篠宮紀彦教授「ネットワークの技術を環境汚染対策、農業対策、独居老人の見守りなどに役立てるシステムを研究中」

(広報誌「SUN」2016年10月号:「学問探訪」に掲載記事より)
安全なネットワークがあるから、LINEやFacebookもできる
もはや私たちの生活になくてはならないインターネット。情報検索、文字や画像の送受信などが瞬時にできるのは、コンピュータやスマートフォン、サーバーなどをつないでいるネットワークがあるからですが、ネットワークをつなぐ技術を研究しているのが篠宮紀彦教授の研究室です。
「目には見えませんが、パソコンやスマートフォンの画面の向こう側では、膨大な情報のやりとりが行われています。しかし、常に外部からの攻撃、電磁波の影響などを受け、ときに切れたりすることもあります。こうした問題を解決しながら、情報が正確に伝わる安全・ 安心なネットワークを設計することを大きな研究テーマにしています」
農業から福祉、発展途上国支援までを見据えた研究にもチャレンジ
応用研究も数多く手がけています。そのひとつが、自然環境モニタリングシステム。ネットワークの技術を使って、遠隔地の水質や土壌の汚染物質などを常時監視し、異変が起きたら瞬時に知らせるシステムです。これを農業支援に活用する研究も進行中。
「大学周辺の農家さんに協力していただき、畑にセンサー付きの光ファイバーを設置して、それをネットワークでつないで研究室のコンピュータへ送るシステムを作っています。水やりや肥料といった管理は、個人の長年の勘で行われている部分が大きいのですが、データを蓄積して分析すれば、勘を数値化できます。勘に頼らずに、作物の品質管理をしたり、出来高を増やすことができるようになれば、新しく農業を始める若い人に対する大きな支援になるはずです。さらには、日本の農業のノウハウをシステムごと発展途上国に輸出することも可能になると考えています」
また、プライバシー保護のためにカメラは使わないというコンセプトで「独居老人の見守りサービス」のシステムも開発中。研究の応用範囲は限りなく広がりそうです。
成功体験を重ねながら 自信とスキルを身に付けていく学生
研究室の学部生・大学院生は約30名。学部4年生のほとんどが大学院に進み、修士課程修了後に就職します。
「学生は4チームに分かれて研究しています。学生が“この課題、難しそうだ→自分 にできるかな?→あ、少しできた!→次はもっとうまくやろう!”というように自信とスキルを身に付けながら成長していけるような指導を心がけています。また、広い視野でものを見て、どこにどういう問題があるのか、それを解決するために自分は何をすべきか。こうしたことを常に考えることを学生に求めています。なぜなら、日本の産業は大きな転換期で、単に物を作って売るのではなく、作った物を組み合わせて大きなシステムを作って売っていかないと生き残れない時代になっているからです。研究室での経験は就職活動や仕事をしていくうえでもきっと役立つはずです。卒業生も頻繁に研究室に来て、学生の研究や進路の相談にのるなど、サポートをしてくれています」

東京都生まれ。1995年創価大学工学部卒業。2000 年(株)富士通研究所 ネットワークシステム研究所入社。2001年創価大学大学院工学研究科情報システム学専攻博士後期課程修了。2005年創価大学工学部専任講師。2009年創価大学工学部准教授。2014年米国テキサス大学ダラス校客員研究員。2015年より創価大学理工学部教授。研究分野は情報通信ネッ トワーク設計理論、グラフ・ネットワーク理論。