職業は航海士。48歳で通信教育部に入学を決意!「通教での学びは楽しいことばかりでした!」

山岡 恵一 法学部法律学科通信教育課程 2015年度卒業

「私よりも30歳も年上の人が同じクラスにいるんです。私なんかまだまだ若い方でした」―そう語るのは山岡さん。普段は、独立行政法人海技教育機構の練習船の二等航海士として、船の運航と実習生の教育に携わっています。
山岡さんは、今春、2016年3月に創価大学法学部法律学科通信教育課程を卒業しました。本年で開学40周年を迎え、これまで約18,000人の卒業生を輩出してきた創価大学通信教育部(以下、「通教」という)。その通教での学びの魅力や仕事との両立で工夫したことなどを山岡さんに聞きました。

普段のお仕事について教えてください!

操舵手時代、フィリピン人の実習生と
操舵手時代、フィリピン人の実習生と

 今年の4月に航海訓練所から名称が変更になった独立行政法人海技教育機構に勤務しています。船員養成のための教育機関です。海員学校を卒業し、前身の運輸省航海訓練所に就職した私は、甲板員として日本丸や海王丸という帆船の高いマストに登り、索具や船体の整備をしたり、帆を作成したり、操舵手として舵を取ったりする仕事に従事していました。

 私の職場では、これまで大学卒業資格がないと航海士になれなかったのですが、2012年に私のような海員学校卒業生にも航海士になる道が開かれ、私が第1号の航海士になりました。航海士とは船で港と港を結び、安全に人や貨物を届ける仕事です。この航海士になるには陸上勤務を経験する必要があり、そのタイミングで「創価大学の通教で学ぼう」と決意しました。2011年、48歳の時です。

山岡さんが甲板員として初めて乗船したマザーシップ初代日本丸
山岡さんが甲板員として初めて乗船したマザーシップ初代日本丸

48歳での入学。不安はありませんでしたか?

教官として後輩の育成に尽力
教官として後輩の育成に尽力

 私は中学校を卒業後、海員学校に進学しましたが、若いころから大学で学びたいという思いが強く、憧れていました。創価大学創立者の人間教育の理念に共感し、陸上勤務のタイミングで決断して始めました。教育学部にしようか、法学部にしようか迷ったのですが、法律は日常生活のあらゆる分野、もちろん、船の仕事にも関わってきます。また、創価大学の通教を卒業した先輩の勧めもあって、法学部に進学することにしました。これが結果的にとても良かったのです。法律の条文や判例をもとにレポートを書くにあたって、自分の考えを論理的にまとめる―そういったものの考え方は自分にあっていました。
 一方で、法律の人間的な側面、法律はもっと冷たいものだと思ったらそうでもないし、逆に意外と力がなかったりする部分もあったりする。その辺が面白いなと思いました。法学部で学んで、リーガルマインドというのでしょうか、ものを考えたり、話をしたりする時も、論理的、客観的にバランスよく考えることができるようになりました。船の世界にも法律があって、権利義務や規制に関することが主なものですが、法学部で学んだことによって、法律の根本的な考え方みたいなところがわかってきました。とても役に立っています。

通教の学びに挑戦する中で苦労したことはどのようなことでしたか?

 乗船中のレポート作成ですね。法律の資料がなく、寄港地の図書館に行って資料を閲覧したこともありました。共通科目では教科書を読み込めばレポートが書けたのですが、専門科目でレポートを書こうとすると、関連する本をいくつか読まないといけません。休暇期間中はいいのですが、一度海にでると本が手に入るのは、港に寄った時だけです。限られた時間の中で本を借り、必要な箇所だけコピーを取るなどしていました。苦労した点というと、実はこのことくらいで、あとは楽しくて仕方なかったです(笑)。
 私もそうでしたが、若い時にする勉強は嫌いな人が多いんじゃないですか。通教で一生懸命勉強している人は年をとっている人が多いようです。私も年をとって勉強する意味がわかりました。学ぶ目的、理由があるから学びに来ている。だから、本当に楽しかったです。

練習船の出航前に
練習船の出航前に

楽しくして仕方がない通教の魅力について教えてもらえますか。

スクーリングで学友と
スクーリングで学友と

 先生方のスクーリングでの講義はどれも素晴らしく、毎回楽しみでした。労働法の岡部先生は、レポートの添削後のコメントが温かく、毎回励まされていました。スクーリングの授業も熱く、授業で扱う法律の歴史的な背景などと合わせて説明してもらったので、理解が深まりました。また、加賀先生の授業では、難しい会社法の概念をとてもわかり易く教えてもらいました。挙げればきりが無いのですが、スクーリングで出会った先生方は皆さん、情熱的で個性的、そして、とても優しい方ばかりでした。
 スクーリングでは、学友との出会いも醍醐味です。英会話の授業はコミュニケーションをとる授業で交友関係が広がりました。クラスの皆で食事に行ったりしました。今も繋がっていて、フェイスブックで連絡を取り合っています。皆、年齢も、キャリアも違います。だからこそ、スクーリングでの教員や学友との出会いが、通教の大きな魅力だと思います。中には、普通のおばちゃんかと思ったら、法律にすごく詳しくて、授業中の質問が鋭く、この人は何者なんだと思った人もいました(笑)。通教生は入学試験を受けているわけではないので、学力に幅があり、教える先生方は本当に大変だと思います。それでもわかりやすく、学部レベルの内容の授業をするわけです。これはすごいことです。その授業を体験し、非常に感心しました。

