幼い頃からの夢である考古学者を目指して、考古学で最先端のイギリス・オックスフォード大学大学院に進学!

お父さんの影響で、小さい頃から考古学に関する特集番組などを好んで観ていたという酒井さん。「ピラミッドは何のために建設されたのか」といった謎を解明しようとする考古学者の試みや、最新の技術を駆使して引き出される研究成果に心躍らせたという。自身でも近隣の博物館や史跡に足を運び、考古学に関する書籍にも親しんできた。その中で、いつか自分の手で歴史の一部を解明したい、そして人の役に立っていきたいと夢を膨らませてきました。
大学時代は、海外大学院進学を目標に、GCP(グローバル・シティズンシップ・プログラム)で学び、苦手な英語にも徹底して挑戦しました。その結果、1年間で約400点もTOEICのスコアを伸ばし、TOEFL-iBTで97点、IELTSでも7.0点という高得点を獲得しています。3年次の夏にはトルコで遺跡発掘のプロジェクトに参加し、このたび考古学で最先端の研究が行われているイギリス・オックスフォード大学大学院に進学が決まりました。
酒井さんに、学生時代の挑戦、これからについて聞きました。
大学院進学、おめでとうございます!
ありがとうございます。小さい頃からの夢だった考古学者への道を踏み出すことができ、嬉しいです。私が研究したいのは、サハラ以南アフリカの考古学です。この地域を専門にしている考古学者は日本ではほとんどいないのですが、地理的にも歴史的にもアフリカとの関係が深いヨーロッパでは、いくつかの大学や機関で研究が行われています。ドイツやフランスの大学も素晴らしいのですが、環境や教育制度が整っているイギリスでもこの分野で上位を占める5校に出願し、4校から合格を頂くことができました。その中で、特に自分の研究したい分野の教育に強く、また伝統ある世界最高峰の学び舎への憧れもあり、オックスフォード大学大学院への進学を決めました。
今後さらに研究の幅を広げるにあたって、ドイツ語、フランス語、あるいはアフリカの諸言語などが必要になりますので、語学力については更にしっかりと身につけていきたいと思います。
すごいですね。もともとは英語も苦手だったそうですが
そうなんです。高校生の一時期、英語の勉強を疎かにしてしまったことがあり、それ以来一番の苦手となってしまっていました。大学入学当初のTOEICは435点。英語に挑戦しようとGCPに入りましたが、教授の言っていることも、クラスメイトが言っていることもあまり理解できませんでした。課題の指示を聞き取れず、何をしていけばいいか分からないこともありました。そうした状況で精神的にもかなり辛かったのですが、苦手なものに敢えて挑戦しようと決めたので、友人と励まし合いながら何とか踏ん張っていました。
特に、思っていることを言葉にして発することを苦手としていたので、1年次の夏にはそれを克服しようと、思い切ってカナダ・バンクーバーで4週間のホームステイに挑戦しました。
あらゆるコミュニケーションに英語を使わざるを得ない環境に毎日ヘトヘトでしたが、これを乗り越えたことで自信がつき、後期の授業では見違えるように堂々と発言できるようになりました。
GCPを担当してくださっている勘坂泉先生は、きめ細かく一人ひとりの弱点を分析してくださり、どうすればそれを克服できるか熱心にアドバイスしてくださいました。そのアドバイスを信じて必死に取り組む中で、1年次の終わりにはTOEICを810点まで伸ばすことができました。努力が成果に結びついたことは嬉しかったです。GCPの英語では、実際に英語を使ってリサーチやディスカッションを行い、それをレポートや発表にまとめるといったアカデミックな英語を重視しています。
そうした勉強を重ねる中で、TOEICなどの対策に大きな時間を割くことなく、気付けば更に大きく実力と点数を伸ばすことができていました。具体的には、2年次の半ばでiBT97点、3年次4月でTOEIC930点を獲得し、ダ・ヴィンチ賞を受賞することができました。早い段階で英語力を伸ばすことができたので、それ以降は、英語で書かれた様々な文献を読んだり、海外大学院出願の準備を非常にスムーズに進めることができたりと、自分の可能性を広げることができたと思います。
ゼミの林俊雄先生が多くの言語を操りながら考古学の研究をされている姿を見て、自分もドイツ語、フランス語と、使える言語を増やしていく必要性を日々感じています。苦手な英語に挑戦した経験はこれからの挑戦で必ず活きると思います。
1年でTOEICが400点アップですか?!
そうですね。GCPのプログラムというのは、それだけ力がつけられ、その分大変だということです(笑)。英語だけでなく、課題解決型のグループワークに取り組む授業や、数理的処理能力を養うための授業もあります。更に、それぞれが自身の学部の授業でも真剣に学んでいます。そのため勉強量も非常に多いですが、やれば確実に力が付く、計算され尽くした量と質なんだと、後になると良くわかります。
受講している時はかなり忙しい日々ではありますが、先生方も学生の力を伸ばそうと真剣に指導してくださるので、その熱意に応えようと頑張れました。そして何より、どんなに難しい状況にあっても「それを突破してみせる」と思える強さが身につきました。
今でも壁にぶつかるたびに思い出すのは、勘坂先生から言われた「悔しさを忘れないことが大事だよ」との一言です。GCPの2年間も終わりに差し掛かったある時、勘坂先生があるスコットランド人と話す機会を作ってくださいました。この頃には英語の授業で不自由なく議論できていたので、自信をもってその方との話を楽しみました。ところが、その会話のあとで勘坂先生から「今の方の話、理解できた?」と尋ねられました。そして、質問と答えが噛み合わないまま相手の方が会話を続けてくれていたのだと気付きました。
スコットランド独特のアクセントに不慣れで聞き取りづらい部分があっても、文脈で補って理解しているつもりでしたが、それが通用していなかったと知りショックでした。GCPでの薫陶の結果iBT97点を取れたことは、単に通過点であり、世界に通用する英語へのスタートに過ぎないのだと改めて思い知らされました。その時に言われたのが、「悔しさを忘れないことが大事だよ」との励ましでした。以来、この悔しさをバネに改めて英語に真剣に取り組むとともに、様々な場面で“出来ない悔しさ”を大切にして少しずつ成長することができました。
このようにGCPで真剣に学んだ2年間のお陰で、海外の大学院に挑戦できる力や、自身を更に高めていく姿勢を身につけることができ、本当に感謝しています。
大学時代にはカナダやトルコにも行かれていますね。
それぞれ短期間ではありましたが、語学以上に、多様な世界に触れられたことが何よりもの財産だったと思っています。1年次の夏休みにカナダでホームステイをし、サウジアラビア、中国、韓国、ブラジルからの学生達との共同生活をしました。サウジアラビアの学生たちは丁度ラマダンの時期で断食をしていましたが、日が暮れると断食は終わりです。そして、フィリピン人のホストマザーとカナダ人のホストファザーとともに食卓につき、多国籍な夕食を楽しみました。また、ちょうどその頃は尖閣諸島の問題がメディアで大きく取り上げられていた時期で、中国や韓国の学生たちとの関係に不安もありましたが、良い友情を築くことができました。
カナダはアメリカ以上に多民族や多文化が共生している国です。そういった環境で、本やインターネットを通して見るのとは違った一人ひとりの生の姿を目の当たりにすることができたのは大変有意義であったと思います。
トルコには3年次の夏に行きました。日本の公益財団法人である「中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所」が公募していたフィールドコースで、発掘調査に参加しました。未来の考古学を担う人材を育成しようというプログラムなので、発掘調査に関わる一連の作業を経験することができ、正直大変だなと思うことも多かったです。しかし同時に、考古学の面白さも強く感じることができ、生涯に渡って携わっていきたいと決意をする機会となりました。
トルコでもまた、自分とは異なる価値観をもつ人との交流をもつことができました。作業の合間には、現場で働いているトルコ人の学生と宗教や生き方について腹を割って話すことができ、その中で、相手が大切にするものを尊重する度量を育むことができたと思います。将来は、様々な背景を持った人々と共に作業をし、研究を進めていくことになりますので、さらに大きく開かれた自分へとなっていけるよう努めていきたいと思っています。
楽しみですね!最後にこれからについて聞かせてください。

