G20首脳会議に声明を提出!“根拠のある自信”を胸に、夢の実現へ挑戦!

ドイツのミュンヘンで、6月17日から22日まで開催された国際女性会議「G(irls)20サミット2017」に、本学法学部3年の中村茜さんが日本代表として参加しました。このサミットは、ビル・クリントン元アメリカ大統領が設立した「クリントン・グローバル・イニシアチブ」が次世代の女性リーダー育成を目的に立ち上げた国際女性会議です。2010年の開催以降、G20首脳会議の開催国で実施されており、今回で8回目の開催となりました。厳正な審査を経て、G20加盟国を中心に22名の女性代表が選出。日本代表に中村さんが選ばれ、本学から3年連続の参加となりました。中村さんに、参加しての感想や同世代の女性たちとの出会い、共同声明に込めた思いなどについて語っていただきました。
本学から3年連続での参加ですね。日本代表に決まった時の心境を教えてください!

私がG(irls)20サミット参加を目指したのは、1年生の秋に当時4年生で日本代表として参加した先輩の話を聞いたのがきっかけです。女性の人権・エンパワメントに興味があったので、G20加盟国を中心に18歳~23歳の女性から各国1名が選ばれ、女性の雇用創出について議論する国際会議であると聞き、在学中に参加して自分の力を試したいとの気持ちが芽生えました。
今回の応募人数については公表されていませんが、世界で1万人をこえる女性からの申し込みがあったとサミット責任者から聞きました。
参加者には、帰国後には、自国の女性が抱えている課題解決に取り組むためのプロジェクト実行が求められます。選考過程においても、提案するプロジェクトが本当に実現できるものかどうかが厳しく見極められます。1次選考の書類審査では、全部で11個の質問があり、自国の女性が抱えている課題についての自分の考えやそれを解決するためのプロジェクトの企画案などを提出します。書類審査の合格後、最終選考はサミット設立者とのスカイプでの面接でした。この段階では私を含め、2名に絞られたそうです。スカイプの画面から、設立者からあふれ出るサミットへの情熱が伝わってきました。「あなたの企画したこのプロジェクトは本当にできるのか」と何度も確認されましたが、私は「必ず実行します」と力強く答えました。
選考にあたっては、一昨年、昨年に創価大学から参加した先輩方も様々な面でアドバイスをくださりました。サミット事務局より日本代表選出の通知をいただいた時は、嬉しく思うとともに国を代表して参加する責任の重さ、そして、必ず自分が掲げたプロジェクトを日本で実行しようと決意を固めました。

今回のサミットの選考では、どのようなプロジェクトを立案したのですか?

「高校生の夢応援プロジェクト」を立案しました。プロジェクトの狙いは、⾼校⽣が固定概念や周囲の意見に翻弄されることなく、ありのままの姿で自信をもって夢や⽬標を追い続けることを応援することです。このサミットのテーマである女性の雇用創出を目指すためには、男女平等社会が必要不可欠であると考えます。性別に基づいた固定概念にとらわれず、互いの違いを個性と受け⽌め、多様性を尊重していける社会を構築することが、結果的に男⼥平等、女性の雇用創出につながると考えています。また、大学に進学する日本の高校生の半分は夢を持っていないという教育情報機関の調査結果をみました。大学という人生の大きな変化の前に、1人1人を勇気づけ、応援したいという思いから提案しました。
このプロジェクトはワークショップ形式で、大きく2つに分けられます。1つ目は、自分の強みや弱みを知るとともに、将来の方向性などを見つけるために、自分の適性を理解することです。2つ目は、高校生が将来の夢にむけて視野を広げるために、社会で活躍している卒業生やゲストスピーカーを招いて、人生の少し先輩からアドバイスをもらうことです。
私の高校1年次は悪戦苦闘の毎日でした。学校に馴染めず、勉強する⽬標や⽬的も見出せず、その時のクラスでの成績はビリから2番目でした。そんなとき、機会があって、⼦どもが抱えている問題を⼦どもが解決する。というテーマのもと、児童労働から⼦どもたちを開放することを⽬指すNPO団体でのボランティア活動を知りました。
活動に参加する中で、児童労働とたたかい命を落としたパキスタンのイクバル・マシーという男の⼦のストーリーとの出会いが、私を変えました。それは、学べる環境にいる⾃分が平和のために⼒をつけ、⾏動しなければならないという、⾃分の使命に気づいたきっかけでした。まさに「⼤学は⼤学に⾏けなかった人のためにある」という創立者の言葉の通りに生きたい、特に女性と子どもの人権保護のために尽くしたいという夢を見つけ、決意した瞬間でした。
アンバサダーとして⼩中⾼校への出張講演会の同伴、インドの学校建設募⾦活動、⾼校では部活動を通じて、児童労働問題を啓発するためのフェアトレード商品販売を学内で初めて取り組み、それらのトピックを英語と家庭科の授業カリキュラムに加えてもらったこともありました。わたしにとって⾼校時代は、⾃分の⼈⽣を変え、夢や⽬標を⾒つけた場所でした。⾃分の経験を通して、⾼校⽣の⼒になりたいと思っています。
サミットを通して学んだことを教えてください。
サミットは、「2025年までに女性のために新たな仕事を1億人分創出する」という課題に対する共同声明を作成し、G20の各国の首脳に向けての提言することを目的としています。また、サミットの参加者には、ビジネスプランニングやリーダーシップなどのスキル開発の機会も与えられます。6月17日から21日まで行われたワークショップでは、自分の適性を知るための自己診断、コミュニケーションスキル、リーダーシップ開発、戦略策定、交渉術、共同声明の作成に向けてのプログラム等、各カテゴリーで専門家を招き、充実した学びの機会になりました。
参加した22名全員でディスカッションをベースに学ぶのですが、机上のネームプレートには名前ではなく、「国名」が記されています。発言する場合には、挙手ではなくプレートを掲げるのですが、「JAPAN!」と国名であてられます。周りのメンバーの積極性におされ、初日はあまり発言ができず悔しい思いをしました。しかし、日本の代表として参加していることを自覚し、自分の思いをストレートに伝えようと決意しました。2日目以降は、それぞれの議題に対してしっかりと準備し、この共同声明の作成を通して、日本、そして世界をより良くしたいとの気持ちで、他国代表と協力し、最後まで積極的に参加することができました。
サミットへの参加を通し、“根拠のある自信”を持つことの大切さを学びました。「経験」と「決して屈しない強い思い」をもつことが確かな自信につながっていくと思います。
G20首脳に提出する「共同声明」に込めた思いを教えてください。

