Vol.45

前へ進み続ける!〜コロナ禍に屈せず使命の道を掴んだ原動力は“恩返し”

川口 秀美 経営学部経営学科 2021年卒業

 新型コロナウイルス感染症の影響で、学生生活が一変した2020年。本学においても、春学期を全面オンライン授業にするなど学習形態の変化もあり、学生たちが卒業後の夢に向かって取り組む就職活動にもさまざまな影響がありました。中でも、入国制限や県外への移動自粛などによって影響の大きかった航空業界は、年度途中に採用活動の中止を発表。2022年度採用も一部の職種に限定するなど、新卒採用の見送りが発表されています。
 今回紹介する川口秀美さん(2021年経営学部卒業)も航空業界を希望していた一人。しかし、彼女は突然の採用中止に戸惑いながらも挫けずに前へ進み続け、大学初となる大手カーリース企業からの内定を勝ち取られました。そんな川口さんに、就職活動での挑戦の様子や大学生活での学びについてお話を伺いました。

ご卒業おめでとうございます!まずは、航空業界を目指したきっかけを教えてください!

卒業式翌日、オンラインで取材に応じてくれた川口さん
卒業式翌日、オンラインで取材に応じてくれた川口さん

 私は、もともと幼い頃から航空業界に憧れていたわけではなく、漠然と“人を支えたい”、“多様なことを経験したい”、“少数精鋭で自分の力を発揮できる職場で働きたい”と考え、業界を絞らず視野を広げようと、消費財メーカーからIT系までさまざまな企業を見ていました。そんな中で参加した客室乗務員の1DAYインターンシップで、企業説明や接客体験を通し、社会のインフラとして大勢の人を支えられる航空業界の仕事に魅力を感じました。働いている方から直接話を伺った際に、1つのフライトを成功させるために、たくさんの方がチーム一丸となって取り組んでいることや、お客様だけでなく一緒に働く同僚に思いやりを持つことを大切にしている雰囲気を肌で感じ、純粋にその一員になりたいと思いました。中でも、ジョブローテーションがあり、いろんな業務が経験でき、フライトを支える客室乗務員やパイロットの方などを総合して支えられる総合職が、一番私のやりたいことを実現できると感じ、航空企業の総合職を第一志望として就職活動を始めました。

しかしその後、航空業界の採用が中止となったんですよね。

 航空業界の採用活動は、例年他業種よりも少し遅く3月下旬から4月中旬に始まります。大手だけでなく関連子会社や複数の職種を視野に入れ、20社ほどエントリーをして採用活動に臨みました。しかし、2月頃から新型コロナウイルスの国内感染が報道され、少しずつ学生生活の活動も制限されるようになりました。徐々にオンライン面接を実施する企業が増え、航空業界でも4月中旬には客室乗務員の休業などが各社から発表され、採用にも影響がでるのではないかとの不安が募りました。他の企業を考えた方がいいのかと視野を広げながら、それでも少人数の採用はあるのではないかとの希望を持ち、航空業界を目指す友人と励まし合いながら面接練習などの準備を続けました。
 しかし、残念ながら5月末に正式に採用中断の連絡が届きました。その連絡を見たときは、頭が真っ白になりました。中止が決定したわけではないものの、いつ再開されるかもわからない状況に可能性は低いと感じ、今までやってきた努力が全て無駄になってしまうと思いました。コロナの影響で仕方ないと思いながらも、どうしようもできない気持ちが募りました。実際は一部の企業やインターン生のみの採用などもありましたが、私は航空業界を志望したのが遅かったため、やはり後にエントリーしていた企業は全て中止となりました。
 採用中断という状況に不安と焦りが溢れましたが、それと同時に今まで自分の就職活動を支えてくださったRSSの 先輩や航空業界を共に目指していた友人、応援してくれた両親など、そういう人たちの顔が思い浮かんできて、その人たちのためにも立ち止まってはいけないという思いが強くなりました。もともと、短大時代に教えてもらったトインビー博士の座右の銘である「ラボレムス(さぁ仕事を続けよう)」という言葉を大切にしていたこともあり、とにかく“前に進もう!”という気持ちで、連絡のあった次の日には新しい企業の説明会やエントリーを開始しました。
 ありがたいことに、航空業界を目指す学内の友人たちとは、先輩たちが用意してくれたグループで繋がっていました。採用中断連絡の翌日には、「自分はこの業界を目指して頑張ります」とか「みんなで頑張りましょう」といったメッセージが次々と届き、励まし合いながら自分も頑張ろうと挑戦できたと思います。

