Vol.25

「日本人が私たちのためにここまでしてくれている」-フィリピン留学中に恩返しで始めた清掃活動に賞賛の声が!

手塚 雄一(てづか ゆういち) 理工学部共生創造理工学科4年

「1年生の春休みにフィリピン短期海外研修へ参加した時に、現地の人たちが温かく僕たちを受け入れてくれたんです。また、将来の夢を見つける事ができました。その恩返しがしたくて2度目のフィリピン留学で始めたのが、外国人観光客のゴミのポイ捨て問題を解決するための清掃活動だったんです」-そう語るのは理工学部共生創造理工学科4年の手塚雄一さん。授業で循環型社会を構築する科学技術に魅せられ、3年生の秋学期修了後に、その技術を必要としている場所を自分の目で確かめようとフィリピン、インドネシア、タイの3カ国へ。7カ月かけて、フィールドワークを行いました。帰国後、留学先で出会った人々の笑顔を守りたいと国際協力の道を志し、本学学部生初となる大手総合建設コンサルタント会社の内々定を勝ち取った手塚さんに、大学での学びや留学先での経験、後輩へのメッセージを語ってもらいました。

環境問題に興味を持った理由を教えてもらえますか?

フィリピンへ2度留学
フィリピンへ2度留学

私は幼い頃から 東京都に住んでいるのですが、小学校から高校まで、すべての学校が山の近くにありまして、学校の課外活動で、山の清掃活動やゴミの不法投棄に対するアクションをしていました。気が付いたら、自然に触れることが好きになり環境問題に興味を持ち、大学は理系に進もうと思っていました。しかし、高校時代は何もかも中途半端で、部活も途中で辞めてしまい、バイトに明け暮れ、高校3年生の夏まで、受験勉強のスイッチが入らなかったんです。そんな自分が変わった一番大きなきっかけは、創価大学のオープンキャンパスに参加したことです。理工学部だけでなく、他の学部の先輩の話を聞いて、先輩方がみんな自身の夢を持っていて、その夢へ向かって勉強やフィールドワークなど、いろんなことに挑戦していたんです。そういう姿を見て、私自身もこうなりたいと思い、最初は親の勧めでオープンキャンパスに来たんですが、帰る頃にはこの大学に入りたいなという気持ちになっていました。同級生は、国公立や有名私立大学の受験を目指していました。偏差値の高い大学に入ることをゴールとしている人も多かったと思います。もちろん、将来やりたいことが明確で、志望校を決めている友人もいました。私は、創価大学で、環境について学べる理工学部の共生創造理工学科を第一志望に決めました。

共生創造理工学科ではどのような学びを行うのでしょうか?

1年生は、高校時代に学んだ物理、化学、生物などの幅広く大学への導入部分を学び、徐々に専門的になっていきます。
2年生の秋学期から、専門領域を決めていきます。私が専門領域を決めたきっかけは、2年生の春学期の授業で、「循環型社会」という考え方に出会ったことです。人間が生産活動をした時に「ゴミ」って必ず出ますよね?そのゴミを有効活用し、次の生産活動に活用するというサイクルを構築するアイディアなのですが、それを知った時に、衝撃を受けました。現在所属している研究室の先生でもある佐藤伸二郎先生の授業だったのですが、具体的には、農業で出た廃棄物を炭にするんです。その炭が汚染された土壌に含まれるカドミウムや鉛といった重金属を吸着したり、水はけの悪い粘土質や水分を保持しづらい砂質土壌を改善したりします。農業で出た、本来、そのまま捨てられる廃棄物が人の役に立つってすごいなと思ったんです。
この頃から「廃棄物の有効利用」に興味が出てきて、そのまま佐藤先生の研究室に進みました。今は、創価大学が行っている研究ブランディング事業のうちの一つの「PLANE3T Project」※という事業に携わっています。エチオピアの湖沼で大量繁茂して大きな環境問題を起こしているホテイアオイという水草を原料として炭を作り、現地の農民が使えるような燃料として使えないかという研究をしています。国連が掲げるSDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、目標12「つくる責任つかう責任」にも通じます。
※PLANkton Eco-engineering for Environmental and Economic Transformation

研究室での実験の様子
研究室での実験の様子

長期留学するまでの道のりを教えてください!

