暮らしや社会にもたらす「価値」を測ることで身近な企業の経営のあり方や将来性を見ていこう

2020年11月26日 15時30分

教員インタビュー!第15弾・平岡先生に聞いてみました!

    「企業の価値」はどう測られるのか
    「会計」が大切な役割を果たす


     私の研究テーマは「組織(企業)の価値の測り方」と、価値創造のためのマネジメント(経営)です。
     企業の価値を測る手段のひとつが「会計」です。企業は設備投資をしたり原料を購入したり、営業によって利益を上げたり、従業員に給与を支払ったりとさまざまな経済活動を行います。その全てを数値化して記録しているのが「企業会計」です。なかでも経営者の判断材料となるものを「管理会計」と呼びます。また、金融機関からの融資や投資家からの投資を受けるため、会計は一定のルールのもとに外部に公開されています。こちらを「財務会計」と呼びます。
     このように企業を経営したり分析したりするには、さまざまな会計の知識が必要です。そのなかで企業価値の測定は、私の専門分野である「企業価値管理会計」が担っています。



    運動と音楽活動中心だった高校時代と
    経営学・会計学の面白さに目覚めた大学時代


     私は中学時代に陸上、高校時代にはアメフト部に所属していた傍ら、中学からギターに興味をもち、高校時代から始めたバンド活動は社会人になってからも続けています(今は、キーボードとボーカル、作詞・作曲を担当しています)。
     勉強に関しては、たまたま中学時代に通った学習塾の先生が創価大学の第1期生で、数学と英語の教え方がとても上手かったために、この2科目が好きになりました。とはいえ高校時代は部活動とバンド活動に夢中で、受験勉強を本格的に始めたのは高3になってからです。最初はなかなか成績が上がりませんでしたが、体育会系の部活で養われた体力と「ここぞ」という時のバンド活動で鍛えた集中力で、なんとか受験勉強を乗り切ることができました。
     経営学部に進んだのは、実家が商人の町・大阪にあり、父が運送会社、母が喫茶店を経営していたためです。商売を継続する大変さを身近で見ていましたが、両親からも「商売は継ぐな」と言われていたので、「それなら経営学を勉強して、商売をやっている人たちを支える立場の人間になりたい」と考えるようになりました。そして、経営学と会計学を学ぼうと創価大学の経営学部を受験したのです。
     大学で経営学と会計学を学び始めてみると、当時所属していたサークルの音楽活動と同じくらい面白くてどんどんとのめり込んでしまいました。現在の研究分野に興味を持って大学教員の道を選んだのは、管理会計を専門にしていた大学のゼミの先生の影響が大きかったです。
    バランスのとれた3つの「価値」が
    企業の強さを生み出していく


     みなさんは企業の価値とはどんなものだと思いますか? 私は企業の価値には「利・善・美」の3つがあると考えています。「利」は利益を上げていること、つまり企業の経済的な価値です。これは会計上、「財務(お金についての)情報」として扱われます。コストを少なく売上を大きくして利益を最大にすればこの価値は大きくなります。
     「善(Common Good)」は企業の社会的価値です。社会にプラスになることをしているかどうかですね。社会責任やESG(環境・社会・統治)、SDGs(持続可能な開発目標)にどのように取り組んでいるかが重要になります。
     「美」は芸術的な価値や、スポーツ、ファッション、自然環境など私たちに感動をもたらすものです。「美」を本業とする企業には、化粧品や美容などのビューティー・ビジネス、音楽や映像コンテンツの配信、芸能事務所や宝塚歌劇団なども含まれます。その価値が社会的に評価されると売上も伸び、経営上の価値も高くなります。
     典型的なのが「ワークマン」という企業の快進撃です。作業着など機能的な衣類を安く提供していたのですが、「ワークマン・レディース」などファッションの要素を取り入れ、「機能的でファッショナブルで、しかも安い」と女性層にウケました。美の価値をうまく取り入れた例だと思います。
    「善」の価値や「美」の価値は企業のブランドイメージを高め、優れた人材を集める役割もします。これら3つの価値はお互いに関連しあっており、それを企業トップが絶妙に管理してハーモニーを生み出すことで、企業の価値を全体として高めていくことができます。
     企業価値管理会計でも、かつては財務情報で企業の価値を測ろうとしていました。特にリーマン・ショックの前は、企業価値も金融を中心に研究されることが多かったのです。その後、お金以外の情報(非財務情報)についても着目されるようになり、現在は社会的価値の方にもシフトしてきています。
     私も最初は「利の価値」中心に研究し、精密機器メーカーや流通業、自動車産業の戦略的マネジメント・コントロールやコストマネジメント、財務管理などについてたくさん論文や本を書きました。やがて美の価値や社会的価値にも興味が広がり、最近ではパナソニック、三菱電機など電機機器メーカーを中心に研究しています。

