「人間としての成長に近道はない」人生の指針を胸に、ひたすらに前へ
国際法や紛争を研究する学者のお父さんの影響で幼いころから戦争と平和に関心を持っていた中山さんが高校時代に出会ったのはカントの哲学でした。哲学書をむさぼるように読み、“正義とはなにか”を模索し、高校2年生の時に日本代表として国際哲学オリンピックに出場しました。そんな中山さんが本学で勉強していたのは法律と政治。現実の世界では正義がどのように守られているのか、もしくは守られていないのかを研究したといいます。4年次には大学を休学し、バングラデシュで実際に現地の企業でシステム開発のプロジェクトマネージャーとして働きながら世界最貧国の現状を見ました。そんな中山さんが卒業後、進路として選んだのは世界ビッグ4の一つに数えられるグローバルコンサルティングファームでITコンサルタントとして働くこと。途上国の政府機能にITシステムを導入することにより、貧困を生み出す社会構造を変えることを将来の目標として、新たなステージで挑戦を開始しています。
また、中山さんは在学中、友人たちと学内にリーダーシップ・プラットフォーム(LP)という組織を設立し、LPの活動の延長線上でカルフォルニア拠点のインターネット大学であるリーダーシップ研究大学の研究員になり、網あづさ主任教授と共著で本も出版しました。今回は中山さんの考える“リーダーシップ”やバングラデシュでの日々など在学中の取り組みについて話を聞きました。
まずは本の発刊、おめでとうございました!
ありがとうございます。リーダーシップ研究大学の網先生と共著で「12のリーダーシップストーリー~課題は状況対応リーダーシップで乗り切れ~」を本年1月生産性出版から発刊しました。
リーダーシップ・プラットフォームでの活動、そしてバングラデシュのプロジェクトを通して確信した“誰もがリーダーシップを発揮できる”というメッセージを伝えることを目的として出版しました。日本では、リーダーシップというと、管理職の人や特定の地位にいる人が発揮するものというイメージが強いですが、そのようなポジションパワーがなくてもリーダーシップを取ることは可能です。なぜならば、リーダーシップは自分で体得することができるスキルだからです。
同書では、本学の小川優さんのストーリーも紹介されていますね。
小川さんはリーダーシップ・プラットフォームで共に学んだ仲間です。昨年2015年は国際女性会議Girls20に日本代表として参加しました。また、Girls20参加に先駆けて行った南アフリカでのインターンシップではリーダーシップ理論を活かしてプロジェクトを成功させています。
リーダーシップ理論を見事に実践の場で活かしてくれたことを嬉しく思っています。
ところで、学外でリーダーシップに関するセミナー講師も務められたことがあるとのことで、誌上講義として、リーダーシップの考え方の基礎をお話いただけないでしょうか。。。
わかりました。先ほども少し説明しましたが、リーダーシップはスキルです。ですので、理論を理解したうえで実践に活かせば、誰でも、周りの人間を変えることができるのです。
リーダーシップ・プラットフォームで私達が学んでいた理論の一つに「状況対応リーダーシップ」というものがあります。これは、人を育てるためのリーダーシップ理論の一つで、ある一つのタスクに対するフォロワーの能力と意欲や自信を定量的に測定し、その状態(readiness)に最も適したリーダーシップスタイルを選択するというものです。
具体例を挙げると、私がバングラデシュで働いていた時、担当していたシステム開発のプロジェクトで二つのタスクがあり、それを一人の女性バングラデシュ人エンジニアにやってもらう必要がありました。しかし、Aというタスクに関しては、彼女は能力も意欲も十分でしたが、Bというタスクに関してははじめての経験だったことから能力も自信もあまり無い状態でした。
ここで両方のタスクに対する指示を同じように行ってしまってはどちらかのタスクを遅延させてしまったり成果物の品質を落としたりする可能性が高まり、結果としてフォロワーからの信頼も失うというリーダーシップの失敗が起こります。ゆえにリーダーは理論に照らしてフォロワーのタスクごとのレディネスに合致するリーダーシップスタイルをとる必要があり、私自身も実際のバングラデシュでのプロジェクトでその点を意識していました。
バングラデシュではノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス博士とお話しされたそうですね
はい。グラミン銀行を設立し、貧困に苦しむ人々に無担保・低金利で少額融資をするビジネスモデルを開発したユヌス博士から直接リーダーシップについて教えていただける機会がありました。博士から教えて頂いたことは、人を率いるためのリーダーシップとして“あるべき姿(To be)”を示すことが重要であるという点です。
チームとしてプロジェクトをまわすとき、作業が細かくなってくるとつい視野が狭くなってしまい、プロジェクトの本来の目的やゴールとしてのあるべき姿から乖離した方向に向かっていることに気付かないことがあります。だからこそ鳥のような俯瞰的な視点からチームメンバーをTo beに立ち返らせるリーダーシップが必要なのです。この点はコンサルタントとして働き始めた今、特に意識しているポイントです。
最後に一言どうぞ。
創大での5年間は非常に密度の濃い時間でした。卒業後コンサルタントとしてキャリアをスタートさせましたが、ここまで来るまでには本当にたくさんの回り道や失敗がありました。きっとこれからも数えきれないほどの挫折を経験すると思います。しかし、過去と未来に思いを巡らす時、思い出す創立者の言葉があります。
それは「人間としての成長に近道はない」との指導です。思い返せば、あのときの失敗がなければ今の自分は存在しないと思えることが数多くあります。これからもすべての挑戦と挫折を糧にひたすらに前に進んでいきます。
[好きな言葉]
人間としての成長に近道はない
[性格]
努力家
[趣味]
テニス、読書、旅
[最近読んだ本]
ハーバード・ケネディスクールでは、何をどう教えているか