GCP→留学→ASPIRE→日米学生会議→国連AI→戦略コンサルタント 

竹中 智 経済学部4年

 入学時に、本学のオーナーズプログラムであるGCP(グローバル・シティズンシップ・プログラム)1期生として、とことん学ぶことを決意。しかし、スタート直後の成績は、必死に勉強して臨んだにもかかわらずGCP生32名中31番。東京大を蹴って創大に入学した同級生や、すでに英語でディスカッションが出来る同級生たちに囲まれ、はじめは劣等感の塊だったといいます。そこから懸命に努力を重ね、GCPの2年間で英語の成績は、TOEIC480点から850点に、そして3年次のフィリピン大学留学後には、925点に。留学先では、スラムの子供たちのためのサッカースクールの創設やインターンシップを通し、幅広い方々と交流。帰国後も自身に挑戦し続け、外資系コンサルティング企業の戦略コンサルタント職に就職を決めた後、2014年5月にASPIREJAPANの立ち上げに参加し、6月には横浜で開催された世界総長会議の学生セッションの議題の作成から当日の共同議長を務め、同年8月には日米学生会議に参加し、国連アカデミック・インパクト(AI)の加盟に向けて発案。2014年12月の本学のAI加盟に合わせ、2015年1月に学生主体で気運を高めていこうと、Global Citizenship Weekを開催。クラブや学生団体と共に、展示やフォーラム、また国連広報センター長の講演会などを行い、活発に活動を続ける竹中さんに話を聞きました。

GCP:「地球市民」を育成するための特別な教育プログラムで、所属する学部にプラスαでGCPの教育を受ける。全ての授業が英語で行われ、読解力、ライティング能力、論理的思考力、ディスカッションやプレゼンテーションの技能などを磨く。全員が海外短期研修に参加。開発途上国で諸問題について英語で講義を受け、貧困地域の学校や施設を訪問し、理解を深める。データ分析など数学の科目も重視されています。
国連アカデミック・インパクト(UNAI):国連と世界の大学とを結びパートナーシップを育むものとして2010年11月に潘基文(パン・ギムン)国連事務総長によって発足され、国連アカデミック・インパクトの10原則を支持し促進させるというコミットメントにより、参加を認証。発足以来、世界の大学1000校以上が国連アカデミック・インパクトに参加、日本では創価大学を含め29校(2014年12月現在)が参加。
ASPIRE:“Action by Students to Promote Innovation and Reform through Education”の略。UNAIの10原則をサポートし推進することを目的に世界各国で設立されている学生団体。

GCPでの2年間の成長も素晴らしいですが、留学後の勢いも止まりませんね!

GCP生皆でシュリーマン賞を受賞した記念に

 創価大学に育ててもらったといっても過言ではない自分ですし、教授の方々にも本当にお世話になってきましたので、創大のために、後輩のためにできることは何でもやろうと思ってGCPスタッフやAI、ASPIRE Japanの取り組みも行っています。私は、入学当初は劣等感の塊でした。高校まではサッカー漬けで、まともに勉強をしていませんでしたので、大学では自分を追い込んで勉強しようと決めていました。その思いで挑戦したのが、GCP(グローバル・シティズンシップ・プログラム)という地球市民を育成するための特別なプログラムでした。
 意気込んだものの、すべてが英語のプログラムで、最初は授業で教授が話すことがわからなければ、クラスメイトとのディスカッションにも参加できず、いつもクラスの一番後ろで隠れるようにしていました。ある時、その自分の姿勢を教授に指摘され、このままではいけないと思ったんです。現状を打破するために、私が決めたのは、“恥を捨てること”と“努力の量を増やすこと”でした。英語が聞き取れなくても、一番前に座って聞き取る努力をする。英語が話せなくても、でたらめな英語でもとにかく話し続ける。同期の友人たちとスタディ・グループを作って、1年生と2年生の夏休みは帰省せずに、1日10時間以上の勉強をしました。その結果、2年生の後期には、TOEICのスコアが850点に、気付けば英語で堂々とディスカッションしている自分がいました。

