Vol.49

市内の外国人と飲食店を繋ぐSDGsプロジェクトに文学部生が挑戦!~地球規模で考え、地域で行動

文学部人間学科 尾崎秀夫ゼミ 湯川春香さん 文学部人間学科3年

 学園都市である八王子市では地域活性化の促進を目的に、学生による地域貢献活動や調査・研究活動に対し、大学コンソーシアム八王子が費用等を補助する「学生企画事業補助金」事業を実施しています。本年度は採択全8団体のうち、本学のゼミから3団体が選ばれ、年度末の最終報告会に向け、八王子市を舞台に地域貢献のプロジェクトを進めています。
 今回の創大Daysでは、文学部の尾崎秀夫ゼミの代表である湯川春香さん(文学部3年)に、本事業に採択された「グローカル×SDGs = Boost Up八王子」の概要やそこに込めた思い、ゼミを通しての学び等を語っていただきました。

「グローカル×SDGs = Boost Up八王子」の取り組みを教えてください!

身近な行動をSDGsへの貢献に繋げる活動
身近な行動をSDGsへの貢献に繋げる活動

 本事業では、八王子で学ぶ留学生や外国人の方が自身の食文化に合う店や、安価でありながら、味や量にも満足のいく飲食店を探せるよう、ウェブ上の「HACHIOJI MAP」に店舗情報を掲載します。飲食店に訪れた留学生が、SNSを通じて食事の感想などを投稿することにより、留学生だけでなく市民にもお店の魅力が周知されます。また、飲食店には募金箱を設置させていただき、NGOを通して実際に支援の必要な人に届け、SDGsの目標である「1.貧困をなくそう」「2.飢餓をゼロに」「4.質の高い教育をみんなに「6.安全な水とトイレを世界中に」の項目に貢献することを目指します。
 募金したお金が、国を越えて遠く離れた人のためになっていることを実感してもらうことで、八王子にいながら、地球規模で考え、行動を起こすといったグローカルな体験を一人でも多くの方が積む機会になればと思っています。
 また、市内のお店への客足が増えることで、八王子の「boost up(=盛り上げる)」に繋げたいとの思いをプロジェクト名に込めています。「市内の留学生」、「市民」、「世界で支援の必要な人」の三者にとってメリットのある循環型モデルとして、八王子市から全国に発信していきたいです!

事業の軸となる「HACHIOJI MAP」にについて教えてください。

 八王子市に限らず、海外の方々の特殊な食文化のニーズに沿った飲食店は比較的高級であり、価格も高めのところが多い点や、宗教的制約などについて(ハラルフードなど)外国人向けに分かりやすく紹介している店舗は少ないのではないかと問題意識を持ちました。
 「HACHIOJI MAP」には2つの狙いがあります。1つ目は、八王子に住む留学生が自身の食文化や嗜好に合った料理を提供している飲食店で、比較的安価で手軽に食べられる飲食店を利用し、慣れない日本の生活や環境で困っている留学生に対して、食を通して新たな出会いの出助けと異文化理解を提供できればと考えました。2つ目は、食だけでなく八王子市の自然あふれる四季折々の景色に触れる機会を提供することです。美しい八王子の自然スポットに訪れることで、留学生が八王子の新しい魅力を発見することを手助けし、日本ならではの四季を肌で感じてもらう場所を紹介できればと考えました。
 昨年のゼミの先輩が飲食店を中心としたMAPを作成してくださっていたので、それをバージョンアップさせる形で、飲食店情報と自然を楽しめる場所を盛り込んだ内容にしていく予定です。「HACHIOJI MAP」を軸に、留学生の暮らしを支援し、日本という異文化を感じるとともに、理解に繋がる一助になれば嬉しいです。

「HACHIOJI MAP」には飲食店や自然スポットを紹介予定
「HACHIOJI MAP」には飲食店や自然スポットを紹介予定

どのような飲食店と提携しているのでしょうか?

