「自分にしかできないことがある」陸上選手からマネージャーへ転向。―「箱根駅伝シード権獲得」を目指してチーム一丸!

市来 栄一 法学部法律学科4年

「箱根路を走る!」と創価大学陸上競技部駅伝部へ選手として入学したものの、怪我に悩まされ4年生でマネージャーへ転向した市来栄一さん。「マネージャーになっても箱根への思いは変わりません」と練習や試合に向け、喜々として日々奮闘する。
全日本大学駅伝対校選手権大会関東地区選考会では「昨年のリベンジ。今年こそは初出場」と目標を掲げて挑んだが、惜しくも11位となった。本戦出場まではあと13秒。10月14日の「第94回箱根駅伝予選会」に向けて再スタートした駅伝部のマネージャー・市来さんに話を伺いました。

選手からマネージャーへ転向された経緯を教えてください!

選手時代に走ったロードレース
選手時代に走ったロードレース

中学から陸上をはじめて、関西創価高校でも長距離の選手をしていました。高校時代は、他の強豪校の練習に参加させてもらうなど、積極的にトレーニングをしていました。そして、憧れの創価大学の駅伝部に入部しました。駅伝部には高校時代に全国大会で活躍した強い選手もいて、自分は「3年生に箱根出場する」ことを目標に掲げ、2年間は鍛錬の時と決めて練習に打ち込みました。しかし、足底が故障しやすくハードな練習を積むことができず、治療院に通い、痛みを我慢しながら走っていました。
4年生になる直前に、マネージャーになることを決意しました。瀬上監督が私の体のことを心配して、マネージャーへの転向を薦めてくださったのですが、その時は本当に悩みました。しかし、「自分にしかできないことがあるんじゃないか」と考えるようになり、「これまで続けてきた陸上でお世話になった方々へのご恩返しをしよう。マネージャーという形でチームに貢献し、夢を叶えよう」と決心し、マネージャーへ転向することにしました。

駅伝部のマネージャーとはどのようなことをするのでしょうか?

選手時代の練習の様子(一番右)
選手時代の練習の様子(一番右)

現在、駅伝部には男子マネージャーが7人、女子マネージャーが7人います。男子マネージャーは、選手と共に寮に住んでいます。練習は試合の日を除きほぼ毎日あり、朝は5時30分には起床して、6時開始の朝練の準備を行います。夕方の練習には授業が終わったらすぐに向かいます。
マネージャーは練習前に備品や給水の準備をして、練習中はタイム計測などのサポートを行います。練習が終われば、片付けをして、タイムの取りまとめと共に監督・コーチなどのスタッフから預かったそれぞれの選手の改善点などを伝えます。これもただ言葉を伝えるだけでは、意図が伝わらないので、選手一人ひとりに合わせた伝え方をしています。

私達は、毎日練習を見ているので、「なぜ体の軸がぶれてしまうのか?」「なぜ腰の位置が低くなってしまうのか?」といったことも、選手の一人ひとりの筋力、足首の柔軟性や稼動域の違いなど、体の状態による要因も考えて改善点を伝え、選手の力を最大限に引き出すことを目指しています。また、練習後には選手から感想を聞き、選手の体の微妙な変化を見つけて大きな故障を防ぐことに努めています。自分たちはスタッフと選手、選手と選手をつなぐ存在だと思います。

マネージャーも選手も同じ目標に向かっていることを強く感じます!

大学1年次、箱根駅伝チーム初出場
大学1年次、箱根駅伝チーム初出場

マネージャーもチームの目標である「箱根駅伝シード権獲得」に日々向かっています。私個人としても、箱根駅伝を目指す姿勢、気持ちは選手時代も、マネージャーの今も一緒です。「絶対に行ってやる」と思っています。自分たちの学年はすごく恵まれていると思います。本当に良い仲間に出会えたと感謝しています。箱根駅伝には、1年生の時に連れていってもらいました。その翌年は本戦出場はできず悔しい思いをして、そして、今年の1月には本戦出場を果たし12位になれました。最高学年の先輩方の様々な思いを見てきました。その経験はとても大きいです。
 

選手時代は練習が終わればあとは自分の時間でした。しかし、マネージャーは練習後も次の練習や試合に向けた資料作りがあります。そこには、チームの目標に向かってマネージャーとしての必要な役目です。私は、「マネージャーの動きで選手の自己ベストの1秒を縮めることができる」と思っています。マネージャーに転向したばかりのときは、自分には何ができるんだろうかと悩みに模索し、自分に出来ることを探して、練習後に選手の疲労回復を促進するためのマッサージをするようにしました。練習の振り返りや試合への思いを聞きながら、選手の気持ちをたくさん知ることができました。団結するためには、コミュニケーションはとても大切です。

マネージャーとして心がけていることを教えてください!

