Vol.61

留学中止を「プラスの経験」に変えた前向き思考

的野 大輝 
経営学部経営学科4年

野球での大学進学をけがで諦め、新たな道を探して創大に進学した的野大輝さん。滝山国際寮で勉強に打ち込んで語学力を高め、一度はフィリピン大学への交換留学が決まったものの、コロナ禍で留学が中止に。しかし、それをプラスの経験に変えようと、大学を飛び出して半年間の地方創生インターンシップに挑戦。社会と関わりながら学びを深めました。思い通りにいかない時こそネガティブにならず、考え方と行動を変えて自分の可能性を切り開いてきた的野さんに、学生時代の学びと経験、そこから得られたものなどについて語っていただきました。

高校生活はどのように過ごし、大学進学をどのように考えていましたか

硬式野球部のチームメンバーと
硬式野球部のチームメンバーと

 高校時代は野球に全力を注いでいました。小学2年生で野球を始めてから、甲子園出場やプロ選手になることが目標で、大学にも野球推薦で進学しようと考えていました。しかし、高校3年生の6月にけがをして、野球を続ける道が絶たれてしまって……。もちろんショックでしたが、キャプテンでもあったので落ち込んでばかりもいられません。「自分はプレーできなくても、甲子園を目指した地方予選で勝てるチームをつくるにはどうすればいいだろう」とチームマネジメントに頭を切り替え、サポート役に徹しました。
 けがをして、あらためて「なぜ野球を続けてきたのか」を考えた時、頭に浮かんだのは父の笑顔でした。普段は厳しい父ですが、僕が野球で活躍するととても喜んでくれました。今度は別の方法で父や家族を笑顔にしたいと考えて、思いついたのが、大学でしっかり勉強して困っている人を助ける力を付けるということ。その目的を果たすために、両親の勧めてくれた創価大学への進学を選びました。

入学後1年間、滝山国際寮に入ったのはどうしてですか?

 僕が滝山国際寮に入ったのは「自分が英語を学びたいかどうか分からなかったから」です。創大はグローバルな教育に力を入れていますが、僕自身はそれまで英語が使えずに困った経験がなく、英語の必要性をそれほど感じてはいませんでした。だからこそ、留学生と一緒に生活する環境に身を置けば、自分にとっての英語が必要なものなのかが見えてくるんじゃないか、という思いで入寮しました。
 英語を学ぶ目的は、入寮してすぐに見つかりました。掃除の時間に、掃除機の使い方が分からずに困っている留学生がいたのですが、僕は英語力に自信がないことから話しかける勇気がなく、すぐに助けることができなかったんです。しかし、寮生活をサポートするレジデンスアシスタント(RA)の先輩が、流暢な英語で留学生に掃除機の使い方を説明しているのを見た時の悔しさは、今も鮮明に覚えています。その出来事をきっかけに、「英語を使って困っている人を助けたい」という目的のために英語の勉強に没頭するようになりました。

寮のRA(先輩)と
寮のRA(先輩)と

勉強の成果が表れて、TOEICのスコアが飛躍的に伸びたそうですね

 入学直後は370点でしたが、1年生の12月には895点までアップしました。勉強に打ち込めた理由はいろいろありますが、一緒に生活していたRAの先輩の影響は大きかったですね。僕のフロアのRAは語学がとても堪能でしたが、それでも誰よりも語学の勉強をしていました。その先輩と肩を並べて勉強し、私生活から刺激をもらえる環境だったからこそ頑張ることができたと思います。
 また、当時の僕は「英語を勉強してる自分ってかっこいい」がモチベーションの源でしたから、とにかく毎日大学内の人目のある場所に行って勉強していました(笑)。満点が取れるまで徹底的に過去問を解き続けるという勉強法も、僕には効果的だったと思います。朝から晩まで隙間時間を探して単語を覚えたり、散歩しながら英語を聞いたり、とにかく空いた時間は英語などの勉強に費やしていましたね。
 

フィリピン大学への交換留学がコロナ禍で中止になったときは、がっかりされたのではないですか?

 そうなんです。大学で学び始めてから、さまざまな授業を通じて世界規模の経済格差や教育格差などの社会問題に興味を持つようになり、貧富の差が激しいフィリピンに留学して開発経済を学びたいと考えていました。しかし、2020年の7月末から予定されていた1年間の留学は、コロナの感染拡大の影響で、5月に中止が決まりました。そうなるだろうと感じてはいたのですが、やはり中止の連絡を受けた後は正直何もやる気が起きず、丸一日寝込みましたね。ただ、家族や先輩に相談するうちに、留学に行けなかったことを無駄にしたくない、留学に行けなかったことを「良かった」と感じられる経験をしたいと思うようになり、1年間休学して岡山県で半年間地方創生インターンシップに取り組むことにしたんです。

