日本貿易会懸賞論文で「大賞」を受賞!

シュレスタ・サハデブ 経済学研究科博士後期課程

 一般社団法人「日本貿易会」が2014年度に実施した「第10回日本貿易会懸賞論文」において、日本を含め41カ国・195点集まった論文の中から、最高賞にあたる「大賞」に輝いたシュレスタ・サハデブさん。
 母国ネパールの経済発展に貢献したいとの一心で、創価大学経済学研究科博士後期課程で日々の研究活動に励んでおります(指導教官:ドボルー・フィリップ教授)。そんなサハデブさんの創価大学での学生生活の始まりは、2009年4月に入学した日本語研修課程でした。サハデブさんのこれまでの経験と現在の研究活動について話を聞きました。

日本貿易会

一般社団法人「日本貿易会」は、会員である日本の貿易企業を代表して、日本の貿易が健全に発展できるような環境をつくることを目的に活動している団体です。貿易を行う上での問題に対して、政府や関係機関に意見や要望を提出して、その実現を働きかけています。その他、日本貿易会月報などの定期刊行物や、貿易にかかわるさまざまな研究報告書、書籍を刊行し、セミナーや講演会を開催しています。
日本貿易会賞懸賞論文:一般社団法人「日本貿易会」では、内外の重要課題についての懸賞論文を2005年から募集しています。また、国内外の幅広い層の方々に、商社や貿易に関する理解を深めてもらうことを目的としているため、国籍・年齢などを問わず、日本語もしくは英語で募集を行っており、商社・貿易業界にふさわしいグローバルな企画として実施しています。

「第10回日本貿易会懸賞論文」での大賞のご受賞、おめでとうございます!

第10回日本貿易会懸賞論文、授賞式の様子

 ありがとうございます。昨年(2014年)6月頃、インターネットで論文作成の情報収集をしていたところ、今回の懸賞論文募集のニュースが目に止まりました。過去の懸賞論文大会の審査講評や基準も公開されており、信頼のおける機関でしたので、自分の実力を試そうと応募を決めました。今回の募集では「グローバル経済における“商社”の役割」 と「2020年の日本が持つ“資源”と世界の発展に果たす役割」のテーマうち、どちらかを選択できました。
 これまで私は「商社」の研究を重ねてきたので、「Shosha: Road Map for Future Development(商社:発展のためのロードマップ)」と題した論文をまとめ、日本貿易会に提出しました。

この論文では、激動する世界の中で商社が発展を続けるために必要な要素として、「①イノベーションを軸に、競争力を強化する。②独自のビジネスチャンスの創出から社会貢献にいたるまで、価値創造に集中する。③新しい市場を開拓する。途上国にも順境を示す国があり、アフリカ等、潜在成長率の高いマーケットへの進出を図る。④上記3点を推進するために最も重要である人材の確保」の4点について言及し、これからの商社が展開すべき方向性を提案しました。
 昨年9月に論文を提出し、約3ヶ月後の12月12日に日本貿易会からメールが届きました。その時は、全195点の応募から入選の可能性があるとの通知でした。1年前の第9回懸賞論文では、「大賞」は「該当者なし」でしたので、大賞以外の賞かと予想していました。その後、日本貿易会から12月下旬に「大賞」の通知ととともに、表彰式への出席および代表スピーチの依頼があり、“まさか自分が”と嬉しさよりも驚きの方が大きかったです。

表彰式では受賞者を代表してスピーチを行ったそうですね

今年1月7日、東京都千代田区・ホテルニューオータニで「第10回日本貿易会懸賞論文表彰式」が行なわれました。当日は在日ネパール国大使館の大使や、創価大学の馬場善久学長、高木功日本語・日本文化教育センター長が参加してくださり、私の受賞を一緒に喜んでくださいました。表彰式では、懸賞論文審査委員会の中島厚志委員長より、「論文では、幅広い商社ビジネスに触れており、商社機能がよく理解されています。さらに、自国ネパールの膨大な水力発電資源にも触れるなど、自国や発展途上国の発展への思いも十分伝わります。まさに、大賞にふさわしい論文です」と講評をいただきました。その後、特別賞1名、優秀賞3名、そして私の5名の表彰が行われ、入賞者を代表してスピーチをしました。各国の大使館関係者をはじめ、大勢の方の前で緊張しましたが、支えてくれたネパールの家族や、創価大学の教員の方々への感謝を伝えることができました。今回いただいた「賞金100万円」は、これからの研究活動にあてたいと考えています。