留学生向けのメニュー表の一例
留学生向けのメニュー表の一例

 JR八王子駅や京王八王子駅の付近を中心、現在8店舗をウェブ上の「HACHIOJI MAP」に掲載しています。アジアや中南米の幅広い料理を楽しめるお店や、オリジナルカレーで有名やインド料理屋さん、イタリア料理屋さん、お洒落なカフェなど幅広いジャンルのお店と連携しています。
 これから各店舗には「Helloカード」の設置をお願いさせていただきます。ビーガンやベジタリアン、宗教的制約によって食べられるものが限られてしまう消費者へのサポートを目的に、特に豚や牛、卵、ナッツなど食べ物の表示を示すカードです。これにより、食事に来た人が、日本語など言葉の壁に苦労することなく、自身の食の制約の意思を伝えることができ、安心して食事ができます。また、お店側もニーズに沿った料理の提供が可能になり、お客さんに満足してもらえる営業が可能になると考えました。

このような活動をしようと思ったきっかけを教えてください。

 ゼミの先輩方も昨年度の補助金事業に採択され、「ウェルカムタウン八王子プロジェクト」と題して、約1年間にわたって活動されました。外国人向けの飲食店の情報を載せたマップの制作や、提携店舗での英語メニュー、食文化シート、募金箱の作成および設置などに取り組まれ、私たちの今回の事業の基礎を築いてくださいました。
 異文化コミュニケーション(英語)を主に学ぶ尾崎ゼミでは、座学だけでなく地域に出て、いろんな人とのかかわりを通して学びを深めることを大事にしています。尾崎先生は学生の自発性を尊重してくださるので、「先輩方がやってきたからやりなさい」ではなく、プロジェクトを継続して実行するのか、補助金事業に応募するのかどうかも学生の意思に委ねてくれました。
 私を含めた3年生6人で話し合いを重ね、「留学生との関わりを通して異文化に触れるとともに、留学生の立場で物事を考える経験をすることが、世界市民への一歩に繋がる」との思いで補助金事業への応募を決め、やるからには必ず事業に採択されようと皆で協力して準備を開始しました。

先輩後輩の繋がりが強い尾崎ゼミ
先輩後輩の繋がりが強い尾崎ゼミ

取り組みを進めるにあたって、どのような点が難しかったでしょうか?

 まずは事業への採択が最初の目標でした。書類審査を通過するため、オンラインを中心にメンバーでのミーティングを重ねましたが、皆が納得のいく形にまとめるのに苦労しました。書類作成の途中で、「そもそも何のためにこのプロジェクトをするのか?」とサポートしてくださっている方から指摘され、答えに詰まってしまいました。何となく先輩がやってきたからではなく、一人一人が「何のため」を確認し、そこに思いを込めて取り組むことが大事だと感じました。

 ゼミの時間や空きコマなど、それぞれが自身の考えや思いを共有することに時間をかけました。尾崎先生はゼミ以外の時間であっても毎回ミーティングに入ってくれます。ある日、議論が行き詰ったときに「なんとかなるよ」と笑顔で声をかけてくださり、「テーマで、SDGsやグローバルと大きいことを言っているので伝わりづらいこともあるけれど、そこに向かって具体的な足元の一歩の大事な取り組みだから自信を持てばいいよ」と私たちの活動を的確にフォローしてくださいます。そうしたサポートもあり、最後は納得のいく審査書類を仕上げることができました。
 チームで一つの目的に向かうことは意見の相違など難しいことも多いですが、共通の目標に向かって、お互いのことを理解し合い、それぞれの良さを引き出すことで、新しい発想が次々と生まれ、一人で取り組むよりも足し算ではなく掛け算でより良いものができることを学びました。
 事業に採択された後、審査担当者の方からは、コロナ禍で苦境にある飲食店にフォーカスをあてるとともに、留学生の立場で考えられた良い計画といった主旨のコメントをいただきました

協力いただける飲食店に設置する募金箱
協力いただける飲食店に設置する募金箱

最後にこれからの目標を教えてください!

本格的な展開にむけて、ミーティングを重ねる
本格的な展開にむけて、ミーティングを重ねる

 「HACHIOJI MAP」に掲載中の店舗からは、「留学生をはじめ、お店に来る人が増えた」など好意的な声をいただいています。これから具体的に「Helloカード」の設置や、八王子の自然スポットのMAPへの反映、募金を届けるNGOへの連携などがスタートします。また、ツイッターを活用し、多くの方に活動の様子などを届けていきたいと思います。
 学内で学んだことを地域で実践する場があることは自身の成長にとって大きなプラスになっています。私たちの活動を通して、八王子にいながら世界に貢献するSDGsへの一歩を一人でも多くの人が踏み出し、八王子を「boost up」していければと思います!

ゆかわ はるか Yukawa Haruka
[好きな言葉]
学は光なり
[性格]

さっぱりしている

[趣味]
絵を描くこと、読書
[最近読んだ本]
思考の整理学/著:外山滋比古
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