秋月真一特任准教授の筆頭論文が学術誌『Chemical Engineering Journal』に掲載

 本学プランクトン工学研究所の秋月真一特任准教授による論文「Microalgae assisted coupled nitrification-denitrification in a sponge-based trickling photobioreactor during anaerobic digestate treatment」が国際的な学術誌『Chemical Engineering Journal』(注)に掲載されました。
 本研究では、メタン発酵消化液に含まれる窒素成分の省エネルギー型処理を目的として、微細藻類の光合成による酸素供給を活用したスポンジ充填型散水ろ床フォトバイオリアクターを開発しました。本リアクターは、光合成によって供給される酸素が硝化反応を支え、外部曝気を必要とせずにアンモニアの硝化から脱窒素までを連続的に進行させることが可能な構成となっています。光照射強度を段階的に変化させた4フェーズの運転において、暗条件(0 lux)では窒素除去率が0.5%と極めて低かった一方で、高光照射条件(10,000 lux)では77.3%まで向上しました。亜硝酸濃度と脱窒素速度の間には有意な負の相関(p < 0.001)が認められ、亜硝酸の蓄積が脱窒素の阻害要因となり、全体の窒素除去性能が低下する可能性が示唆されました。この亜硝酸の蓄積は、光照射強度の増加に伴う光合成・酸素供給の活発化により、亜硝酸酸化が促進されたことで抑制されました。したがって、安定した処理には一定以上の光照射強度が必要であることが明らかとなりました。さらに、リアクターのスケールアップを見据え、Lambert–Beerの法則と定積分を用いて内部の平均光強度を定量化し、リアクター径に応じた最適な入射光強度範囲を予測する経験モデルを構築しました。本研究で得られた知見は、微細藻類と硝化細菌・脱窒素細菌の代謝的共生を活用した次世代型窒素除去技術の設計および運用最適化に資する有用な指針を提供するものです。
共著者:Germán Cuevas-Rodríguez教授(メキシコ グアナファト大学工学部)
(注)『Chemical Engineering Journal』は、Elsevier社が刊行する化学工学分野の国際的な学術誌であり、化学反応工学、応用生物工学、環境化学工学、新規材料など、幅広い研究領域を対象としています。2024年のインパクトファクターは13.2、Scopusにおける最大パーセンタイルは97%(General Chemical Engineering)であり、2021年以降の年間被引用件数は平均15万件を超えています。本誌は、化学工学を基盤としつつ、環境・エネルギー・材料など複合領域に取り組む研究者にとって、最先端の知見と技術動向を把握するための信頼性の高い情報源であり、世界中の研究者から広く支持されています。

論文リンク
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1385894725065507
ジャーナルリンク
https://www.sciencedirect.com/journal/chemical-engineering-journal

特任准教授

秋月 真一

アキヅキ シンイチ

専門分野

水処理工学、生態環境工学、資源循環工学、途上国支援工学

研究テーマ
  1. 光合成微生物の機能を利用した省エネルギー型廃水処理技術の開発
  2. 月面での長期有人活動に向けた資源循環型尿処理技術の開発
  3. エチオピア・タナ湖に過剰繁茂する水草バイオマスの高速メタン発酵処理技術の開発
Share