Vol.42

選手だけじゃない!「陰の力」も輝く人間野球―創価大学硬式野球部新・旧マネージャーが繋ぐ‟思い”

辻郷 忠英 経済学部経済学科4年
山形 智哉 法学部法律学科3年

新型コロナウィルス感染拡大の影響で、本年は全国大会が2大会(全日本大学選手権、明治神宮大会)とも開催されず、創価大学硬式野球部は新体制を迎えました。12月には新監督に堀内前コーチが就任。
硬式野球部の練習場所は「ワールドグラウンド」。そこは、いつも綺麗に整備されています。昨年までキャンパスに来れば、グラウンド周辺のゴミを拾ったり、落ち葉を掃いたりする野球部員の姿を目にすることも多かった。
今回は、これまで27年連続47回リーグ優勝をした硬式野球部の新旧のマネージャーの中心者である主務の辻郷さんと山形さんのお二人に、硬式野球部にかける思いやその強さや魅力について話を聞きました。

硬式野球部のマネージャーはどのようなことをするのでしょうか?役割を教えてください!

山形さん
山形さん

山形さん:野球部と言うとやはり選手が中心の部活になってしまうと思うのですが、岸前監督(以下、監督)が一番大切にしているのは「陰の力」の部分なんです。その陰の力である自分たちマネージャーが一番“何のため”を求め、練習や試合に向かっていきます。
練習前にはその日の1日のスケジュールや1カ月先の予定を立てます。練習中は主務として、チーム運営のため、書類を作ったり、選手をサポートしたりしています。野球部にはマネージャーとスタッフという役割が違う部員がいます。スタッフは基本的に練習をサポートします。私たちマネージャーは、ただ野球を支えるだけじゃなくてチーム全体を支えます。創価大学の硬式野球部は、全員で寮生活をしています。寮生活をどのように整えるかも、練習中に考えたりしています。そして練習後は片付け、清掃活動をしています。
私は、選手として硬式野球部に入部したのですが、1年生の冬に怪我をしてしまい、一時期野球に対して熱が冷めてしまった時があるんです。しかし、その時に「どうしたら硬式野球部の日本一に貢献していけるのか」と考え、マネージャーになってチームを支えていくことが今一番自分にできることなんじゃないのかと思い、マネージャーになりました。
最初は、選手の時と違う環境で、戸惑うこともありましたが、「マネージャーとして日本一になりたい」「マネージャーとして一番になりたい」という気持ちが、壁を乗り越える原動力でした。自分がチームを支えていく存在になるんだという気持ちを1年生の冬から持ち続けてきたので、今は思いっきりやっています。マネージャーとして周りを見る力、気を配る力、準備力といったことを大切に、何事も人より周りを常に見られるように考え、視野を広くすることを心がけています。選手には野球に集中して欲しいので、自分はやっぱり選手が見えないところまで見るように、また、見える立ち位置にあると思うのでそういうことを意識して常に行動しています。

辻郷さん:私自身は、入部してから3年間、ずっと選手を続けていました。新チームになる際に、前任の主務の先輩から「主務をやってくれないか」と突然お話をいただきました。最初はスタッフとしてグラウンドでノックなどをするサポートの役割になろうと思っていたんです。先輩からの思いを受けて、主務をやることを決意しました。それまでマネージャーとしての経験が一切なかったので、不安な気持ちが一番大きかったのですが、やはり後輩の山形をはじめ、経験豊富なマネージャーが何人かいたので、他のマネージャーにサポートしてもらいました。そのお陰で、2020年最後の関東大会で準優勝まで辿り着けたと思っています。
選手側から見ていた当時、マネージャーはグランド周りの掃除をはじめ、陰の力として、いろんな作業をしているなと思っていました。しかし、マネージャーに自分がなってから、その重要性に気がつきました。選手時代もベンチに入らせてもらい、2018年の関東大会で優勝なども経験させていただきました。選手として勝てば、もちろん嬉しかったのですが、 マネージャーとしてスコアラーでベンチに入り、後輩や同期の選手が活躍してベンチやスタンドが喜んでいる姿を見た時に、マネージャーという立場から見たほうがもっと嬉しかったんです。大会中は特に、5分、10分ずれるだけで選手のリズムが崩れてしまうことがあります。私たちは、これまでバスやお弁当の手配、そういう細かい準備にあたり、流れを止めないことを大事にしていました。選手がより良いプレーができるように、そういう環境を作って、その結果選手が活躍してくれると、とても嬉しいんです。マネージャーをやって良かったなと心から感じた一年でした。