岡山でのインターンシップではどのような活動をしたのでしょうか

神戸の元町にて実践販売を実施
神戸の元町にて実践販売を実施

 世界的な貧困や格差の問題と同様に、社会課題として日本国内の地域創生にも興味があり、以前からイベントに参加したり本を読んだりしていました。そこで、会社の事業として地方活性化に取り組む方にSNSのダイレクトメッセージで連絡を取り、インターンをさせてほしいとお願いしたんです。面識のない学生からの突然の連絡にも「前向きに検討します」と返事をくださって、あっという間に話が進みました。
 インターン先は、岡山県の西粟倉村という人口1,400人程度の村です。そこで生活しながら、ふるさと納税のマーケティング、ジビエの解体、家畜の世話、地域おこしのための新事業や新製品の考案など、さまざまなことに携わりました。

 ふるさと納税のマーケティングでは、経営学部で学んだ知識を活かしてホームページの内容改善やSNSへの広告などを企画立案し、僕が担当していたお米への寄付額を前年比で3倍に増やすことができました。持ち前のバイタリティを発揮して地域に貢献することは楽しかったですね。住む場所も会う人も変え、新しい環境で取り組んだインターンシップは、ある意味“留学”に近く、大学での学びがどのように社会で生かせるのかを実践的に学ぶとても良い時間になりました。自信を持って、海外留学を超えるような経験ができたと思っています。

担当したお米を食べながら、セールスポイントを上司と相談中
担当したお米を食べながら、セールスポイントを上司と相談中

復学後の4年次には、安田ゼミの仲間と「アグリカルチャーコンペティション」に出場し、実践的研究分野の最優秀賞を獲得していますね

大会での発表後、安田ゼミの仲間と

大会での発表後、安田ゼミの仲間と

 アグリカルチャーコンペティションは、学生が農業、食、地域、JAなどに関する調査研究を行い、成果をプレゼンする大会です。私たちのチームは、八王子市内に100箇所以上ある野菜の無人販売所の販売促進をめざし、販売所の位置情報や販売状況が一目で分かるアプリを開発しました。無人販売所をよく利用するというチームメンバーの家族が、目当ての野菜を探して何カ所も販売所を回っているという話を聞き、その課題を解決したいと考えたことが出発点になっています。アプリ開発のため、スーパーで買い物客にインタビューしたり、JA八王子の方にヒアリングをしたり、さまざまな場所に自ら飛び込み、多くの人を巻き込むことができたのは、インターンシップで多様な人と働いた経験が活かされたように思います。安田ゼミとしては初めて出場した大会で最優秀賞をいただき、本当にうれしかったですね。

課外活動ではどのようなことに取り組まれましたか?

 デンマーク・アスコー研究会に所属していました。デンマーク・アスコー研究会は、創立者が欧州訪問で訪れたデンマークの教育について研究する部活動です。その中でも、フォルケホイスコーレという北欧独特の形態の学校を中心に、デンマークの国民性、幸福度が高い理由などを学びました。2年次には部長として部員の増加と活動の活性化に取り組み、中断していたデンマーク研修を復活させることもできました。活動の中で日本とは異なる教育の在り方に触れ、日本の教育を俯瞰して考えることができたことが印象深いです。
 

デンマークの公立小学校で出会った子どもたちと
デンマークの公立小学校で出会った子どもたちと

今後進まれる道やキャリア展望について教えてください

 大学卒業後は、組織人事コンサルティング会社に就職する予定です。そこで幅広い業種に通用するスキルを身に付け、いずれは起業したいと考えています。在学中、誰かのために行動する社会貢献の意識を高め、課題解決の経験を重ねる中で「自分の頑張り次第で、周りの人や環境に良いインパクトを与えることができる」と強く感じました。人を助けたい、笑顔にしたいという思いをこれからも持ち続け、社会全体にインパクトを与えられるような起業も目指しています。また、創大生として、人間主義経営を実現させるために、ファーストキャリアとして(大学卒業後は)、人や組織のモチベーションに着目したコンサルティングを通し、社会貢献していきたいと考えています。
 

これまでの大学生活を振り返り、後輩たちにメッセージをお願いします

 僕はけがで野球を断念したり、留学が中止になったり、自分がやりたいことが叶わない経験をしてきました。今の高校生や大学生のみなさんも、きっとコロナ禍でできなかったこと、諦めたことがたくさんあったと思います。ただ、思い通りにいかなかった時に大事なのは、「次の一歩」をどう踏み出すか。その踏み出し方で、自分の可能性を切り開けるかどうかが変わります。
 壁にぶつかったら、自分の行動と思考を変えなければ、道は開けません。創大の環境や制度、仲間や教職員の方々は、行動と思考を変えたい学生を支えてくれるはずです。僕自身、大好きな家族やゼミの指導教員である安田賢憲先生、数多くの先輩方や友人など、たくさんの方の支えがなければ、学生生活がまったく違ったものになっていたと思います。頑張ろうと思えば、いくらでも頑張ることができるのが創大の良さ。一人でも多くの学生が、自分の可能性を自ら狭めることなく、学生生活を楽しんで成長してほしいと願っています。

的野 大輝 Matono Daiki
[好きな言葉]
明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ。
[性格]

負けず嫌い、ポジティブ、楽しいこと大好き

[趣味]
友人とのお喋り、サウナ、ドライブ、読書
[最近読んだ本]
『自助論』,サミュエル・スマイルズ、竹内均(訳)
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