私たちの共同声明は、7月7日・8日行われたG20首脳会議のテーマに沿って作成します。今回は、女性の雇用創出について、「移民」、「エネルギーや気候変動」、「デジタル経済」などを焦点に14項目の声明をまとめました。サミット最終日の22日には、11時間にわたって議論を重ねました。
文化や法律、政治など背景が異なる場合であっても、抱えている課題の本質には国を越えて共通する点が多いと感じました。様々な意見が出る中で、意見を否定するのではなく、良い部分を見つけて生かすためにどう表現すればよいのか皆で話し合いました。また、作成にあたっては、 G20首脳に提出した後、実際の行動に結びつくかどうか、議論を重ねました。
大きな夢や目標を持ちながらも、現実的に行動を起こせるかの視点を共同声明に込めました。その結果、「移民女性が仕事上で必要なスキルを修得するためのトレーニング」、「自然災害や気候変動から女性を守り、被害にあった女性たちの健康およびメンタルケア」、「理系研究者を目指す女性へのメンター制度」などの声明をまとめることができました。また、序文には、「政策決定プロセスにおいての男女平等参画」を前提条件として盛り込み、オリジナルの共同声明を作成できました。帰国後には、開催国ドイツだけでなく、各国代表が、自国のG20リーダーへ共同声明を届けるために奮闘しました。私も外務副大臣へ申し入れする機会をいただきました。私たちがこの世界のために本気で考えたこの共同声明を国のトップに手渡すことができたこともとてもいい経験です。
サミットでの印象的な出会いはありましたか?

G(irls)20サミットの設立者のFarah Mohamedです。ドイツでお会いする以前からも、女性のエンパワメントのためにこのG(irls)20サミットを設立したという、彼女の強い信念や行動力に刺激を受けていました。ワークショップ1日目、G20リーダーへのメッセージをビデオに録る時に緊張して、自信がなかった私に、「恥ずかしがってる場合じゃないわよ。理由があって、私は茜を日本代表に選んだの。自信もって!」と力強く声をかけてくださいました。まさにこの言葉が、私の人生を変えるような1週間のはじまりでした。
これからの挑戦について教えてください。

サミットの中で、パキスタンの活動家・マララ・ユサフザイさんの父、ジアウディン・ユサフザイさんは、「高等教育は子どもたちが羽ばたく翼を授ける場所」と語っていました。私は、教育を通じて、一人ひとりの可能性を引き出す、まさに“Discover your potential”をするために行動していきたいと考えています。各国代表には、帰国後に自分の国でプロジェクトを実行することが求められています。先ほど紹介した「高校生の夢応援プロジェクト」をとおして、ステレオタイプにとらわれず、自分を信じてありのままでいてほしいというメッセージを伝えていきます。
また、昨年のイギリス留学や今回のサミット参加を通して、「価値創造」のための教育が必要であると感じました。日本の教育を変える一端を担えるように、今後さらに勉強していきたいです。また、現在学内でも、ジェンダー平等を目指した活動に取り組んでおり、自分ができることから行動していこうと思います。サミットで出会った22か国の姉妹たちの絆、そしていつも惜しみなく応援してくれる家族、友達、そして先生方に恩返しができるよう、“根拠のある自信”を胸に、失敗を恐れず自分自身の夢実現のために挑戦していきます。
[好きな言葉]
みんなが「堂々と正義を主張できる人」に育った分だけ、平和は来る。平和は、だれかから「与えられる」ものではない。平和は、自分たちで「創る」ものです。(希望対話p.348)
[性格]
ポジティブ、負けず嫌い
[趣味]
ウクレレ、散歩
[最近読んだ本]
「How dare the sun rise」