低出力レーザーやLEDの光が生物の細胞に与える影響を研究中

(広報誌「SUN」2015年10月号:「学問探訪」に掲載記事より)
緑色の光は細胞を元気にする!? 光と細胞の知られざる関係
レーザーやLEDの光が病気を治療したり、農産物の生育を促進したり、あるいはスポーツ選手の記録を伸ばしたりする。そんな時代が来ることを予感させる研究が木暮信一教授の研究室で行われています。その研究内容とは?
「低出力レーザーやLEDの光を生物の組織や細胞に照射する研究をしています。たとえば、カエルの筋肉を取り出して筋収縮を繰り返すと、通常は10分ほどで筋肉がへたってしまいます。ところが、緑色の光を照射しながらこれをやるとなかなかへたらず、長持ちします。カエルの心臓でも同じような実験をしています。脊髄を切断して脳からの指令が伝わらないようにした心臓は、通常15時間ぐらい自力で拍動するのですが、緑色の光を照射するとそれが20時間ぐらいに延びるのです」
光のパワーはすごい!しかも、さらに興味深いのは、色によって効果が違うことです。
「カエルの心臓の場合、赤色の光を照射すると拍動を続ける時間は10時間ぐらいに減ってしまいます。こうした、数々の実験から、緑色は細胞を元気にし、逆に青色は抑制し、赤色は落ち着かせるといった、全く違う働きがあることがわかってきました」
学生が成果をどんどん出す 木暮研究室に注目
「学生がどんどん成果を出してくれる」と教授が評するように、木暮研究室では院生や学部生たちが光と細胞の関係という未知の分野を解明するために、積極的に実験にチャレンジしています。
「知りたいことがあれば、大学の垣根を越えて他大学の専門家のところまで飛んでいったり、実験に必要だと思えば、新しい試薬を見つけてきたりなど、学生たちの熱意と行動力は驚くほどです。海外の科学誌に論文を発表する学生や、欧州の大学院に進学して博士号を目指す学生もいて、本当に将来が楽しみです」
地球規模の課題も視野に入れて 研究に挑む
今後の研究の方向性や目標について、教えてください。
「光が細胞の中のミトコンドリアを活性化したり、抑制したりすることはわかったので、これからはそのメカニズムを明らかにしていきます。光はいい効果を与えますが、一方であまりよくない効果も与えます。ミトコンドリアにはエネルギーを放出するATPという物質を作る働きがあり、光をあてるとそれが活性化しますが、あてすぎると細胞にダメージを与える活性酸素も増えてしまいます。光のバランス、例えば緑色8割、青色2割というような適切なバランスも見つけたい。そこまでできれば、病気の予防や治療、食糧の安定供給、環境保全、エネルギー問題、スポーツ科学など、あらゆる分野において、この研究が役立つのではないかと考えています」

1973年群馬大学工学部卒業。同大学大学院工学研究科修了後、医学研究科に進み、1979年医学博士取得。創価大学生命科学研究所助教授、ブリティッシュ・コロンビア大学神経学研究所客員研究員などを経て、現在、創価大学理工学部共生創造理工学科教授。