同期のみんなと
同期のみんなと

「思ったこと、感じたことをすぐに行動に移す」ことです。マネージャーも「指示待ち」になると動きが鈍り、「あの時こうすればよかった」と後悔することがあります。そのため、自分がこうだと思ったことをすぐにバッと行動に移すようにしています。
チームのために「こうした方がいい」と思うことは良くあると思います。しかし、それは実行しなければチームに変化は起きません。先輩、後輩関係なく、思ったことが言えるように、そして、行動できるようにする雰囲気をつくることを心がけています。マイナスになることなんてないんです。チームにプラスになることは積極的にやっていくようにしています。
そういうなんでも言い合えるチームになるように、マネージャー同士でもミーティングを多く持っています。大事な試合の前は、頻度を上げて話し合うようにしています。マネージャーもチームの一員です。日頃からチーム一丸となって練習に励んでいます。

大学3年次の集合写真
大学3年次の集合写真

応援、ありがとうございます!昨年はアクシデントでつかめなかった本戦出場。今年は、選手も大会に向けて万全の調整をしていました。チーム全体のタイムは昨年よりも良かったのですが、本戦出場ラインの他大学との差は1分差以内に6校あり混戦が予想されていました。
大会当日、選手はそれぞれ自らの最高の走りをしたと思います。結果は11位。本戦出場まであと13秒という結果でした。
出場選手に漏れた選手も声がかれるまで応援していました。チーム一人ひとりが、大会に向けて、それぞれの役割を見つけ出し、全日本に向けてやってきました。その全てを出し切りました。全力を出しても本戦出場には届きませんでした。
昨年は暑くて気温も今年より10℃位高く、他大学の選手も調子が悪かったのですが、今回はどの大学もとてもコンディションが良かったので、チームのベストタイムがそのまま順位に出たと思います。これからマネージャー間でもミーティングを持ちます。自身の個人的な反省としては、マネージャーとしての「今まで通りの準備」しかできていなかったと思います。大会までの準備はしてきました。「100%準備は大丈夫だ」と思っていた心に隙があったのだと思います。この「負け」を必ず、箱根駅伝の予選会では生かします。ここで負けた原因が、次の勝利の原因となるようにしていきたいと思っています。

箱根駅伝予選会に向けての抱負をお願いします!

箱根駅伝予選会には家族も応援に
箱根駅伝予選会には家族も応援に

箱根駅伝の予選会には、全日本駅伝の選考会以上の期待とプレッシャーがかかると思います。しかし、何があるか分からないのが本番です。今回は10キロの試合でした。次回は20キロの試合となります。今回は上位8人で挑みましたが、箱根駅伝の予選会は10人が走ります。また、20キロと距離も長いのでアクシデントの可能性が高まります。ますます気をつける必要があります。
「箱根駅伝シード権獲得」がチームの目標なので、予選を上位で通過しないと狙えません。隙をなくしていくことが必要です。選手たちは日々トレーニングをしています。しかし、それは他大学の選手も同じです。練習以外の時間の使い方が大切だと思います。一人きりでは誘惑があって、自分に勝てないときもあると思います。

そういう時こそ、チーム一丸となって一つの目標に向かうなかで、声をかけあってみんなで勝っていくことが大事になります。
創価大学の駅伝部は、皆で行動する時間が増えてきました。食事をとる時も一緒、食事が終わってペアで行うケアの時間も決めています。自分が駅伝部に入った当時は夕食も特に集合せず、各自のタイミングでとっていました。今は皆で時間を決めています。そういう積み重ねがチームの強さにつながっています。「今日くらいはいいか」と、自分に負けそうになるときがあると思うのですが、こういうときに仲間がいると一緒にやろうと声かけができます。駅伝部は、秋の予選会に向けて成長の夏、挑戦の夏に入ります。引き続き、応援、よろしくお願いします!

いちき えいいち Eiichi Ichiki

[好きな言葉]
負けじ魂

[性格]
明朗

[趣味]
映画鑑賞

[最近読んだ本]
「人を育てる箱根駅伝の名言」生島淳著
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