辻郷さん
辻郷さん

マネージャーとしてチームに貢献する、また、貢献した理由をお聞かせください。

辻郷さん:選手時代に試合に出られず、チームに貢献できないもどかしさとか、自分の存在価値ってなんなんだろうって思うことがありました。主務になってから、マネージャーとしてチームをまとめる立場になり、それはとてもしんどいことなんですが、この一年やりきる中で、とてもやりがいがあることだったなと思います。マネージャーと活動する中で、自分が動かなければチームはまとまらないし、自分が仕事をしなければ、チームの運営がより良いリズムで回らないので、責任感が自然とついてきました。監督やコーチの方々と一番連携を密にとる立場なので、監督が話した内容を部員に全体ミーティングなどで伝えて、チームの気持ちを整えていきました。

山形さん:私は1年生の冬からマネージャーになり、監督の側に長く居たので、多くのことを教えてもらいました。選手に伝えないのはすごくもったいないことだと思っています。怪我の影響で、野球をプレーして日本一になることはできないのですが、どういう立場からチームを支えるのか、創立者よりいただいた硬式野球部の指針「心で勝て 次に技で勝て 故に練習は実戦 実戦は練習」を大事に、技の部分ではなくて、心の部分でサポートし、一番強い心を作るためにという姿勢でやっています。これが私のチームに貢献する理由です。
また、監督からは「学生主体が大事だよ」と言っていただきました。自分たちで一人ひとりが、自分がやるんだという気持ちになることが大事です。硬式野球部には「日本一」という目標があるんですが、目的はあくまでも「人材育成」です。野球だけやっている人間を作るのではなくて、社会に貢献できる人材を作ることが目的なので、そのために大事なこととして、野球部の部活動、寮生活なども自分たちが主体的になっていくことが大切だと教わっています。

ワールドグラウンド前の石碑

ワールドグラウンド前の石碑

マネージャーのお二人が感じる硬式野球部の野球部の魅力、強さを教えてください。

山形さん:やはり試合に出ている選手だけじゃなくて、試合に出ていない控えの選手、スタッフ、そしてマネージャーも全員に立場がある、自分の役割をわかっていることが強さだと思います。硬式野球部は全員が毎朝グラウンドに来ます。全員が練習に関わり、全員が清掃活動をしています。ここが強さだと思います。その根本を忘れた時点で、その強さが無くなってしまうと思うんです。たとえ野球が上手くなくてもどこか輝ける場所が一人ひとりあると思います。監督やコーチ、そして、歴代のOBの方がそういう硬式野球部を作ってきてくださったんだと感じています。そういう方々に感謝していかないといけないと思います。自分たちも野球選手として入部したのですが、野球選手としての道を断念して、輝けなかった分、マネージャーとして輝けることはとても嬉しいと思います。
入部してから、マネージャーやスタッフとして活動されている先輩に出会って、その先輩方の動きを見ていると、「これまで見てきた他のチームとは何かが違う」と感じるんです。心に響くものがあるんです。「陰」なんですけど、輝いているんです。陰の力は目立たないんです。一般的には、試合で活躍した選手やドラフトにかかるような選手だと思うのですが、硬式野球部の中から見ていると輝いているのは、そういう「陰の力」のスタッフやマネージャーだったんです。そういう場面が何度もあったので、1年生に怪我をしたときにも「自分にもまだ輝ける場所がある」と思いました。

