国際援助活動の経験から考えるGlobal Citizenとは?

佐々木 諭 准教授 看護学部
(広報誌「SUN」2015年7月号:「学問探訪」に掲載記事より)

苦しんでいる人たちがいる最前線で 数多くの国際援助活動に携わる

ザンビアの現地スタッフとプロジェクトについて協議を行う。現場の意見を尊重し、少しでも効果の高い取り組みを検討する

看護学部の佐々木准教授は研究者・教育者であるとともに、医療分野での国際援助活動のスペシャリストとして活躍しています。
国際医療NGO「AMDA」のスタッフとして、またJICA(国際協力機構)が派遣する専門家として、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ルワンダ、アフガニスタン、ザンビアなどで難民への医療援助や子供たちの心のケアをはじめ、数多くの国際プロジェクトに携わってきました。

国際援助活動を通じて実感した日本人の強み

「援助をする際に最も大事なのは、相手国の文化や価値観、状況を理解して尊重し、そのうえで我々のノウハウを提供していくことです。こちらのやり方を一方的に押し付けても、相手国に最終的には受け入れてもらえません。例えば医療活動において、イスラム教圏では、女性には必ず女性医師や女性看護師を配することが必要です。その配慮があって初めて、女性が医療サービスを受けることを男性が認めるのです。これは非常に重要なことです」
相手の価値観や目線に合わせて、必要な援助を見極める……。実際には、そう簡単なことではなさそうです。
「私の経験では、日本人はむしろ欧米人よりも得意ですよ。日本人は、現地の行政スタッフも行かない最貧困地域にもいとわず入って人々と交流し、信頼関係を築いてしまう。これは自然に相手と対等に対峙する日本人の特性であり、大いなる強みです。一方、欧米人は国家戦略を策定し、システムを構築することを得意とします。ですから行政や政策の運用には強いですが、それを現地の人が受け入れるためには、現地の人との信頼は欠かせません」

米国国際看護研修の実施を記念 し、サンフランシスコ市より「栄誉認 定証」を受賞

Global Citizenはゴールではなく、 終わりなき挑戦の連続の中にある

フィリピン・キャピトル大学で国際看護研修を実施。学生は多様性を尊重するケ アの重要性を学んだ

現在、佐々木准教授は看護学部でさまざまなプロジェクトを推進しています。フィリピンの医療現場やアメリカの名門看護大学での研修を企画・実施し、またGCPコーディネーターとして、国際的に通用する論理的思考力や高度な政策分析力、問題解決能力を備えた学生の育成にも尽力しています。
「学生には、チャンスがあればぜひ研修や留学に挑戦してほしい。それは、単に語学のためではありません。異なる価値観や文化と触れ合う中で、相手を尊重しつつ心を通わせる。その経験から得られることはたくさんあり、グローバル・マインドはそこから育まれていくのです」

先生はGlobal Citizenとは、どのようなものとお考えでしょうか。
「Global Citizenとは、グローバル・マインドを持ち多様性を尊重しつつ、かつ市民としての責務という視点が加わるものだと思います。よりよい社会を作るためにはどうしたらよいのかと試行錯誤し、少しでも問題を解決していこうとする人です。また、創立者が示唆しているように、それは終わりのない挑戦の連続の中にこそあるものです。そういう生き方こそが、Global Citizenといえるでしょう」

 

佐々木 諭 Satoshi Sasaki
1986年創価大学入学。同大学大学院博士課程修了後、マンチェスター大学大学院で開発経済を専攻。AMDAに所属してボスニア、ルワンダなどで支援に携わった後、JICAの専門家派遣でザンビアへ。2007年新潟大学大学院で医学博士号取得、同大学医歯学総合研究所公衆衛生学分野助教。2010年より創価大学准教授。 専門は国際保健学。
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