まずは、アフリカ考古学の研究に情熱を注ぎ、修士号、そして博士号を取得したいと思います。将来的には日本に戻り、アフリカ考古学の研究を続けながら講演や執筆活動等にも携わって、サハラ以南アフリカの歴史や文化、人々について多くの方々に伝えていきたいです。
夢は、世界史の教科書を書きかえるような仕事をすることです。サハラ以南アフリカの歴史と言ったときに、多くの方が思い浮かべるのは人類誕生と奴隷貿易だと思います。しかし、その間の数百万年に渡って繰り広げられた人々の生活については、教科書にもほとんど書かれていませんし、日本で触れる機会は非常に少ないです。これでは植民地時代以来の、「アフリカに歴史はない」という偏見が形を変えて現在も残っていると言わざるを得ません。そうした見方を乗り越えて、ヨーロッパや西アジア、中国と同じく、サハラ以南アフリカにも豊かな歴史があることを多くの方に知ってもらい、また関心を持ってほしいと感じています。世界史の教科書というのは、その象徴のようなものです。私の研究を通して、いつか植民地化以前のアフリカについての記述が、世界史の教科書で何ページも割かれるような日が来たら嬉しいなと思っています。
歴史の事実を明らかにすることは、時に、一民族を救うことにもなりますし、人々の偏見を覆すことにもなります。創価大学にも、ユネスコが消滅危機言語に認定している北アフリカのベルベル語を研究し、歴史から消えようとしていた言語とその民族の誇りを復活させた石原忠佳先生や、近年まで発掘されてこなかった庶民の言葉であるガンダーラ語で書かれた大乗仏教の写本を、2000年もの時を経て解読されている辛島静志先生がいます。
発掘作業は地道であり、そこに意味を見いだす研究もまた、地味で、並々ならぬ根気を必要とします。しかし、その成果は教科書を書き変え、偏見に苦しむ人々を救うほどの影響力を持つと信じています。時には苦しいこともあると思いますが、夢に向かって挑戦しぬいていきます!

[好きな言葉]
- 「さあ出発しよう!悪戦苦闘を突き抜けて!」(ホイットマン)
- 「真の優等生とは、『母校を愛し続ける人』である。
- 『同窓の友を、一生涯大切にし続ける人』である」(創立者)
- 好奇心旺盛、負けず嫌い
- 博物館/大学食堂めぐり、音楽
- 池田潔著『自由と規律』