辻郷さん:硬式野球部には誰もが役割があるんです。プレーでは活躍できないのですが、チーム内で活躍できる、チームに貢献できる立場があるんです。それが創価大学の硬式野球部だと思います。野球は試合でプレーする9人が花形だと思います。他のチームでは、控え選手の心が腐ってしまうことや、練習に来なくなってしまう部員がいたりすると思うのですが、創価大学の硬式野球部にはそういったことが一切無いんです。どんな時も、どんな立場でもチームの勝利へ貢献できるんです。
主務として、大会中、ずっとベンチに入っていて思っていたんですが、他のチームは勝っているときは勢いがあるんです。負けているときは、沈む雰囲気になってしまうんです。しかし、創価大学の硬式野球部は逆境をはねのけて、切り替えるんです。2020年秋のリーグ優勝をかけた1戦目も負けた時に監督から、「ここから創価の逆襲だ。2連勝して優勝するぞ」と声をかけてもらい、どんなにつらい状況だったとしても、ベンチもそういう雰囲気にならないんです。
「負けている」のに「勝っている」雰囲気になるんです。心で負けないんです。メンタル面で負けてしまうと、どんなに技術を持っていてもその力を100%発揮できないんです。以前、選手としてベンチに入らせてもらっていた時期がありましたが、「めちゃめちゃ声出すな」と驚きました。心から「すごいなぁ、このチーム」って思ったんです。気が付いたら自分も声を出していました。もしベンチ対決がもしあれば、どことやっても絶対に負けない自信があります。

常に整備されているワールドグラウンド
常に整備されているワールドグラウンド

「人間野球」を感じるときはどのような時でしょうか?

練習後、椅子も理路整然と並んでいた
練習後、椅子も理路整然と並んでいた

辻郷さん:先ほど紹介があった硬式野球部の指針の中で、心で勝つことがいかに重要かということを感じています。自分も経験してきたことで、いくら技を磨いても、いくら技が上達しても心で勝てないと結局力が出せないと感じる4年間でした。そのことを野球部全員が理解をして、まず心で勝っていくんだということが身に染み付いているので、最高の結果が出せるのかなと感じています。もちろん、負けそうになる時はあります。しかし「自身の弱さ」という壁にぶち当たる時は、私は「成長できるチャンス」だと思っています。人間には乗り越えられない壁は、与えられない。どんな壁でも必ず乗り越えていけると思いますし、そうしていくのも自分自身だと思います。心を奮い立たせ、もっと成長していく、もっと向上していくと言う根本的な「心の強さ」が大事だと思っています。

山形さん:2020年のチームスローガンは「史上最高最強のチームへ前進また前進」でした。常に前進していくことだと思います。戦いの後に、次の戦いはもう目の前に来ているんです。例えばリーグ戦だと1カード2試合あります。1戦目負けても翌日すぐ試合なんです。だから落ち込んでる暇がないんです。この切り替えも重要な力です。切り替えていけるように仲間に積極的に声をかけていきます。特別な振る舞いで選手に気を使わせてもいけないですし、特別な振る舞いをする必要もないと自分は思っています。いつも通り接することを心がけています。いつも寮生活で一緒なので普段通り接することを大事にしています。自分は「後輩に目を向けてあげられているのか」ということを大事にしています。これまで一緒に戦ってきた同期は信頼しているので私は後輩に全力を注いでいます。後輩は私生活の面であったり勉強面であったり色々悩んでることがあると思うので、そういうことをサポートすることを心がけています。

辻郷さん、後輩に託したいことを教えてください!

辻郷さん:野球部の目標は日本一、目的は人材育成。人材育成の面では山形を中心に、それぞれが主体者となって、自分自身の逆境を切り開いていって欲しいなと思います。目標の日本一、今年はコロナの影響で2つの大会が中止となってしまいました。自分たちは日本一になるチャンスがなかったので、後輩に託したいと思います。ぜひ日本一を成し遂げて、そして人間として成長して、人間野球を実践していて欲しいです。これが一番の思いです。

山形さん、先輩の熱い思いに応えて決意をお願いします!

山形さん:来年は創価大学の創立50周年を迎えます。野球部も新光球寮を建設していただき、その1期生としての生活が始まります。私は今回主務として陰の戦いの中心で戦えることをとても感謝しています。使命も感じていますしとても幸せなことです。怒涛の1年間になると思うんですが、自分自身が成長できるチャンスだと捉えて自身が成長していく、自分もまた辻郷さんに育ててもらったように、後輩を大切に、良い伝統を残していきたいと思います。

栄光の道にて
栄光の道にて
つじごう ただひで Tujigo Tadahide
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「未来の果は現在の因にあり」
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責任感が強く、一度決めたことは最後までやり切る
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「走れメロス」太宰治
やまがた ともや Yamagata Tomoya
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 「八月からの手紙」堂場瞬一
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