被害に遭われた方や、アメリカのユース世代の話を聞き、どんな支援や援助も被害者ファーストであるべきだとということ、核兵器廃絶は人道面だけでなく金融、医療、政治などさまざまな角度からアプローチする必要があること、若者世代への啓発や教育の重要性など、多くの学びを得ることができました。

お仕事の中で、大学での学びが生かされていると思う時はありますか?

 まさに今回の締約国会議で感じたのですが、現場ではアカデミックな英語やビジネス英語、専門性の高い言葉が多く使われていて、それに対応できたのは、大学時代にGCPで培われた英語力のおかげだと思いました。また、国際情勢や安全保障の議論では、経済学のゲーム理論が用いられることもあり、意外なところで経済学の知識が役立ったのは面白かったですね。
 普段の業務でも、幅広い年代や職種の方と接する中で、相手のニーズに合わせて内容や話し方を変えながら、自信を持って話ができるのは、大学で数え切れないほどプレゼンやスピーチ、グループワークをしてきた経験の賜物だと思います。

学生時代は、どんな大学生活を送っていたのでしょうか。

 1~2年次は、とにかく勉強三昧の毎日でした。学部の授業のほかに、GCPとHOPEの勉強もあったので、図書館で21時まで勉強して、寮に戻ってまた勉強して、の繰り返しで、本当に大変でしたね。お世話になった先生に、半分泣きながら「もう無理です」と相談に行ったこともありました。それを乗り越えられたのは、世界の苦しんでいる人、特に子どもたちを救いたい、現状を変えたいという夢があったからです。ただ、大学での学びや先輩との出会いを通して、「変えたい」という気持ちだけでは何も変えられないことも学びました。「正義に見合った実力を」という先輩の言葉がとても印象的で、変えたいと思うだけでなく、変えるための知識や実力を付けることが大事だと自分に言い聞かせ、努力を重ねていました。あの時があるからこそ、今の仕事でも様々な挑戦ができていると思います。また、海外との接点を持てるチャンスには積極的に挑戦していました。国内ではアフリカ開発会議(TICAD7)のポストイベントに留学生と一緒に参加したり、外務省後援のプログラムでシンガポールに派遣していただきました。

GCPの仲間と外務省後援プログラムでシンガポールに派遣
GCPの仲間と外務省後援プログラムでシンガポールに派遣

学生生活では、コロナ禍で影響を受けたこともあったのでしょうか?

仲間が祝ってくれた卒業式
仲間が祝ってくれた卒業式

 3年次にコロナ禍になり、大学生活で最も楽しみにしていた海外留学が、直前で中止になってしまったのは、ショックでした。当時はとても落ち込みましたが、先輩方や周りの方に激励していただいて、就職活動に気持ちを切り替えることができました。実は、コロナにはもう一つ泣かされた出来事があって、卒業式の直前、私自身がコロナに感染してしまい、式に出席できなかったんです。学業も課外活動も一生懸命頑張り、ようやく卒業するという日になぜ、と大泣きする私を、ゼミの先生や大学職員の方が電話で激励してくださったことは忘れられません。ただ、その後友人たちが、私一人のためにキャンパスで卒業式を開いてくれたんです。入社式の前日だったので、地方にいるメンバーはオンラインでお祝いしてくれました。大学生活で仲間や周囲に恵まれたことをあらためて感じられて、とてもうれしかったですね。その日は快晴で桜も満開という最高のシチュエーションで、本当に素敵な思い出になりました。

創大への進学に興味を持つ後輩たちにメッセージをお願いします。

 私には、創大だからこそ学べたと思っていることが二つあります。一つは、自分の可能性を信じられるようになったこと。もう一つは、遠い世界の問題を自分事として捉えられるようになったことです。創大の友人たちや教職員の方々、充実した学習環境には、学生一人一人を認め、「自分もできるんだ」と信じさせてくれる力がありました。先輩や後輩との繋がりも強く、等身大の成功体験やつまずいた経験を聞かせてもらえたことも、さまざまな挑戦の後押しになりました。何にでも挑戦できる場所ですから、きっとみなさんも、入学前には思い描いていなかった自分に成長できるはずです。また、留学経験者や留学生が当たり前にいるグローバルなキャンパスで学んでいると、世界の問題は「どこか遠い国の問題」ではなく、「あの友人の母国の問題」になり、自分と親和性のあるものとして考えられるようになります。自分の大きな夢を真面目に語り合い、切磋琢磨できる仲間がいる大学は、ほかにはなかなかないと思います。また、今は夢がない人も、きっとやりたいことが見つかり、可能性を広げられる大学です。ぜひ創価大学で自由にいろいろなことに挑戦してほしいと思います。

支えてくれた家族と
支えてくれた家族と
佐藤 美樹 Miki Sato 
[好きな言葉]
他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる
勝つことよりも負けないこと
[性格]

明るい、ポジティブ、社交的

[趣味]
旅行、銭湯めぐり
[最近読んだ本]

UNBOWED へこたれない/ワンガリ・マータイ著

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