「環境にやさしい国にしたい!」―高校時代に抱いた夢の実現へ
「本当は高校3年生の夏頃まで他大学の理系に進学すると決めていました」そう語るのは本学大学院生の長山美紗紀さん。
しかし、様々な人との出会いをきっかけとして創価女子短期大学に入学。その後、創価大学工学部(2015年度より理工学部)に編入学。さらに、現在は工学研究科環境共生工学専攻に所属。描いた夢を実現するため、熱心に研究に励む長山さんの姿に、関係者の信頼は厚い。この夏、国内での学会発表を精力的に行い、9月中旬にはイタリアでも研究成果を発表しました。
今回は、柔らかいものごしの中にも芯の強さを感じる長山さんに、これまでの経緯を振り返りながら、今の思いや、今後の目標について話を聞きました。
学びたい分野が異なる短大に入学しようと思ったのはなぜですか?
私の母は創価女子短期大学(以下、短大)の1期生でした。母は口には出さなかったのですが、今思えば創価大学(以下、創大)もしくは、短大で学んでほしいと思っていたのだろうなと思います。ただ、当時の私は理系の四大に進学したいと考えていたので、いずれも全く視野に入れていませんでした。
高3の夏休みに三者面談がありました。その時はじめて「理系の四年制大学に進む」ということを母が知ることに。「なんで創価大学を考えていなかったの?」と、驚きを隠せないようでした。当然、その後少し衝突してしまいました(笑)。しかし、母の「一度、短大を見にいかない」との言葉に、「見学するだけなら行ってみよう」と思いました。
9月下旬、すでにオープンキャンパスも終わっていたのですが、短大に行くと受験部の先輩たちが私たちを待っていてくれました。この先輩方たちとの出会いが私の心を一変させました!最初はしぶしぶ母の言うことを聞いて、先輩方に案内されるがままに学内をまわりました。しかし、そうしているうちに、他大学のオープンキャンパスで受けた印象との大きな違いを感じたのです。それは、先輩方が、“短大が大好き”という母校愛と、“受験生にも良さを知ってもらいたい”という熱意に溢れていたのです。
そのような先輩方に憧れを抱き、短大を志望するようになりました。受験科目は今まで勉強していた分野と全然違ったのですが、公募推薦入試を受験し、合格することができました。

そもそも理系に進学したいと思ったのは?
高校で理系クラスでしたので、漠然とですが、知識を身につけて、技術的な面で社会に貢献したいと思っていました。職場体験として、水質の管理をする機器の会社を訪問する機会がありました。そこで河川の汚染の話を聞き、環境に配慮できる国にしたいという想いが芽生えてきたんです。企業訪問を通して、理系的視点で社会へ貢献できるということを知り、理系の大学で学ぼうと思うようになりました。
しかし、短大の受験部の先輩と出会ったことで、技術はいつでも学べる、まずは人の気持ちを思いやれるように、この短大で学びたい、と考えが変わりました。
素晴らしい先輩方だったのですね?

はい!衝撃でしたね。「好き」という思いが全身から溢れていて、自然と引き込まれていきました。
当時はいろいろな大学のオープンキャンパスに参加しました。もちろん大学によってカラーも違うと思いますが、短大の先輩方は私の緊張をほぐそうと、気さくに、そして丁寧に対応してくれ、学生なりのリアルな声を聞かせてもらえたのがよかったと思います。オープンキャンパスでもないのに、親身になってくれたのは短大を「好き」だという気持ちがないと出来ないことだなと。理屈で物事を捉えがちだった私ですが、この先輩方との出会いを通して、こういう人になりたい!と思いました。
入学してからはどういう学生生活でしたか?
とにかく勉強しました。ストイックなぐらい(笑)。振り返ると、もうこれ以上出来ないと思うぐらい、とことん突き詰めた短大の2年間でした。
短大では土曜講座といって無料で資格試験対策講座を開講してくれているのですが、そのサポートを活用しながら1年間で8個の資格を取得しました。
さらに1年後期には所属していた水元ゼミの仲間と「第4回大学コンソーシアム八王子学生発表会」(大学コンソーシアム八王子主催、八王子市教育委員会後援)の市政提案部門に出場しました。八王子市は高齢者が元気な町です。そして23の大学がある学園都市でもあります。この良さを活かしたいと考え、おばあちゃんと女子学生が集い合える「Girls Café」の開催を、八王子市長に直接提案し、優秀賞をいただきました。
2年次には金井ゼミに所属し、経営学を学びました。その経験が今、研究を進めていく上でとても役立っています。
自宅から往復4時間かけて通学していたので、それだけで身体がヘトヘトになることもありましたが、限られた時間を有効に使いながら、徹底して学ぶ姿勢を身につけることができたと思っています。とにかく、短大に入ったからには、短大でしか身につけられないものをたくさん身につけようと色んなことに挑戦してきました。その原動力は、なんといっても一緒に頑張れる“仲間たち”。みんな真面目で努力家で、一緒になって頑張ろうという気持ちが持てました。
仲間とは今でも連絡を取り合っています。社会の中で揉まれている様子を聞きますが、最初は悩んでいても、短大時代のことを語り合って思い出すだけで元気が出て、最後にはまた頑張ろうという気持ちになって社会へ、現実へと決意して再出発していけます。

そして創価大学工学部へ編入。どんなことに苦労しましたか?

