ヒラリオ・ダビデ フィリピン最高裁判所元長官

ヒラリオ・ダビデ フィリピン最高裁判所元長官

創価大学の第41回、創価女子短期大学の第29回卒業式が3月18日に行われ、席上来賓として出席したフィリピンのヒラリオ・ダビデ最高裁判所元長官(元フィリピン政府国連常駐代表)の祝辞を紹介します。

 太平洋に浮かぶ7000を超える島々からなり、1億人以上の人口を擁する美しき国、そして皆さまが愛する日本のすぐ近くにあるフィリピンから、喜びをもって、ごあいさつさせていただきます!
 はじめに、創価大学・創価女子短期大学の卒業式の講演者として、招待していただき、深く御礼申し上げます。
 今回のお招きに応じた理由は、主に二つあります。
 一つは、この神聖な学舎である創価大学に再び戻ることができるという理由でした。と申しますのも、私は2002年3月15日、池田大作博士の強いご推薦と貴大学の理事会および教学審議会の全会一致の決定により、貴大学の名誉博士号を授与していただきました。
 池田博士は貴大学の創立者であられ、SGI(創価学会インタナショナル)の会長、世界的に著名な仏教哲学者、平和の建設者、教育者、そして国連平和賞など数多くの賞をはじめ、五大州の350を超える大学等からの名誉学術称号の受章者でいらっしゃいます。
 池田博士は、仏教の悟りと智慧を持ち、それを人類の繁栄のために、無私の精神で、全ての人と分かち合ってくださっている、天からのたぐいまれな贈り物です。すぐさま私は博士を師と仰ぐ教え子となり、博士と香峯子夫人に、私と妻とで直接お会いできた時は、忘れがたい感動と喜びに包まれたものです。
 名誉博士号の受章をもって、私は偉大な教育機関である貴大学の誇り高き“卒業生”となりました。

 創価大学には、「人間教育の最高学府たれ」「新しき大文化建設の揺籃たれ」「人類の平和を守るフォートレスたれ」という三つの「建学の精神」があります。
 創立当時、経済学部、法学部、文学部のたった三つの学部、四つの学科で出発した貴大学は、大学院、研究機関、学部、学科を増やしながら、目を見張る、驚異的な大発展を遂げました。
 また、アメリカ創価大学が創立され、さらには、五大州にわたる国際交流の総合的なシステムの確立により、「建学の精神」に裏打ちされた人生を力強く歩む世界市民が輩出されるようになり、よりいっそう国際的な大学となりました。
 この「建学の精神」は、池田博士の言葉を借りるなら、「価値創造」であります。「人性の価値」「生き抜く価値」「勝利の価値」「幸福の価値」を創造することであります。
 私は親愛なる皆さまに敬意を表します。本日、私は名誉博士号をいただいた時にも増して、貴大学の“卒業生”であることを誇りに感じながら、皆さまのもとに帰ってまいりました。
 1975年3月22日、貴大学では613人の前途有望な卒業生たちが、第1回卒業式を迎えていました。

 その卒業生の姿を、池田博士は万感を込めて、このように綴られています。
 「混乱しきったこの世で、この道で、彼らの瞳は、正確に歩みゆく軌道を決して外れない。垢にまみれた心、荒廃の社会にあって、豪華な信念の彼らは、偽善者どもを叩き、正している。彼らの人生は、快楽よりも、崇高な感謝に光っている」と。
 以来、何千、何万もの卒業生が陸続と羽ばたき、今や、ここ日本で、そして世界のあらゆる場所で、あらゆる分野で、人類に奉仕し、民族、肌の色、国籍、文化、宗教、性別、年齢に関係なく、人々の心に触れて、人生に影響を与える存在となっております。卒業生の一人一人が、この創価大学にしかない人間教育の魂と心を掲げ、実践の人生を歩み、生涯にわたり、「建学の精神」の光に導かれているのです。
 創価の卒業生は、人のため、人類の勝利のために、皆の模範となるべく、灯台の明かりとなって輝いています。人類の勝利とは、愛の中にのみ見いだせるものであり、その価値は計り知れません。

 であるからこそ、私は貴大学の「名誉博士号」の授与式の席上、謝辞の中で、このように申し上げたのです。
 「愛とは、まぎれもなく、創価大学の三つの『建学の精神』の心です」と。
 愛を原動力としなければ、人間教育を実現することも、発展させることもできないのです。
 新しい文化は、愛が礎になければ生まれません。そして全ての人の心が愛によって導かれなければ、平和は栄えることはできません。貴大学は愛という美徳と価値にささげられた大学であるがゆえに、その偉大さは、他に類を見ません。
 私は愛こそ、日蓮仏法の心であると思っています。なぜなら、日蓮仏法は「誰人にも仏の無限の力と智慧と慈悲がある」と教えているからです。慈悲こそが、真実の完璧な愛です。そして、キリスト教の教えも同じく、愛を根底にしています。
 創価大学のこのような素晴らしい発展や比類ない実績を見るにつけ、絶え間なく、全力を挙げて、「建学の精神」のビジョンと使命を堅持してこられた、馬場学長をはじめ、貴大学の皆様の、模範的かつ優れたリーダーシップに、称賛とお祝いを申し上げます。
 今回の卒業式のお招きに応じた二つ目の理由は、約3000人の学生の皆さんとお会いできる、またとない機会が得られると思ったからです。
 皆さんはこれから、創価大学で培ったビジョンと使命を胸に、新たな世界市民として、現実社会へ旅立ちます。
 愛する創価大学、創価女子短期大学の卒業生の皆さん!皆さんは神聖なる遺産、つまり、創価大学の「人間主義の教育」「価値創造の教育」という名の遺産を受け継がれたのです。
 1973年4月9日の第3回入学式での、池田博士の感動的な言葉は皆さんに創価教育の遺産を常に思い起こさせることでしょう。

