経営史の知識をもとにこれからの企業経営を考えよう

2020年12月01日 09時13分

教員インタビュー!第16弾・大場先生に聞いてみました!

    知っているようで知らない
    企業の歴史は発見の連続


     私は日本企業の歴史、経営史を教えています。経営というと企業や組織の運営について学ぶことが多いので、「経営史」というと少し珍しく感じるかもしれません。春学期では主に江戸時代から近現代の日本企業の歴史、秋学期では日本企業と海外企業を比較しながら学んでいきます。

     では、どうして企業の歴史を学ぶのでしょうか。高校生までの歴史の勉強というのは「○○年に◎◎が起きた」など、できごとが中心、もっといえば暗記中心になります。私は常々、大学で歴史を学ぶのであれば、企業や経営、人物をより深く理解し、思索の材料にしてくださいと話しています。私たちの身近にはさまざまな企業があります。でも商品名は知っていても製造している企業やそのなりたちを詳しくは知らないということは実に多いものです。

     たとえば百貨店。東武、西武、高島屋、三越・伊勢丹、阪急、大丸など、さまざまな企業がありますが、この百貨店の歴史をひもといていくと、一人の重要人物が出てきます。その人の名前は小林一三(こばやしいちぞう)。明治時代の実業家で、鉄道を敷設して沿線に住宅街をつくり、人々の娯楽として宝塚歌劇団を創設した人です。彼は人が集まる場所、つまり「駅」に注目して、百貨店をつくりました。今でいう「駅ビル」というビジネスモデルを生み出した人なんですね。
     では、コロナ禍が発生した今、小林一三が考え出した「駅ビル」のビジネスモデルはこれから通用するのでしょうか。人が集まる場所は駅ではなくなり、郊外のインターチェンジ付近、それとも……? たくさんのアイデアが出てくることでしょう。歴史をもとに、現在、起きているできごとを自分の頭で考える。それが大学で歴史を学ぶ意義だと思っています。

    考古学に続いて経済学を学ぶ
    人生に無駄はない


     私自身の高校時代ですが、大学進学にあたって「考古学」と「経済学」とで非常に進路選択を迷いました。当時、映画「インディー・ジョーンズ」と漫画「マスターキートン」などに影響されて、考古学者に憧れていたんですね。経済学にももちろん興味はあったのですが、考古学者になればドキドキするような冒険ができるものだと思っていたのです。少し時間はかかりましたが見事、志望大学に合格し、そこで考古学を学びました。

     学生時代にはエジプトに3週間ほど旅行に行きましたし、仲間とともにエジプトを訪れたのは今でも印象に残っています。
     ただ、実際に考古学を学んでみてはじめて、「これは思っていたのと違う……」と気づいたんです。発掘調査は本当に地道な作業の積み重ねで、コツコツと穴を掘って、出てきたものを刷毛で払って、図面に落として、の繰り返し。もちろん大物を発掘できれば「国宝級」もあるかもしれませんが、少なくとも高校生のときに思い描いていた冒険ではない(笑)。そこで大学卒業後に大学編入試験を受けて経済を学びなおし、大学院へと進みました。

     ですから、高校生のみなさんには、そのときにやりたいことをしっかり学んでほしいと思います。どんな経験にも無駄や失敗はありません。私は考古学を学んではじめて、自分に向いてないということがわかりました。編入試験を受けて経済学に行き着いたのですが、考古学を一度、やりきっているから後悔はありません。また、考古学と経済学にも共通点があることにも気がつきました。勉強する前に失敗や無駄を決めつけるのではなく、「やらないとわからないことはたくさんある」ととにかく本気でチャレンジしてみるのがよいと思います。



    起業家ベスト3に家訓、
    自分の頭で考えてみよう


     本気という意味では、経営史に登場するような経営者はみな本気ですし、何より行動力があって、強烈な人物ばかりです。授業では歴史的なできごとだけでなく、「経営者の人となり」を伝えています。すると、知っている企業にもより親近感がわき、興味がもてることでしょう。

     さらに、知識として学ぶだけではなく、国内外の経営者のなかからベスト3を決めるといった課題も出しています。この課題では、イーロン・マスク、スティーブ・ジョブズ、ウォルト・ディズニーや松下幸之助などをあげる人が多いですね。

     また、日本では100年以上続く企業などに「家訓」「家憲」などが伝わっていることがあります。長く続いている企業は同族経営であることが多く、家族の結束が欠かせません。とはいえ、常に経営に才覚のある子どもが生まれてくるとは限りませんし、時代やニーズは常に変化しています。安定的な事業継承のために、あなたならどのような家訓をつくるでしょうか。こうして自身で思考する学びは、大変ではありますがとても楽しく、実りのあるものだと思います。

     
    繰り返し起きる伝染病
    企業も働き方や人材育成も変わる?


     今回の新型コロナウィルスのような伝染病は、歴史上、繰り返し起きていました。今、多くの人が「テレワークが普及する」「地方移住が増える」などのように変わることに注目していますが、歴史を研究していると人には「元に戻そう」「復元しよう」という力が強く働くものだなと気が付きます。つまりそうそう変わらないことのほうが多いんですね。

     多くの企業や学校でテレワークやオンライン授業などが導入され、「意外と便利じゃん!」となった一方、顔をあわせる良さも痛感している人は多いことでしょう。ですから、オフィスや学校、居酒屋などにも人が戻ってくるという見方もできます。

     また、テレワークの課題は人材育成、若手をどうやって教育していくのかという点にあります。今まで企業内の教育は「見て学ぶ」ことが多かったので、しっかりと言語化できていないことが多いもの。顔を合わせないままどうやって若手を育てるのか、課題としている企業が多いのではないでしょうか。一方で、若い世代ほどテレワークに順応し、テレワークを導入していない企業は人材が採用できないことも考えられます。みなさんは、この問題をどう考えるでしょうか。

     企業内での人材育成、持続可能な企業のあり方など、どれも社会で働く前に一度は真剣に考えておきたいテーマです。どれも容易な問題ではありませんが、ともに学び、探求できる日を楽しみにしています。
    <ご経歴>
    大場 隆広准教授 プロフィール
    東京大学大学院経済学研究科 経済史専攻 博士課程 修了
    2010年~2011年 名古屋商科大学 経営学部 非常勤講師
    2011年~2016年 札幌学院大学 経済学部 准教授
    2016年~ 創価大学 経営学部 准教授
    ページ公開日:2020年12月01日 09時13分
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