 そして臨んだのが3年次でのフィリピン大学への交換留学でした。1年次にGCPの研修で訪れたフィリピンで見たゴミ山を歩く子供たちの存在に、もう一度フィリピンを訪れたい、子供たちの笑顔のために自分ができることが何なのかを見つけたいとの一心でした。フィリピンでは、スラムで活動するNGOの方々たちとも、フィリピン経済を動かすような大企業のCEOの方々とも交流を持ちました。スラムの子供たちのためにサッカースクールを創設しました。そのために地元の有力者のもとへ10回足を運び、資金援助のお願いもしました。サッカーシューズを履き、サッカーボールを蹴り、笑顔を爆発させる子供たちに、心からの喜びを感じました。“エンターテインメントで世界を変える!”そう心が決まった瞬間でもありました。そのためには、力が必要です。まずは、実現する力をつけたい、そう思い、外資系コンサルティング企業に戦略コンサルタント職で内定を勝ち取りました。
 その後、お世話になった教授からASPIREJAPANの話を伺い、GCPの友人たちと共に参加。時を同じくして、ASPIREJAPANに世界総長会議で行う学生セッションの運営の依頼が届き、創大から参加した自分たち4名を中心に、議題から考えることになりました。議題は、「地球市民」。自分たちがGCPで目指してきたものであり、議論し続けてきたものでした。創価大学創立者の池田先生が1996年にコロンビアティーチャーズカレッジでされた“「地球市民」教育への一考察”との講演を題材に皆で深め合い、企画書を作成し、世界各地を代表して集う学生たちに配信しました。世界総長会議当日は、学生は1部で「地球市民」について語り合い、2部では、総長会議出席者の前で自分たちの議論のまとめを発表しました。学生たちの議論も多様な価値観に触れること自体が大変に貴重な経験であったと共に、自身もファシリテーター(共同議長)として、進行をしたり、第2部では議論のまとめについてファシリテーターとして皆を代表し話しをする機会も得、創大のGCPについても伝えることもできました。

GCPのフィリピン研修にて

世界総長会議での国連広報担当事務次長との話しの中で、国連アカデミック・インパクト(UNAI)への参加はもちろん、取り組みを推進していこうと決意されたそうですね。

世界総長会議での学生セッションの学生たちと

 その前からも、教授陣をはじめ様々な方々から、創価大学がすでに目指し取り組んでいる活動と合致している国連アカデミック・インパクトにしっかりと取り組んでいくべきでは、との話しがありました。自分は、どちらかというと、民間の力で変化を起すことを信じている人間ですので、“国連”についてはあまり関心がありませんでしたが、国連広報担当事務次長のピーター・ラウンスキー氏との話を通し、創価大学で自分が培ってきたもの、また共に学んできた友人たちのことを思えば思うほど、創価大学こそが、この取り組みにおいて、日本でのリーダーシップを取っていくべきだと思うようになりました。加盟することは難しいことではなく、大切なことは学生である自分たちがどう推進していくかでした。そこで、共にASPIREJAPANに参加していた友人たちを中心に、国連アカデミック・インパクトと思いを一つにし、すでに取り組んでいるクラブ団体とも話し、学生ができる取り組みを考え、教授や副学長に伝えました。

 大学は私たち学生の自主性を買ってくれ、国連アカデミック・インパクトへ加盟し、原則6から10に重点的に取り組むことになりました。原則6は『人々の国際市民としての意識を高める』、原則7『平和、紛争解決を促す』、原則8『貧困問題に取り組む』、原則9『持続可能性を推進する』、原則10『異文化間の対話や相互理解を促進し、不寛容を取り除く』です。加盟を受け、本年(2015年)1月にはGlobal Citizenship Weekと題して、国連広報センター根本所長の講演会をかわきりに、創大ですでにAIの原則に沿って活動している団体の中から今回は3団体に参加してもらい、フォーラムを開催。その他展示、そして私が参加した日米学生会議の報告会も開催しました。 創大の大きな特徴である、“学生主体”で大きく国連アカデミック・インパクトを推進し、日本に広げていきたいと思っています。

主催したGlobal Citizenship Weekでの国連広報センター根本所長の講演

日米学生会議は大変に実り多いものだったようですね

日米学生会議の皆と

 昨年(2014年)の8月に、日本の学生を代表し、アメリカで行われた第66回日米学生会議に参加しました。日米学生会議はアメリカの元国務長官のキッシンジャー博士や、元内閣総理大臣宮沢喜一氏や脳科学者の茂木健一郎氏など日米双方、蒼々たる顔ぶれが並ぶOBを輩出し続けている会議です。
 外資系のコンサルティング会社に就職を決めた時から、上司がアメリカ人であることと、これまでのような型にはまった答えの導き方からは脱却しなくてはいけないということが頭にあり、そういう機会を求めていました。そこで見つけたのが日米学生会議でした。80年前、同年代の志高き若者が、悪化していた日米関係の変革を目指して海を渡ったというこの会議の原点に感動し、また、日米学生会議の蒼々たるOBたちの顔ぶれに、自分もこういう環境でもまれたいと志願しました。ともかく、アメリカのトップレベルというような人たちと議論をしたいと思っていましたので、参加するディスカッショングループのテーマも最も感情がぶつかるようなテーマであった「“正義”と“道徳”」を選びました。