共に航空業界に挑戦した仲の良い友人と
共に航空業界に挑戦した仲の良い友人と

突然の業界変更での就職活動は、苦労も多かったのではないでしょうか。

 幸いにも、私はいろんな業界を見た上で航空業界を希望していたので、ある程度業界を絞って進路を考えることができたと思います。もう一度、進路を選ぶ上で自分が大切にしたい軸を見直しました。そして、“人を支えたい”、“チームで1つのことを成し遂げたい”との思いを再確認し、リースや保険、人材業界など、人の挑戦を支える企業に目を向け、積極的にその企業説明会へ参加しました。
 それでも、航空業界の採用中断の連絡が来た時点で、すでに他の企業は一次採用が進み、二次、三次の採用を行っている状況で、いつまで募集があるのかも分かりません。次々と募集が打ち切られていく状況にとてもプレッシャーもありましたが、後悔のない選択をしたいと、自分には無理などと諦めることなく、行けるところは全て申し込んで挑戦しました。実際に、航空業界の中止決定から再度20を超える企業にエントリーし直し、もう一度一から就職活動をリスタートするような状態で、一番大変な時期でした。当時は必死でしたが、今振り返ると、すごいことをしていたなって思います。

オンラインでの就職活動は、どのように取り組まれましたか。

面接練習をしてくれた先輩たち
面接練習をしてくれた先輩たち

 緊急事態宣言発出に伴い、説明会から面接まで、採用活動は全てオンラインになりました。オンライン上でのやりとりのため、社員の方の人柄や雰囲気などが掴みづらく、本当にこの企業でいいのかなと思うことはありました。だからこそ、面接ではこちらの熱意や思いも伝わりづらいように感じ、対面の時以上に言葉選びを大切にするよう心がけました。
 また、オンラインだからこそ気をつけなければならないこともあって、画面じゃなくてカメラを見たり、上半身の姿勢に気をつけたり、一人ひとりの顔がよく見えるからこそ、限られた画面でどう見えるかを、友人たちと互いに確認し合いました。面接を受ける自分の画面にも自分の顔も大きく映るので、緊張している顔が見えてさらに緊張してしまうこともありました(笑)。でも、大変なことだけでなく、オンラインだからこそのメリットもあったと思います。企業までの移動時間が必要なくなり、体力的にも費用的にも助かりました。また、ギリギリまで練習できたこともオンラインの魅力でした。
 はじめは、初歩的なことから全然わかっていなくて不安もあったのですが、先輩やキャリアセンターの方々が、一緒に航空業界を目指して頑張っていたメンバーとともに面接練習をしてくださり、丁寧にサポートをしてくださったので、安心して臨めました。

最終的に、大手カーリース企業への内定、おめでとうございます!

 ありがとうございます。自分の軸に合う企業に挑戦する中で、最終的に大手カーリース企業から内定をいただくことができました。はじめは、正直ここに決めていいのかという迷いもありました。実際、内定をいただいてからも少し就職活動を続けていたんです。それは、少しでも航空業界に関われる企業に就職したいという思いがあったからでした。
 そんな時に就職先の内定者懇親会に参加しました。その際、私がもともと航空業界を志望していたことを知ってくださっていた常務の方から、「この会社は航空業界とも繋がりがあるよ」と声をかけていただきました。航空業界といえば主に飛行機を扱いますが、飛行機は前にしか進めないので、駐車する際にはプッシュバックといって後ろに下げるための専門的な車が必要になります。内定をいただいた企業では、このような専門的な車も取り扱っていました。そのことを知った瞬間、自分が思っていたことは、全部この企業で叶うんじゃないかと感じ、ここで働きたい!と心から納得して就職活動を終えることができました。自分自身が直接関われるかは分かりませんが、一度志した航空業界の一端を担えるかもしれない、携われるかもしれないということは、本当嬉しかったです。
 就職先の企業では、自分の企業だけでなく、さまざまな企業の方の仕事に欠かせない車を提供することになります。身近なコンビニや銀行、そして航空業界など、本当にいろんな方々と関わる仕事です。多様な人と関われる仕事だからこそ、広い視野で学び続けていけることに魅力を感じています。

ご自身の就職活動を振り返っての思いと決意を教えてください!

笑顔で感謝と決意を語る川口さん
笑顔で感謝と決意を語る川口さん

 一番目指していた業界の進路が絶たれてしまって、自分の時間はなんだったんだろうって思う時もありましたが、後悔は一切ありません。航空業界を目指していた仲間と一緒に練習したことや、自分のやりたいことを見つめて準備したことは全て無駄にはならなくて、目の前のこと一つひとつに挑戦してきたことが、全部自分の進路に繋がっていくことを実感しました。自分で自分を諦めずに前へ進み続け、できることは全て挑戦したからこそ、今、後悔はないと言い切れるんだと思います。そして、この挑戦の裏には、たくさんの方々の支えがありました。本当に感謝の思いでいっぱいです。
 また、後から知ったのですが、就職する企業にはこれまで卒業生が一人もいなくて、思いもよらない形で新規企業の開拓となりました。結果として、大学にも貢献できる形となり、よかったなと思っています。創大出身の先輩がいない分緊張と不安もありますが、創大で学べた感謝と誇りを胸に、一人の創大卒業生として後輩の道をさらに切り拓けるよう、目の前の一人を大切に、関わる全ての人から信頼していただけるよう挑戦していきたいと思います。