フィリピン短期海外研修
フィリピン短期海外研修

初めて留学に行ったのは1年生の春休みです。大学が実施しているフィリピンの2週間の短期海外研修に友人が誘ってくれました。正直、その時は海外に全く興味がなくて(笑)、春休みの思い出作りのような感覚でした。そこで、現地の人に出会うと、日本人と比べて、ものすごく活気に溢れていたんです。人思いで、友情深いなと感じました。初対面なのに、自分たちにたくさん声をかけてくれたり、サポートしてくれたりするんです。私がもし、日本で海外の人を受け入れるとなった時に、ここまでは出来ないなと思ったと共に、この人たちの役に立ちたいという気持ちが出てきたんです。

フィリピンは、経済や社会環境が日本と全く異なります。これまでテレビや教科書を通じて観たり、知ったりした環境問題や貧困問題を目の当たりにして、まだまだ大変な状況であることを実感しました。どこに行ってもニオイが酷い場所があるんです。また、道もガタガタに削れていたり、ゴミが外に捨てられていたりしました。他には道路の隅で寝ている人や物乞いをする子供たちもたくさん居ました。先に紹介した温かい人たちやこのような悲惨な現状に触れて、「何かしたい」と思ったんです。その時まで、将来の目標なんて持っていなかった私ですが、そこから海外に興味を持ち出して、英語の勉強を始めました。
実は英語は全くできなくて、2年生の時に、中学校の参考書から買い直して、勉強しました。TOEICは2年生から3年生の中盤にかけて、300点あげることが出来ました。理工学部にある「国際協力技術論」というJICAの研究所の人が講義をしてくれる授業を履修して、JICAのプロジェクトや、一人の人が情熱と技術を持って、途上国の課題解決に挑んでいく事例を聞いたりして、「生き方がとてもかっこいい!自分もこんなことをやりたい」と思いました。そこから、国際協力への思いが強くなり、留学を志しました。
しかし、留学資金がなく、今から貯めてもかなり時間がかかると落ち込んでいた時に、先輩が励ましてくれました。一緒に奨学金で留学できる道を探してくれて、先輩が紹介してくれたプランが、文部科学省の「トビタテ!留学ジャパンプロジェクト」へのエントリーだったんです。創価大学では、これまでも何人も受かっており、留学から帰国した先輩もいたので、お話しを聞きました。その中のお一人が、その方も自身の就職活動をしながら、私のトビタテへのエントリーのサポートをしてくださったんです。また、キャリア関係の授業でお世話になっていた担当の先輩も自分のことのように全力でサポートしてくれたんです。なので「ここは絶対に負けるわけにいかない」と決意して、一生懸命に挑戦した結果、合格を勝ち取ることができました。熱意が伝わったのかなとすごく嬉しかったです。先輩にもとても感謝しています。その時、まだ留学が始まってもいないのに、「創価大学に来て、本当に良かったなぁ」と心の底から思いました。高校時代、劣等感の塊だったので、海外にも行く機会も得ましたし、英語も、まだまだ磨いていますが、できるようになるなんて思っていなかったので、自信が持てるようになりました。今は、先輩が私にしてくれたように、後輩たちのトビタテへのエントリーのサポートをしています。

フィリピンで見たゴミ問題の現実
フィリピンで見たゴミ問題の現実

それは大変な準備でしたね。留学中はどのような活動をされたのでしょうか?

フィリピンで実施した清掃活動
フィリピンで実施した清掃活動

トビタテの留学プログラムは、自分で留学計画を組みます。その内容も審査対象です。私は、たくさんの発展途上国を見たいと思い、そういう国で行われている農業や環境保護のプロジェクトを見つけて、フィリピン、インドネシア、タイの3カ国を選びました。
フィリピンでは、語学学校で学びながら、休みの日には必ず環境問題の解決につながる活動をしたいと思ったんです。そこで清掃活動のボランティアを立ち上げました。同じ語学学校に留学していた日本人学生6人と一緒に活動しました。その活動が現地で非常に反響がありまして、いろんな人が私たちの活動の様子を写真に撮って、SNSなどにアップしてくれたんです。現地の文化を伝える5万人以上がフォローしているフェイスブックのアカウントがあり、そこで私たちのことが、「この日本人が私たちのため活動している」と紹介され、多くの方に評価をしていただきました。

小さなことでも行動を起こせば結果につながるんだと思いました。私は、1年生の時に行ったフィリピンの短期海外研修で将来の夢を見つけることができました。絶対、その恩返しがしたいと思っていました。また、通った語学学校が、1対1のマンツーマン授業制度で、授業の度に毎回違う先生になります。自分が環境問題に興味を持っていることを伝え、「フィリピンでできる環境保護の活動はないか」、「身近な環境問題はありませんか?」と聞いていたんです。そうしましたら、外国人観光客から始まったゴミの不法投棄が問題で、日本人に対してもあまりいいイメージがないと言われたんです。その事がすごい悔しかったんです。自分たちの行動で日本人のイメージを変えたい、と同時に、現地の不法投棄の問題も解決したいと思いました。だから、現地の人に私たちの活動を通じて喜んでもらえた時は、とても嬉しかったです。
インドネシアでは、2カ月滞在し、マングローブの伐採が問題になっていたので、環境保護の活動としてその植樹を行いました。ここでもやはりゴミ問題に目がいっちゃうんです(笑)。そこで、現地の小学校に行き、ゴミのポイ捨てをしないようにと呼びかける活動や3R(リユース・リデュース・リサイクル)の取り組みを教える活動をしていました。現地の文化を学んだり、日本の文化を伝える活動もしていました。私は創価大学で、イチャリバ・チョーデーズという沖縄舞踊のクラブで活動をしていたので、エイサーが踊れます。現地で踊るとすごい盛り上がるんです。最後にタイを訪ねました。タイでは、有機栽培の現場で活動をしました。お世話になった農家はご自身が、農薬のついた野菜を食べた影響で病気になった経験があり、有機栽培を始めた方でした。大きな畑を手作業で整備し、肥料も牛の糞やもみ殻などを持ってきて作りました。様々な活動を現地の方も評価してくださって、タイのハジャイ大学からボランティアの講演とエイサーを踊って欲しいという要請がありました。とっても緊張しましたが、エイサーを踊ると、学生たちも盛り上がってくれて、音楽や舞踊に国境は無いことを体感しました。