一番苦労したのは、やはり勉強のレベルです。1、2年生で基礎を終えている周囲の学生と比べて、編入したといっても専門分野は新入生も同然。毎日1、2年次の勉強とともに、同時進行で3年次の勉強もやるという状態でした。実験は得意でしたが、座学は追いつけないところが多くて成績も思わしくありませんでした。編入して少し挫折を感じましたが、平日は朝から晩まで授業漬けで毎日学校にいましたので、慌しい中で落ち込む時間もありませんでした。
でも編入後はやりたいことは全てやると決めていたので、クラブ(Light Music)に入って、放課後はドラムを叩いていました(笑)。
編入後の大学2年間でつかめたことは何ですか?
創大の仲間と関わってみてわかったことは、みんな肩の力の抜き方を知っているということでした。短大のときはがむしゃらに、一生懸命に頑張る姿勢を身につけましたが、今思えばそれだけでは身が持たないなと(笑)。肩の力の抜き方を覚えたことは私にとっては大きかったです。この2年間でON、OFFの切り替えも出来るようになったと思います。
また、大学3年次に行ったイタリアのシエナ外国人大学での語学研修を通して、一期一会の出会いを大事にする心と、多様性を認め合う包容力を培うことができたことは、私の糧になっています。出会った人、関わりを持った人に対して、常にその人を思いやれる行動をとるように心がけています。

大学院進学を決められた背景には何がありましたか?

やはり、高校時代に職場体験で河川の汚染を調査する仕事を見たことですね。もう一つは、短大時代にゼミ教員だった金井先生が言われていた「一人ひとりが地球市民としての活動をしないといけない」との言葉が後押しとなり、大学院進学を決めました。
大学在学時にも、自分に出来ることはないかと模索していく中で、今やっている研究に辿りつきました。今はまだ会社とか他の団体に所属していないので、利害に関係なく自由に主張できるし、自分ならではの感性で社会に訴えられることができるんじゃないか。そのような思いから、川の状況を調査する研究をしています。工学研究科で汚染物質を研究している人はほとんどいません。だからこそ、まずは自分から始めて、環境に配慮をしていく社会を目指していきたいと考えています。一人ひとりの意識が変わり、続いて会社や団体の環境に対する意識が変わっていけば、最初は一人であったとしても、だんだん大きな力になっていくはずです。
今、どんな研究をされているのですか?
有機地球化学研究室の山本修一先生のもとで、河川の水中に溶け込んでいる有機化合物について研究しています。日本は工場の排出規制が緩いため、自然を保護するという目的で河川水を調べています。具体的には、2年半かけて北海道から長崎まで様々な水を採取して、どれだけ有機化合物が流れているのかといった流入量、また、河川水中ではどの化合物が分解されやすく、分解されにくいのかといった化合物の特徴を調べています。これらのような流入量、化合物の特徴を明らかにすることで、工場からの排出規制や環境保全の指標を確立していく手助けをしたいと考えています。
高校時代に描いた夢の実現に向けて、今、実際に挑戦できていることが嬉しいです。これまでコツコツと積み上げてきた研究の成果として、良質の根拠データが出揃ってきているので、積極的に学会発表にも挑戦しています。昨年は3つ、今年は国内で3つ、そして、9月中旬にイタリアのフィレンツェでも学会発表しました。高校時代からの夢であった「環境にやさしい国に!」という熱い思いが、ここまで自分を動かしたと思います。

夢の実現への第一歩。パナソニック株式会社・技術職での内々定、おめでとうございます!
ありがとうございます。パナソニックについては、短大1年次の水元ゼミで松下幸之助氏のことを研究してきたこともあり、とても興味のある企業でした。家電なので分野が違いますが、人を大切にしている、環境に配慮している企業という点で、私が目指したい方向と一致していました。
大学院に進学して研究を進める中で、周囲からの信頼を得ることの大事さを学びました。社会でも信頼される自分であり続けるため努力していきたいと思います。
ぜひ、今後の抱負を聞かせてください。
「2年で4年分の学びを」――。私は短大入学時から、この創立者の言葉を大事にしてきました。短大2年、工学部2年、大学院2年、この6年を12年分の学びにしていこうとたくさんのことに挑戦してきました。環境も大きく変化する6年間でしたが、その変化の中で対応力も培うことができたと思っています。
高校時代に描いた夢。遠回りのようでありましたが、理系の四大進学をやめて、短大に入学したことで可能性が開けました。短大の2年間で、どんな学問よりも大事な「人間性」の土台を築くことができました。そして、自分らしく咲けばいい、桜桃梅李という言葉そのままに。それにだんだん気付かせてもらえたその後の4年間でした。夢をあきらめずに追い求めた結果、今の私があるのだと感じます。何一つ無駄なことはありませんでした。むしろ、夢の実現に必要なものすべてを学んだ気がします。
これまでの経験をすべて活かして、社会においても、自分にしかできないこと、自分だからできることを実現していきたいです。これからも私らしく、置かれた環境の中で、自分にできることを精一杯挑戦していきます。
[好きな言葉]
できない理由を言わない、できる理由を探す。
[性格]
世話好き、素直
[趣味]
音楽鑑賞、ドライブ
[最近読んだ本]
『創立者と私』創価女子短期大学 学生会 編