仕事との両立で工夫した点を教えてください。

1年のうち9カ月乗船、3カ月休暇の勤務形態を生かしました。休暇中、集中的にスクーリングに参加し、レポート作成に取り組んでました。もちろん、乗船中も勉強を継続していました。教科書は少しずつ目を通して、仕事しながら1日1時間と決めて勉強するような時期もありましたが、やはりレポート作成は、休日に家の近くにあるコミュニティーセンターを活用し勉強しました。図書館ほど人も多くないし、夏は冷房も効いているので、家ではなくて、ずーっとそこで勉強をしていました。

大変だった科目はありましたか?

 北先生の「一般経済史」のレポートが大変でした。結構頑張って書いたレポートに厳しいコメントがついて戻ってきました(笑)。どんな厳しい先生なんだろうと思いながら、スクーリングで授業を受けてみると、とても面白かったのです。法学部のレポートの書き方は、割りと自分の考えに合っていたのですが、経済学部のレポートの書き方は違うのかなと思いました。スクーリングを受けているうちに、コツがわかってきて、2つ目のレポートを真剣に書いて出しました。そのレポートがA評価。先生のコメントに「素晴らしい」と書いてあったんです。これは嬉しかったです。このレポートが一番大変でしたし、時間もかけました。私が、通教で学ぶにあたり、「ただ、勉強ができればそれでいい」という気持ちから、「どうせやるなら一生懸命やろう」と思ったのは、先生方とのレポートやスクーリングでのやりとりがきっかけでした。
 卒業時に首席賞をいただきました。海に出ていたので、妻経由でその連絡をもらったときは、本当に嬉しかったです。卒業式当日に、代表で証書を受け取るなんて、こんな光栄なことがあるとは思ってもみなかったです。

卒業後、通教の学びが仕事や人生に活かせていると感じることがあれば教えてください。

 先生方の学問に取り組む姿勢から学び方を教わりました。自分も今は航海科の教官をしており、実習生に講義をする立場です。通教の先生方の1日ぶっ通しの講義から、いろんな教授法を学ぶことができ、仕事に活かしています。教官として、教えている時に「俺も大学の通教で勉強している」と言うとびっくりされました。「皆と一緒で試験も受けてんで」と言っています。「俺も若いうちは勉強が嫌だったけど、年をとったら勉強したくなるよ」と伝えています。何十年後かにわかってくれるといいなと思っています(笑)。
 また、リーガルマインドは、物事を考える上で非常に有効です。船に関わる国際的な規則、環境問題や労働関係、交通関係の規則も時代に即して変化があります。これらを理解するうえで、法律を学んだことが活きています。また、体系的に法律が学べて、視野が広がり、ものの見方に幅が出たと思います。

船の入港作業のオペレーション
船の入港作業のオペレーション

今後の展望について教えてください!

世界船員教育者会議での発表
世界船員教育者会議での発表

 大学院に進みたいと思っています。実は、一級海技士(航海士免許資格の1つ)の試験があって、これを来年の3月に受けようと思っているんです。この試験が終わってから、大学院進学を考えようかなと。先輩にもそういった進路の人がいます。通教生の中には、卒業後、他の学部を受ける方も多いです。それもいいなと思っていますが、私は違う道を考えています。まだぼんやりですが。

通教を始めるかどうか、悩んでいる方へメッセージをお願いします!

 交流のある船会社の船員で悩んでいた人がいて、私が比較的楽しそうにやっている姿を見て、今年から創価大学の通教を始めた人がいます。今、通教の仕組みも変わって、サポート体制がさらに充実していいなと思います。だから、やらない手はありません(笑)。創価大学ならではの「人間教育論」など、他の大学ではあまり聞けないような授業もあります。また、通教の卒業生が在学生を応援するなど、自分たちの手で大学を作っていくという思いが強く、非常に良い雰囲気です。私も、入学当初、本当にできるのかなと思っていました。しかし、やると決めてしまえば、智恵もわいて、時間も工夫できます。私は卒業に5年かかりました。二級海技士の口述試験があったので、通教の勉強を1年間きっぱり休みました。試験に合格してから卒業に向かって、一気に勉強をしたといった感じです。
 仕事との両立で始めることについて悩みましたが、やると決めれば道は開けるものです。創価大学は人間主義という創立者の理念が息づいている素晴らしい大学です。素晴らしい先生方のご指導で学べて、本当に良かったと思っています。通信教育は、自分を大きく開くチャンスです。勇気を出して、一歩前に踏み出してみてください!

学友とA棟ブロンズ像の前で
学友とA棟ブロンズ像の前で
やまおか けいいち Keiichi Yamaoka

[好きな言葉]
スマートで目先が利いて几帳面 負けじ魂 これぞ船乗り
[性格]
負けず嫌い、まじめ、短気
[趣味]
ウォーキングしながら写真を撮ること
[最近読んだ本]
裁判百年史ものがたり
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