 この神聖な遺産を大事にし、守ること。それが、皆さんの厳粛で、究極の、最重要の責務であります。どうか、この遺産を汚すことや損なうことはしないでください。命を懸けてでも守ってください。今の皆さんがあるのも、この遺産があったればこそだからです。
 さらに皆さんには、やるべきことが以前より増して、たくさんあることを強く申し上げておきます。
 1期生が卒業した1975年と、その後の数年と比べても、世界の様相は、全く異なります。今は恐怖の世界です。試練や悲劇の世界であり、多くの困難な課題に囲まれた世界です。
 特に気候変動により、私たちは、史上最大の台風、洪水、竜巻、地震、火災に見舞われ、多数の死傷者が出たうえ、家屋の破壊、飢餓、病気などの事態が起きています。復興するまでには、大変な苦労と苦痛を伴う長い年月を要するでしょう。フィリピンも日本も自然災害や人災から免れることはありませんでした。
 また皆さんは、世界のあらゆる場所で多くの人々が戦争、内乱、宗教的不寛容、抑圧、迫害、不正などの犠牲になっている年に卒業されます。核戦争の脅威は、いまだ深刻な問題です。私たちは、日本が核廃絶の運動の先頭に立っていること、そして池田博士が長年にわたり、核廃絶を訴え、戦われてきたことを忘れてはなりません。
 皆さんの明白なる使命は、混沌とし、危機的状況におかれたこの世界と、深刻な危険にさらされている人類の前に立ちはだかる挑戦に立ち向かうことです。それは気力をくじくような非常に困難な仕事です。

 弱い者、そして臆病者は、これらの悪と戦うための準備を始めることすらしないでしょう。彼らは単に、この挑戦から逃げるか、諦めるか、あるいは、ふがいない敗北に身をゆだねることでしょう。
 勇敢で心強き人、未来のビジョンを持つ人、人間主義の人、啓発の文化の中で育った人、そして、平和と真実と正義を愛し、掲げる人のみが、人類と世界を救うことができるのです。
 創価大学で受けた教育は、さまざまなカリキュラムや課程を通して、皆さんの中に、人間愛や他者を慈しむ心の美徳を深く刻んでくれました。さらには、人類と世界を救うためには必要なものを、全て備えさせてくれました。
 貴大学の創立に込められた偉人たちの精神、すなわち、牧口常三郎先生、戸田城聖先生、池田博士の精神こそが、皆さんを導く光です。それを道しるべとしていけば、負けるはずがありません。責務を果たせないはずがありません。池田博士を“私たちの歩みを照らす灯火”としていきましょう。
 そして池田博士が、本年の「SGI(創価学会インタナショナル)の日」記念提言「人道の世紀へ 誓いの連帯」で示された、世界平和のビジョンをぜひ継承していってください。
 博士は、そのビジョンの中で、国連憲章の前文に記されている誓約に立ち返ることを訴えています。
 「戦争の惨害から将来の世代を救い」「基本的人権と人間の尊厳および価値」に関する信念を再確認し、「全ての人民の経済的および社会的発達を促進する」ことを呼び掛けているのです。
 また、「政治と経済の再人間化」「エンパワーメント(内発的な力の開花)の連鎖」「差異を超えた友情の拡大」を提案されています。親愛なる卒業生の皆さん、これらは全て「立ち上がり、前進せよ」との博士の呼び掛けなのです。
 未来の世代のために、今日の気候変動の危機を救うために、正義を訴え、戦う一人になるのです。誰もが本来持っている調和の取れた、健全な環境を享受する権利を守る人になるのです、との呼び掛けではないでしょうか。
 どうか皆さんは、世界のあらゆる場所で起きている戦争、内乱、テロ行為、宗教的不寛容、迫害、不正、抑圧、腐敗や汚職を糾弾し、それらに終止符を打つために立ち上がり、前進する一人になっていってください。
 核兵器を廃絶するために立ち上がり、前進する一人になっていってください。
 ゆえに、2015年の卒業生の皆さんは、空高く飛翔していってください。
 あなたが、この地球で空高く飛翔できるよう、創価大学が一人一人を擁護し、支えてくれます。
 この世界をより良い場所へと変革していくのです。何も恐れることはありません。なぜならば、ご両親やあなたを大切に思う人々が常に祈り、支えてくれているからです。そして何よりも、あなたへの愛情はどこまでも不変なのです。
 あなたを大切に思う方々の愛情、祈り、献身的な支えによって、本日の卒業式という重要な佳節を迎えることができたのです。その方々への恩は計り知れません。その方々なくして今のあなたは存在しません。
 私は大切な卒業生の皆さんへ、そしてご両親、ご家族をはじめ、大切な方々へ、心から祝福を贈らせていただきます。
 本日の主役は皆さんです。本日は皆さんの勝利の日です。大変におめでとうございます。
 最後に、池田博士の小説『人間革命』の言葉を贈り、私のあいさつに代えさせていただきます。
 「一人の人間における偉大な人間革命は、やがて一国の宿命の転換をも成し遂げ、さらに全人類の宿命の転換をも可能にする」
 これは、本日ここにいる全ての人に対するメッセージではないでしょうか。
 (日本語で)皆さん、お元気で!