 アメリカの価値観に触れたい、それは多様な価値観への欲求でもあり、異なる価値観への欲求でもありました。日米学生会議は20日間に渡って行われましたが、期待通り大激論が繰り広げられ、毎日行われた様々な研修やワークショップ後の夕方から夜中の3時まで、激しい意見のぶつかり合いがありました。「“正義”と“道徳”」とのテーマのもと、LGBT(Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender)、日米のモラル教育の違いについて語り合いました。特に、LGBTについては、当事者がいたこともあり、議論は感情的に、時には席を立ってしまうメンバーも出るほどでした。自分自身がその渦中で大切にし、なおかつ学んだことは、“意見を受け入れる勇気”と“意見を言う勇気”でした。
 どのテーマもYESかNOで議論できるものではなかったわけですが、そうであってもなお、YESかNOのどちらかの立場をとるように言われました。正しいかどうかだけでなく、自分の意見を持ち、伝えることを徹底的にしました。また、多様な意見にしっかりと耳を傾けることは、異なる意見を持つ人たちとの話し合いにおいては大前提であると共に、どこまでも一対一の対話なのだなということも感じました。

日米学生会議OBとの出会いも大変な刺激になったそうですね

日米学生会議でのOBとの懇談会にて

 20日間でアイオワ州デモイン、サンフランシスコ、ニューヨーク、ワシントンD.C.と4ヶ所でOB訪問や研修、ワークショップが行われ、勉強会、フォーラム、レセプションを通して、5000人を超える様々なOB・OGと交流をすることができました。志を持ち、実際に目指した世界で何か成し遂げている方々の言葉の重みが、自身の夢をも後押ししてくれました。まずは自分が進路として決めたコンサルの分野でしっかりと力を付け、全力で取り組んでいくことは前提の上で、私には成し遂げたい夢があります。それは、フィリピン留学で出会った子供たちとの出会いに関係することでもありますが、私はエンターテイメントの力を使って人々や社会に貢献していきたいという夢があります。フィリピンの子供たちとの出会いの中で、彼らを幸福にできるエンターテインメントとは何かを考えさせられました。

 発展途上国の子供たちにも喜んでもらえるエンターテイメントの創出を、エンターテイメントのビジネスモデル革命をというのが、私の夢です。ただ、自分にそんなことができるんだろうかという不安も常に頭にありました。その不安を、出会った日米学生会議OBの方にぶつけた時でした。間髪入れずに“できるよ!”との返答をもらい、自分がなぜエンターテインメントにこだわるのか、なぜエンターテインメントで貢献したいと考えるのかを伝えると、その場で、ご自身の人脈に連絡をしてくれました。“将来、君たちと同じ分野で世界に貢献していきたいと考えている日本の若者がいる。是非、何でも相談に乗ってあげてほしい”と。まさに自分が将来行きたい世界で働いている方々に自分の名前を伝えてくれ、“夢を持ち続けるんだよ”と背中を押してくれました。“足は大地につけて目は希望の未来に向かって”との言葉のように、自分の体の中に一本筋が通ったような爽快な気持ちで、アメリカを経つことができました。

日米学生会議を通し生涯の友に

創価大学の4年間は、竹中さんにとってどのようなものでしたか?

フィリピンの子供達と

 感謝、この言葉に尽きます。GCPでの2年間は本当に苦しく、劣等感に苛まれた日々は忘れることもできませんが、そのお陰で、自分の殻を打ち破ることができました。教授たちは、これでもかと、私たちの目を世界に向けるため、あらゆる機会を使い、世界の舞台に飛び出すように背中を押してくれました。GCP生それぞれが、ノーベル平和賞受章者サミット参加もそうですし、国連関係の数々のサミットやフォーラムにも参加しています。世界を舞台にする企業に就職していく友人たちもいれば、世界的に有名な大学院に進学する友人たち、難関を突破し教育者になる友人たちもいます。日米学生会議で突きつけられた“多様な意見を受け入る勇気を持ち、自分にしか持ち得ない意見を勇気を持って発していくこと”の基礎を、GCPで、また様々な分野で挑戦する創大の友人たちの中で、自分は培ってきたのではないかと思います。GCPは、「地球市民」を育成するためのプログラムです。それは、それぞれが持つ個性を存分に発揮しながら、まだまだ内在する潜在能力を触発し、より大きな目的や夢に向かって挑戦する勇気を与えてくれるものであったと思います。最高の挑戦の4年間でしたし、たくさんのチャンスに恵まれた4年間でした。本当に感謝です。いよいよ現実社会の中で、地球市民として、さらにさらに力をつけながら、殻を破りながら、思う存分自分らしく力を発揮していきます!

たけなか さとし Satoshi Takenaka

[好きな言葉]
「人間としての真の偉大さにいたる道はひとつしかない。何度もひどい目にあうという試練の道だ」(アインシュタイン)
[性格]
誠実/頑固
[趣味]
サッカー、クラリネット演奏
[最近読んだ本]
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(マックス・ウエーバー)
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