学生生活では、どのようなことに挑戦されてきたんですか。

 私は、高校生の時、明確な将来の夢がなく、漠然と視野を広げたいと思っていたため、就職や編入などいろんな進路の選択ができると考え創価女子短大に進学しました。そして、短大の中で学び続ける大切さと楽しさを感じ、もっと学びたいと大学への編入を決意しました。ただ、日頃から視野を広げたいと考えていたので、創大だけでなく他大学も視野に入れたいと、学内推薦ではなく一般編入試験を受けることを決意しました。
 実は、そのことを短大の教授に相談した時に、先ほど紹介した「ラボレムス(さぁ仕事を続けよう)」という言葉を教えてくれたんです。そして、「川口さんが朗らかに挑戦するなら私は応援します」と言ってくれました。短大の授業と並行して受験勉強 をするため、本当に自分との戦いではあったのですが、たくさんの方々に応援してもらって編入学試験に挑戦できることを感じ、そういう人たちの期待に報いるために、教えてもらった言葉の通り、諦めずに前に進み続けようと心がけるようになりました。

ゼミでは5ヵ国・地域、6名の留学生とともに学んだ
ゼミでは5ヵ国・地域、6名の留学生とともに学んだ
全学イベントの運営に努めた、学生自治会の仲間
全学イベントの運営に努めた、学生自治会の仲間

 最終的に創大から合格をいただき、経営学部に編入しました。オールイングリッシュのゼミに入ってマーケティングを学んだのですが、留学生も多かったため、国によっていろんな価値観があることを学ぶこともできました。その他、3年次には友人に誘われて学生自治会に所属しました。編入直後で、どういう組織かも分からなかったのですが、創大で学ぶからにはここでしかできないことをしようと決意しました。編入生で自治会に所属した人は少ないのですが、先輩に話を聞く中で、短大出身者として創大自治会で頑張ることが、短大から編入してくる後輩たちのためにもなると思い、創大建設に携わっていこうと挑戦しました。また、就活後は、後輩の就職活動を支援するリクルートサポートスタッフ(RSS)としても、担当履修生との面談や就活生の面接練習、エントリーシートの添削などを行い、就活相談会などのイベントも開催しました。RSSの一番の役割は、担当する後輩たち全員が使命の進路を勝ち取ることだと思うので、この挑戦はまだ続きます。大学は卒業しましたが、これからも一先輩として最後まで支えていく決意です。

学生生活の挑戦で、学んだことを教えてください!

 大学生活での一番の学びは、物事の考え方が“自分軸”から“他者軸に”変わったことです。編入前も、ダンス部でチームやメンバーのために何かしようという思いはありましたが、自分が舞台に立つことを考えて練習するなど、自分軸で活動することが多かったと思います。しかし、編入後、自治会やRSSの活動を通して、陰で誰かの挑戦を支援する経験をする中で、誰かのために頑張ることが自分のやりがいになり、他者軸を持つことで成長につながることを感じました。また、チームで活動することも増えたからこそ、他の人がいての自分だと感じることが多くなりました。他の場所で頑張っている友人がいるからこそ、自分も今いる場所で頑張ろうって思えるようになり、相手のためにと思って行動する自分に変われたことが、創価大学での大きな学びです。
 学生生活を振り返ると、自分が苦しい時には常に誰かがいてくれて、助けを求めた時には必ず誰かが支えてくれました。編入学試験時に支えてくださった短大の先生、就職活動時のRSSの先輩や航空業界を目指していた友人、自治会の仲間など、たくさんの人にしてもらったことへの感謝は尽きません。その方々への恩返しの思いが、私の全ての原動力であり、これからも大切な原動力になるんだと思います。

これからも共に後輩の就職支援に取り組むRSSのみんなと
これからも共に後輩の就職支援に取り組むRSSのみんなと

最後に、これから就職活動に挑む後輩にエールをお願いします!

 私たちは、挑戦の途中での方向転換で突き進む以外にありませんでしたが、準備時点からコロナの影響を受けている後輩たちは、最初から先が見えない状況にどう臨めばいいのか不安を抱えることも多いと思います。また、就職活動をしていると、人と比べてしまったり、自分に自信がなくなったりすることがすごくあると思いますが、どんな状況であっても、ありのままの自分に一番合う企業があります。使命の場所は必ず見つかると思うので、最後まで諦めずに挑戦し抜いていってください!

かわぐち ひでみ Kawaguchi Hidemi
[好きな言葉]
ラボレムス(さぁ仕事を続けよう)
[性格]

根気強い

[趣味]
ダンス
[最近読んだ本]
女の一生/著:ギ・ド・モーパッサン
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