手塚さんらの活動が現地で反響を呼んだ
手塚さんらの活動が現地で反響を呼んだ

3つの国のフィールドワークから帰国して見えたことは何でしょうか?

インドネシア・マングローブの植樹活動
インドネシア・マングローブの植樹活動

私は、発展途上国、または、そのような地域のために貢献したいと思いが強くなって、今は、廃棄物の活用を通じて環境問題の解決に貢献したいと思っています。大きな夢ですが、最終的に「発展途上国と先進国の生活の中で感じる格差をどれだけ小さくできるか」ということに挑戦しようと決意しています。その思いが就職活動の原動力になりました。3カ国、いろんな地域を見て回り、貧困という問題が大きいと、周囲の人たちが助け合う絆が強いと感じました。地方の村では、家に家族以外にもいろんな人が出入りしていて、誰かが病気になると村中のみんなが心配してお見舞いに行きます。地域の人、全員が家族のような温かい雰囲気なんです。現地の方の人間性がすごく素敵で、私はそういう文化が大好きなんです。そのような国の方々に、もっと快適な暮らしをして欲しいと思っています。

また、現地で一番大きな課題と感じたことが教育でした。子供だけじゃなくて、大人の教育も大事だと思うんです。「子供が学校に通っていないことの何が問題なの?」と感じている大人もたくさんいますし、大人が平気で川や道端にゴミを捨てる地域もありました。それを子供が真似するんですよ。だから私は、大人に呼びかけました。しかし、私の話は聞いてもらえませんでした。逆に迷惑だと言われたことも何度もありました。村の村長にも掛け合ったのですが、どうでもいいという態度をされたこともありました。だから私は、子供達の未来が危ないと思ったので、小学校などの教育ボランティアに力を入れました。
留学を通じて、将来進みたい道もはっきりと見えてきました。各国の廃棄物の事情を目の当たりに、この課題解決を仕事にしたいとの思いが強くなりました。先日、内々定をいただいた会社は、発展途上国の開発コンサルタントを行っています。私の職種は海外コンサルタントで、廃棄物などの環境問題に携わります。JICAなどの機関が立ち上げたプロジェクトに、専門性の技術などを提供することが仕事で、具体的に現地の課題解決に携わります。JICA調査団の一員として活動したりする予定です。就職活動は一筋縄ではいきませんでした。周囲からは、大学院卒じゃないと難しいと言われていて、何度も無理だと思うことがありましたが、諦めずにやってみようと奮起して、学部生初の内々定をいただくことができました。

タイ・ハジャイ大学での講演後に記念撮影
タイ・ハジャイ大学での講演後に記念撮影

創価大学の受験を考えている高校生や創価大学の後輩へのメッセージをお願いします!

留学中に披露したエイサー
留学中に披露したエイサー

創価大学は、多くの学生が自分自身の夢を持ち、挑戦の毎日を送っている大学です。私は、高校生の時に創価大学のオープンキャンパスで先輩方のこの姿を見て入学を決めました。私自身、高校までは弱気で、何事からも逃げていました。しかし、創価大学の先輩の姿に憧れ、入学後は、苦手なことや新しいことなど、様々なことに挑戦をしました。私も「夢」を見つけることができました。現在もその夢に向かって挑戦の毎日を過ごし、卒業後もこの挑戦は続けます。
「今までの自分自身から変わりたい」「何か大きなことをやってみたい」と思っている方はぜひ創価大学で挑戦してみてください。挑戦すれば必ず何か得ることができます。失敗してもいいんです。決して無駄ではありません。創価大学には挑戦の場がたくさんあります。どんなに悩んでも、苦しんでも、失敗しても、周りには「一緒に頑張ろう!」と言ってくれる仲間がいます。それが、創価大学です。みなさんもこの創価大学でこれ以上にない最高の友人と出会い、自分だけの夢を見つけてください!

てづか ゆういち Yuuichi Tezuka

[好きな言葉]
七転び八起き

[性格]
明るい、何事もまず行動からはじめる

[趣味]
旅行、映画鑑賞、人と話すこと

[最近読んだ本]
「道をひらく」 松下幸之助
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