蓄積された政治理論に立ち返ることで問題を明確にし、「より深い民主主義」を追究することが研究課題

山田 竜作 教授 国際教養学部
(広報誌「SUN」2017年4月号:「学問探訪」に掲載記事より)

責任ある行動をとれる“市民”に。 政治学はその糧に

山田教授の専門は政治学。現代民主主義理論や政治思想などについて研究しています。研究成果を海外で発表する機会も多く、最近ではイギリス政治学会(PSA)で研究発表を行ったり、国際専門誌に論文が掲載されたりしています。普段は、国際教養学部の教授として政治理論の講義を担当。授業はもちろん英語です。
「政治学は、これから“市民”になっていく学生に是非学んでほしい学問です。“市民”とは、民主主義について 考え、判断し、責任ある行動をする人と言えますが、その意味が本当に分かるのは、社会人になって苦労してからかもしれません。それを学生に英語で教えるのはなかなか難しいのですが、政治学に興味を持ってもらえるようにと授業をしています」

研究者としての思いは、 「民主主義をもっと深めたい」

山田教授が研究を通じて追究しているのは「民主主義をもっと深める」ことです。
「民主主義というと、代議制や参政権などの言葉が浮かぶかもしれませんが、制度が整っても民主主義の完成ではありません。民主主義を掲げている国でも、男女差別や経済格差など不平等があり、差別や抑圧を受ける側から見ると決して民主的な社会とは言えない。もっと民主化する余地があるわけです。そこで意味を持つのが、ラディカル・デモクラシーという考え方です」
ラディカル・デモクラシーとは、民主主義をより徹底化させようというもの。いろいろな議論が含まれますが、中でも注目されるのは、しっかりした対話を重視する熟議民主主義だそうです。
「例えば、議会制民主主義では多数決でものごとを決めますが、そもそも多数決は民主的なのかという疑問はついてまわります。だとすれば、最終的には多数決で決めるとしても、そこに至るまでに熟議することを大事にしようという考え方です。その意見や政策がなぜ良いのかという根拠を示し、反対意見にも耳を傾ける。数より先に、根拠の強さを競い合うように変わっていけば、 民主主義はもっと鍛えられていくでしょう」

母語で思考訓練をして 深く考える力を付ける

山田教授のゼミは現在、3年生が6人、4 年生が5人。3年生の後半には卒論テーマを決め、執筆準備にとりかかります。卒論は英語で書きますが、山田教授は日本語の本を存分に読むことも奨励しています。
「ものごとをより深く理解するためには、母語で書かれた文献をたくさん読むべきだと考えています。国際教養学部の強みは、英語と母語の両方で専門書や資料を読みこなせることです。専門用語を理解し、筋道立てて考えるという思考訓 練を母語でしっかり行ってこそ、英語での議論も深まります」

日々接するニュースも、現象をただ追うだけではなく、背景 や文脈をとらえることが大事だとも言います。
「移民や経済格差などの問題にしても、それはいつから起 きたのか?以前にもあったことなのか?前と今とはどこが共 通でどこが違うのか、などという視点がないと、何が問題なの かが見えてきません。広く浅い知識ではなく、理論と歴史を ふまえ深く考えられる人こそ、教養のある人と言えます。世界 で通用する人になるために、英語力と共に本物の教養を身 に付けてほしいと願っています」
 

山田 竜作 Ryusaku Yamada
1989年日本大学国際関係学部卒業。1992年日本大学大学院国際関係研究科修士課程修了。八戸大学商学部専任講師、日本大学国際関係学部専任講師を経て、2003年英国シェフィールド大学大学院社会科学研究科Ph.D.(政治理論)取得。2004年日本大学国際関係学部准教授、2012年創価大学学士課程教育機構准教授。2014年より創価大学国際教養学部教授。
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