第10回日本貿易会懸賞論文、授賞式の様子

サハデブさんは、なぜ創価大学で学ぼうと思ったのですか

 私はネパールの首都であるカトマンズで育ちました。はじめて創価大学を知ったのは、私がトリブバン大学(ネパール最初の大学1959年設立)の学部生のときです。交換留学制度で創価大学から来ていた日本人学生と知り合い、創価大学の名前を知りました。もともと日本には興味がありましたので、そこで日本の経済や文化などの話を聞く機会があり、日本に興味を持ち始めました。また、兄が創価大学経済学研究科博士後期課程で学んでいたこともあり、「日本で学ぶなら創価大学の環境が一番だよ」とアドバイスを受け、創価大学で学ぼうと決めました。
 トリブバン大学では、英文学と経済学を専攻しており、日本語は全くといっていいほど勉強してきませんでした。2006年にトリブバン大学を卒業後、ネパールの日本語専門学校で2年間にわたって日本語を学び、少しは理解できるようになりました。そして、2009年4月に創価大学日本語研修課程に入学し、創価大学での生活をスタートしました。

これまでを振り返って、創価大学に来てよかったことはありますか

集合写真

 1点目は教員の方々が熱心に教えてくれる点です。私と同じ時期に日本語研修課程に入学した学生は35名おりました。最初に日本語レベルを測る試験があり、そのスコアをもとにクラス分けがありました。私は運よく高いスコアがとれ、一番レベルの高いクラス8名の中に入ってしまいました。周りは私よりも日本語能力に長けており、特に最初の3ヶ月は授業やディスカッションについていくのに必死でした。
平日は毎日午前9時から午後3時の授業を終え、ワールドランゲージセンターや学内食堂でのアルバイトを行い、家に帰ったあと深夜まで机に向かって宿題に取り組む日々でした。逃げ出したくなる時もありましたが、教員の方々が温かくサポートしてくださり、クラスの仲間とともに最後までやり遂げました。そのかいあって、創価大学大学院経済学研究博士前期課程に合格することができました。
 2点目は様々な国の友だちができたことです。創価大学は留学生を本当に大事にしてくれます。大学からの給付奨学金や保険などの制度面の支援も手厚いうえに、留学生と日本人が交流できるイベントや、留学生が思い出に残る交流会なども行われます。そのような機会を通して、世界5大陸にまたがる友と友情を育むことができました。ここまで多くの国の人たちと繋がりができたことは生涯の宝であります。「日本で学ぶなら創価大学の環境が一番だよ」との兄の言葉通りでした。

最後に現在の研究テーマと、将来にむけて一言お願いします

 創価大学経済学研究科博士前期課程では高木功教授の指導のもと、開発経済を中心に研究を進めました。日本の経済成長の歴史や、その中で企業が果たしてきた役割などを学ぶことで、母国ネパールの成長に寄与できると考えたからです。
 現在は、ドボルー・フィリップ教授に指導を仰ぎ、日本企業による外国の企業に対する直接投資(Foreign Direct Investment)について研究しています。直接投資とは、企業が株式取得、工場を建設し事業を行うことを目的として投資することです。また、外国の企業に対して、永続的な権益を取得する(経営を支配する)ことを目的に行われる投資のことを言います。インドや中国、ブラジルの経済成長が進む背景には、「直接投資」の影響が少なからずあります。例えば、インドの自動車産業に目を向ければ、一昔前まで自動車は富裕層に限られた乗り物でした。それが、日本の自動車メーカーであるスズキが良い自動車を安く提供し、インドの自動車市場を開拓しました。それによって、多くの自動車メーカーがインドに参入し、経済が活性化しました。これからの研究活動では、企業が自社の利益に終始せず、内戦や貧困の解決などの社会貢献を通したビジネスモデルのあり方を提唱していきたいです。
 私の母国ネパールには豊富な水資源と観光都市があります。研究者として力をつけ、将来はネパールの経済成長に貢献できる1人になりたいと思います。

本人画像
シュレスタ サハデブ Sherestha Shahadave

[好きな言葉]
虎穴に入らずんば虎子を得ず
[性格]
積極的、優しい
[趣味]
読書、映画、音楽
[最近読んだ本]
Adultery (Author: Paulo Coelho)
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