「地域の中で全ての人が当たり前の生活をするためのシステム」をどのように構築するかが研究課題

和田 光一 教授 文学部 人間学科
(広報誌「SUN」2017年1月号:「学問探訪」に掲載記事より)

段差などをなくす“バリアフリー”から、 誰もが使える“ユニバーサルデザイン”へ

子供の貧困・非行・虐待、バリアフリーや高齢者の介護…。私たちの周りには様々な社会問題がありますが、学問的アプローチによって問題解決に取り組んでいるのが、和田光一教授です。
「地域の中で全ての人が当り前に生活できることが、本来の社会の姿であるという考え方をノーマライゼーションといいます。また、世の中にはいろいろな人がおり、社会的弱者を排除するのではなく、包み込むように一緒に生きていくという考え方をソーシャルインクルージョンといいます。これらを具体化するのが福祉であり、そのための研究が私の仕事です」

福祉の視点から、“まちづくり”にかかわることも。
「建物の段差などをスロープ化したりすることをバリアフリーといいますが、最近はユニバーサルデザインといって、最初から誰もが使えるものを作ろうという考え方になっています。誰もが住みやすいまちづくりをするための提案をしています」

福祉研究は“行動の科学”。現場へ行き実感することが大事

福祉の研究は“行動の科学”といわれているそうです。困っている人などがいる現場に行き、その行動を自分も体験・実感しながら分析をする。その上で、どのようなシステムをつくれば問題が少なくなるのかを考えることが研究の基本だといいます。
「授業でも、例えば『障害者福祉論』では、学生が車いすを使ったり、目隠しをして白杖を使ったりして、大学内や学外を歩いてみます。そうしてバリアをチェッ クし、各自の実感をもとに、改善策をみんなで議論してまとめていきます。また、私のゼミ(社会福祉専修)の学生は福祉施設での4週間の実習が必須です。現場を知ることで、問題意識が高まり、見違えるようにみんな成長しますよ」

卒論では、各自が研究テーマを決め、それぞれの現場で調査を行います。中には、日雇い労働者の低賃金の問題に迫るため、10日間にわたり聞き取り調査を行い卒論をまとめた学生もいたそうです。

社会福祉士試験の合格率は、 私立大学で2年連続「第1位」 !

和田先生のゼミからは、国家資格である社会福祉士の合格者が毎年多数輩出されています。2016年の試験では11名(既 卒が1名)が合格し、合格率は68.8%(全国平均は 26.2%)。私立大学で2年連続第1位という快挙を達成しました。その秘訣は?
「対策講座を開いて支援しているのもありますが、学生がよく勉強するからです。資格を取得して、福祉の現場で働きたいというモチベーションが高いのです」

社会福祉士は、高齢者や障害を持った人などやその家族の相談にのり、助言を行うための資格です。就職先は、公務員(福祉職)や社会福祉 協議会、病院(医療ソーシャルワーカー)など。
「人が好きであること。そして、“心は熱く、頭は冷静に”ができる人が向いています。正義感だけではできず、ケースバイケースで対応しなければならない大変な仕事ですが、やりがいがあります」

 

和田 光一 Koichi Wada
1976年駒澤大学大学院 人文科学研究科 社会学専攻修了。東京都職員として児童施設・障害者施設の指導員、補装具研究所・福祉機器総合センター・高齢者研究・福祉振興財団などの主任研究員を務めたのち、つくば国際大学へ。2002年より本学に勤務。研究テーマは「ノーマライゼーションと地域社会」。介護保険の制定にかかわったり、府中市福祉のまちづくり推進審議会会長、東京都福祉保健財団福祉用具選定委員会委員長なども務める。
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