     
    「日経ストックリーグ」への参加で
    企業経営を多面的に見る目を養う


     私のゼミは「企業の社会的責任」(CSR)のための経営や会計をテーマとし、企業研究をもとに仮想の分散投資にチャレンジする「日経ストックリーグ」にも毎年参加しています。
     コロナ禍で人々の消費行動がガラリと変わりました。今年は「ステイ・アット・ホーム」と「ワーク・ライフ・バランス」「ミニマリスト&プレッパ―」をテーマに学生と共同研究をしています。このうち「ステイ・アット・ホーム」のキーワードは、「お家時間」「在宅勤務」「巣ごもり需要」です。
     社会のニーズが変化してきたことに関して、企業はどのように対応しているのかに注目し、その中でも特に真剣に取り組んでいる企業をピックアップし研究します。日経ストックリーグでは、その中から優良企業を選んで仮想の株式投資をしていきます。
     最初はキーワードで網を大きくかけて検索し、そのあと自分たちのテーマに沿って、本当にみんなの暮らしを改善して充実したものにできるのか、アフターコロナでも充実度は続くのかと、テーマに合致した企業なのかを検証して絞り込んでいきます。株式投資の練習ですから、さらに今後もそのような事業で成長していけるかどうかを財務分析でスクリーニングし、最終的な投資企業と投資額を確定します。仮想の株価のリターンでも順位はつきますが、最終的にはレポートの内容が評価されます。

     入選したレポートのなかでも独創的だったのが、「SEISA NO OWARI(性差の終わり)〜女子力男子にエールを送るポートフォリオ」です。世間で「女子力」といわれるものをよくよく考えると、実は女子に限らず男子も共通して備えておくべき「人間力」なのではないかということから生まれたテーマです。そこで「女子力を備えた男子」=「女子力男子」を応援するパナソニックやファミリーマートなど複数の企業を選定していきました。
     学生たちの柔軟で面白い発想を、きちんとしたレポートに落とし込めるよううまくアレンジするのが私の役割です。このように学生との共同研究では、普段の研究対象を超えて幅広い業種に対応しますので、私自身も視野が広がっていきます。
    今の高校生世代にこそ
    経営を学んでほしい理由


     私の願いは、高校生のみなさんにも「経営はとても身近にあるものだ」と実感してもらうことです。みなさんは物心ついたときからネット環境がある、いわゆる「Z世代」です。スマホはなくてはならないものでしょうし、そこからアクセスするAmazonやメルカリなどのプラットフォーム・ビジネスや、定額制の音楽・動画配信サービス(サブスク)も使っているはずです。今は消費者の立場で利用している人がほとんどでしょうが、Z世代はそこから一歩進んで今後のビジネスの主役となっていくでしょう。経営を学ぶことで経営側の立場を理解し、そのノウハウを身につければ、若くてもビジネスの主体になれます。

     たとえばYouTubeも、自分を表現する手段としてだけでなくビジネスにも使うことができますね。デジタルによって消費者と経営者の間のハードルは以前より低くなっています。
    みなさんはほかの世代をリードして、これからの日本のビジネスを盛り上げていく可能性を秘めているのです。一緒に経営を勉強できる日を楽しみにしています。
    <ご経歴>
    平岡 秀福教授 プロフィール
    創価大学経営学部卒業
    筑波大学 大学院 経営・政策科学研究科修了(経済学修士)
    創価女子短期大学専任講師
    創価大学経営学部専任講師、助教授を経て現職
    ニューヨーク州立大学バッファロー校 客員研究員
    博士(経営学)
    日本経営分析学会(現・日本経済会計学会)「著書の部」学会賞
    日経ストックリーグNOMURA AWRD(協賛社賞)受賞
    ページ公開日:2020年11月26日 15時30分
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